ソーシャルアクションラボ

2022.10.27

自治体のSNS活用法 それぞれのSNSの特徴や事例を解説

SNSが私たちの生活に溶け込み、当たり前の存在となりました。自治体がSNSを運用することは珍しくなく、観光に関する情報発信や移住促進のために複数のSNSを活用しているケースも目立ちます。SNSで効果的に情報を発信するためには、各SNSの特徴を押さえておくことが重要です。ここでは、自治体がSNSを活用するメリットや、それぞれのサービスの特徴について解説します。

自治体がSNSを活用するメリット

自治体がSNSを活用するメリットについて見ていきましょう。

拡散力がある

SNSの大きな特徴の一つとして、拡散力があることが挙げられます。どんな情報がSNSユーザーに拡散されやすいかは、情報を届けるターゲットによりますが、ユーザーにとって「有益な情報」「おもしろいコンテンツ」と思ってもらえれば、投稿を拡散してもらえる確率が高まります。

また、影響力があるインフルエンサーに情報発信を依頼することで、これまでアプローチできなかった層に情報を届けることもできるでしょう。インフルエンサーに依頼する場合は、「発信する情報やコンテンツとインフルエンサーの相性が良いか」などを考慮しましょう。

コストがかからない

少ないコストで情報を発信できるのも、SNSの強みの一つです。広告以外の一般投稿では料金はかかりません。一定数のフォロワーを獲得できていれば、コストをかけることなく多くの人に情報を届けることができるでしょう。

注意したいのは「時間的なコスト」です。今やSNSは何種類もあり、全てのサービスを活用することもできます。しかし、SNSにはユーザーの年齢層や機能の違いなど特徴は異なるため、目的次第では合わないものも出てくるでしょう。むやみに手を出しすぎると、運用のための時間ばかりかかってしまい、投稿の質が落ちてしまうことにもなりかねません。どのSNSを運用していくべきか、ターゲットと照らし合わせて考える必要があります。

自治体に関するリアルな声を聞ける

SNSの検索機能を使うことで、自治体に関するリアルな声を聞くことができます。特に、匿名性が強いTwitterは率直な意見が出やすい傾向にあるといえ、施策に関するヒントを得ることもできるでしょう。YouTubeのコメント欄も動画に関する反応がはっきりと現れるため、コンテンツ企画の参考とできます。自治体と市民(または市民以外)とがコミュニケーションできる点は、SNSの強みの一つといえるでしょう。

主要なSNSの特徴

ここでは、日本で一般的に利用されている6つのSNSについて特徴を解説していきます。

Twitter

最大140文字と、比較的短い字数で投稿するTwitter。Twitter Japanの公式アカウントによると、国内での月間の利用者数は4500万とのことです(2017年10月時点)。また、総務省の「令和3年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によると、利用率は10代で67.4%、20代で78.6%と、比較的若い世代が中心的なユーザー層であることが分かります。

Twitterは匿名性が高いため、ユーザーが情報を拡散するハードルが低いといえるでしょう。また、匿名性ゆえに全体的にフランクな雰囲気があります。拡散力は強いSNSですが、それだけ炎上リスクも伴うため、投稿には高い倫理観が求められるでしょう。

フランクな雰囲気である特徴を生かし、企業が公式アカウントでユーザーと気軽にコミュニケーションを取る例も一般的です。「情報発信しつつ市民との距離を縮めたい」という場合は、導入を検討しても良いSNSだといえるでしょう。

Facebook

Facebookを運営するMetaによると、Facebookの世界での月間アクティブ利用者数は29億4000万人。日本に目を向けてみると、主なユーザー層は30~40代(利用率は30代で45.7%、40代で41.4%)と、Twitterに比べると上の年代が利用しています(総務省の同報告書より)。

原則として本名でアカウント登録するFacebookは、Twitterと比べるとより「公式感」が強いSNSとなります。また、制限文字数は約6万字、画像はTwitterに比べてより多く投稿できることから、公式として詳細にお知らせしたいニュースを発信する場合に適しているでしょう。Twitterと併用する場合は、発信する情報や雰囲気に違いを出すのがおすすめです。

Instagram

文字よりも画像や動画が中心となるInstagramの国内の月間アクティブアカウント数は3300万です(2019年6月時点、Metaの発表より)。総務省の同報告書によると、10代の利用率が72.3%、20代が78.6%と、若い層が利用していることが分かります。しかし、30~40代でも半数がりようしており(30代の利用率が57.1%、40代が50.3%)、比較的広い年代層で利用されているといえるでしょう。また、男性よりも女性の利用率が高いことも特徴の一つです(男性で42.3%、女性で54.8%)。

InstagramはTwitterやFacebookと違い、投稿を他ユーザーにシェアする機能はありません。一方で、投稿を保存する機能があります。投稿が表示されるアルゴリズムについては公表されていませんが、「投稿を保存したくなるほど有益な情報であるか」がカギを握るとされます。従来は画像の「映え」やハッシュタグが重要であるとされていましたが、あくまで投稿を保存してもらうための手法の一つです。ダイエット方法や料理のレシピなど「お役立ち情報」を発信しているアカウントも見られ、「情報を届けたいユーザーにとって有益な情報であるか」が重要なポイントだといえるでしょう。

YouTube

10~40代で利用率90%を超えているYouTube。50代で82.5%、60代で67.0%と、上記3つのSNSに比べると幅広い年代で視聴されています(同報告書より)。Think wirh Googleの記事によると、2020年9月の月間利用者数は6500万人とのことです。

YouTubeの出現によって、自治体でも気軽に動画を発信できるようになりました。しかし、ターゲットの設定や構成作りをしっかり行わなければ再生回数も伸びないため、反響を得るには比較的ハードルが高いSNSだともいえるでしょう。多くの視聴者数を誇るユーチューバーも複数いるため、ターゲット次第ではコラボを検討しても良いかもしれません。

LINE

他のSNSと比較し、圧倒的な利用率を誇るのがLINEです。10~50代までで利用率は90%以上、60代でも82.6%と、国内ではほとんどの人が利用しているといっても過言ではないでしょう。LINE Business Guideによると、国内の月間アクティブユーザーは9200万人とのことです(2022年6月末時点)。

自治体の活用法としては、自治体サービスに関するお知らせを届ける方法が一般的です。災害に関する情報についても素早く発信できるため、市民とのコミュケーションのチャネルの一つとして活用できます。

TikTok

10代での利用率は62.4%、20代で46.5%と、若い世代に利用されているTilTok。動画の制限時間は10分と、短い動画の投稿が目立ちます。30~60代の利用率は8.7~23.5%で推移していることを見ると(同報告書より)、現状は情報の発信先が若い世代である場合のみ活用を検討するべきといえるでしょう。TikTokの2021年9月の発表によると、世界中で10億人のユーザーが毎月TikTokにアクセスしています。

自治体のSNS活用例

自治体のSNSの活用事例について見ていきましょう。

神奈川県葉山町

3.7万フォロワー(2022年10月13日現在)と、自治体としては多くのフォロワーを抱えるのが、神奈川県葉山町のInstagram公式アカウントです。同町の特徴は、アカウントの運用の目的を「移住促進」と明確にしている点です。いわゆる「映える」画像が並んでいたり、「#葉山歩き」と定型のハッシュタグを置いていたりと、Instagramの基本を押さえた投稿が目立ちます。ターゲットを20~30代に設定し、投稿の文章もあえて敬語を使わず柔らかい雰囲気にしている点が特徴といえます。SNS運用において目的とターゲットを明確にし、ターゲットに響くようなコンテンツを発信するという点において参考になる事例でしょう。

北九州市

市制55周年で配信されたユーチューバー「釣りよかでしょう。」とのコラボ動画

北九州市は「釣り」をテーマにした観光戦略を展開。初心者でも気軽に海釣りができるよう、遊漁船の手配や釣り道具のレンタル、ガイドの派遣や釣った魚を料理するレストランとの提携など、釣りに関するサービスをパッケージ化した「北九州釣りいこか倶楽部」を運営しています。

同俱楽部が誕生したきっかけは、釣りに関連する動画を配信しているユーチューバーとコラボした動画でした。市制55周年の事業の一つとして、北九州で海釣りをする様子を映すなどした3本の動画を配信。2017年6月時点で計約280万回再生されるなど、大きな反響を得ました。現在でも、動画をきっかけに同倶楽部に申し込む利用者が多いといいます。

ユーチューバーとのコラボを施策に生かした好例といえるでしょう。

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長崎県南島原市

南島原市の公式YouTubeチャンネルで配信されている「突撃!南島原情報局」の一場面(同市公式YouTubeチャンネルより)

再生回数85万回(2022年6月27日時点)など、多くの再生回数を稼いでいる動画をいくつも配信しているのは、長崎県南島原市の公式YouTubeチャンネルです。多くの動画がドラマ仕立てになっており、ストーリーを語るストーリーテリングの事例としても好例だといえます。

動画配信の目的を「来訪者の増加」「シビックプライドの醸成」「知名度・認知の向上」と置いた上で、「九州圏に住む消費の意欲が高い30~40代のファミリー層」とターゲットを明確化。あくまでストーリー重視で、観光名所や特産品などは前面に出さないスタイルを取っています。動画に関連したアプリも配信しており、動画を次の施策につなげています。

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SNS活用の際に考えたい「ターゲット」「SNSの特徴」

SNS活用の際には、「ターゲット」「SNSの特徴」を押さえた上で、「何のために情報を発信するのか」という目的の部分をはっきりさせることが大切です。複数アカウントを運用する場合でも、SNSの特徴に合わせて投稿のテイストを変えることも重要になってくるでしょう。SNS運用が目的化することのないように、「誰が投稿を見るのか」「どのような結果に結び付けたいか」と常に考え、振り返るようにしましょう。