散らばった破片を、一つの物語に CACLが取り組んだソートリーダーシップ戦略
株式会社CACL(カクル)
やりたいことであふれ、自分の判断軸を見失いかけていた――。株式会社CACL代表の奥山純一さんは、2012年に立ち上げた会社を2022年に譲渡。新たにCACLを立ち上げたものの、かつて言語化した自分の軸が「しっくりこなくなっていた」といいます。そのタイミングで出会ったのが、ソートリーダーシップ戦略でした。クマベイスとのワークショップを通じて「表現者として生きる」という新たなパーパスにたどり着いたことで、行動に明確な基準が生まれ、事業も再び加速。能登半島地震で発生した陶磁器片を「価値ある素材」として生まれ変わらせるビッグアイデア(革新的なアイデアやコンセプト)を通じて、企業や著名人とのコラボレーションも広がっています。
本記事では、株式会社CACLがどのようにしてプレゼンスを高めていったのかを、ソートリーダーシップ戦略の実践プロセスとともに紹介します。
【課題】
- 多面的に活動していたが、会社のコアの部分が言語化できておらず事業が分散していた
- 感覚的にビジネスを進めている部分があり、他者に想いや意図が伝わりにくかった
- 陶磁器片に可能性は感じていたが、明確なビジネスドメインとして定義できていなかった
【解決】
- 会社のパーパスを「リフレーミングの機会を提供する」、ビッグアイデアを「陶磁器片をアートや素材として利活用する」と定めた上で、事業ドメインを整理
- ワークショップで言語化を進め、社内外へのメッセージ発信やコンセプト共有が容易になり、ブレのない意思決定や効果的な対外コミュニケーションが可能に
- 次々とビッグアイデアを開発できる土壌が整い、柔軟に進化する事業構造を実現
【成果】
- 陶磁器片に集中することで、事業が加速。ハイブランドとの協業も進行中
- 地震で損壊した能登瓦を「建材」として活用する新プロジェクトも始動
- 対談・展示・映像などを通じた発信により、メディア露出や社会的プレゼンスが拡大
- 経営者自身が「表現者」としての在り方を自覚し、生き方と事業が一致する感覚を獲得
クマベイスでは、ビジネスの核を言語化し、ビッグアイデアをともに導き出す「ソートリーダーシップ戦略支援サービス」を提供しています。
ソートリーダーシップ戦略との出会い
――まず、クマベイスにご相談いただいた経緯を教えてください。
株式会社CACL代表取締役の奥山純一さん(以下、奥山さん):京都で開かれたスタートアップ関係のイベントで、株式会社クマベイス代表取締役の田中森士さんとたまたま知り合ったことがきっかけです。

奥山さんとクマベイス田中が出会った京都のイベント「IVS」会場
当時、僕は主にエンジェル投資家として活動していました。京都のイベントにも、投資先を探すために参加していたんです。田中さんとお会いした際、自己紹介した上で、「投資も面白いが、やはり自分で何か立ち上げたいと感じるようになった。だから最近、石川県能美市で『陶磁器片』を使った事業を新しく立ち上げた」といったことをこちらからお伝えしました。共通の友人・知人が何人かいたことや、私と学年が同じだったことから、田中さんには最初から親近感を抱いていました(笑)。
――親近感を抱いてくださっていたのですね。ありがたいです。
奥山さん:一通り僕の話をした後、「ところで田中さんは何をやっている人ですか?」と質問すると、コンテンツマーケティング支援の会社を経営しており、何冊かの著書があること、ソートリーダーシップ戦略やカルトブランディングの支援もされていることを教えていただきました。コンテンツマーケティングについてはなんとなく知っていたのですが、ソートリーダーシップ戦略とカルトブランディングは初めて聞く単語でした。ざっと簡単に説明していただいて、ピンときました。自分がやりたかったことはソートリーダーシップ戦略だ、と。
その時はそれで別れたのですが、石川に帰ってから田中さんが執筆された本を読んで、直感が確信に変わりました。
それまで僕は感覚でビジネスに取り組んできました。新しく始めた陶磁器片を活用した事業も同様です。感覚だけでもうまくやってこられたけど、ソートリーダーシップ戦略を通して自分や会社のコアの部分を言語化することで、さらに事業を加速させられるのだと気づいたのです。

クマベイス代表・田中森士の著書
「言語化」に期待してソートリーダーシップ戦略支援を依頼
――ソートリーダーシップは、従来の枠組みにとらわれず、本質的な課題に対して独自の洞察やビジョンを提示し、他者の思考や行動に影響を与えるものです。課題解決のための「革新的なアイデアやコンセプト=ビッグアイデア」を提示することでリーダーシップを発揮するとも言い換えられます。近年、マーケティングやブランディングの文脈でも、重要であると叫ばれるようになりました。ただ、日本ではまだあまり一般的ではありません。クマベイスに依頼する際、不安はありませんでしたか?

ソートリーダーシップのフレームワークの一例
奥山さん:クマベイスさんに依頼すること自体に不安はありませんでした。第一に、ソートリーダーシップ戦略がどのようにビジネス的なメリットにつながっていくのかを、ロジカルに説明してくださったこと。第二に、ソートリーダーシップ戦略の実績を示してくださったこと。これら2つの理由から、ぜひ支援していただきたいと思いました。
――初回のお打ち合わせ時、CACLさんにソートリーダーシップ戦略の実績をご共有させていただきました。同時に、クマベイスは多数の編集者さん、ライターさんとパートナーシップを結んでおり、彼らの中には元新聞記者も多い――。こういったことも説明させていただきました。
奥山さん:はい、田中さんのバックグラウンドが新聞記者で、かつ「クマベイスでは新聞社の地方支局に近い編集体制を構築している」とも伺っていたので、「言語化の部分も間違いないだろう」という安心感がありました。

クマベイスの編集体制図

クマベイスが採用しているコンテンツ制作のフロー
ソートリーダーシップ戦略に不可欠なパーパスとの邂逅
――当時、CACLさんは会社としていくつかの大きなイベントを控えておられました。そのため、通常は4〜6カ月程度かかるソートリーダーシップ戦略の立案を、それよりもやや短い期間で終える必要があった。そこで、戦略立案ワークショップ(以下、WS)を、オンライン形式で細かく実施するとともに、これとは別に複数回の合宿を開くことにしました。
奥山さん:オンラインで事前に細かくヒアリングをしていただいたり、宿題を出していただいたりしたおかげで、スムーズに合宿に入れました。また、合宿前から生活習慣を変えるよう強く言われたのも新鮮でした。早寝早起きに毎朝の軽い運動、瞑想、食事バランスの管理、自分と向き合う時間の確保――。合宿が終わって、ソートリーダーシップ戦略の施策に取り組み始めて以降も、常におっしゃっていましたよね。
――マーケティングやブランディングの会社らしくないアドバイスだと感じたでしょう。この辺りは宍戸幹央氏と私の共著本『マーケティングZEN』(日本経済新聞出版)に詳しく書きましたが、まず心身を整えないと、自分自身の「心の声」が聞こえないんです。「心の声」が「存在意義」「存在理由」を意味するパーパスにつながっていきます。そして、パーパスをはっきりさせなければ、そもそもソートリーダーシップを発揮できないんです。
奥山さん:思考を整理するためにも、心身を整えなければならない。このことは、個人的に非常に腑に落ちました。なので、しっかりと生活習慣の改善に取り組んだ上で合宿に臨みました。もちろん、今に至るまで継続しています。

合宿中は連日、瞑想やワークアウトの時間が設定された
芽生えた「表現者でありたい」という強い想い
――ソートリーダーシップ戦略立案WSを振り返ってください。
奥山さん:一言で表すなら「すっきりした」、ですね。いろいろな感覚、情報、想いが統合されていく感覚でした。当時、僕にはいろんな顔がありました。とある会社の役員としての顔、アートコレクターとしての顔、エンジェル投資家としての顔。どれが本当の自分なのか分からなかった。また、WSに入るまで、パーパスらしきものはあったのですが、それが言語化できていなかった。いろんな単語が頭の中にあって、それを整理する必要があるとうすうす感じていました。
WSで膨大な数のワークに取り組むうちに、「表現者でありたい」という想いが強くなっていきました。自分は「表現者であるために存在している」というパーパスを、しっかりと認識できたんです。

CACL社が開いている九谷焼の陶片を用いたオリジナルの箸置き制作ワークショップ(株式会社CACL提供)
――その時の奥山さんの表情をよく覚えています。表情がパアッと明るくなった。パーパスを認識したことで、その後のワークをうまく進めることができました。
奥山さん:自分はどう生きたいのか。これを認識することで、目の前の仕事との向き合い方が変わりました。覚悟が決まり、陶磁器片の活動に振り切ることができたんです。結果、別の会社の役員を退任するなど、パーパスと重ならない仕事を手放していくことになりました。
「陶磁器片をアートや素材として利活用する」というビッグアイデア
――その後、会社のパーパスを「リフレーミングの機会を提供する」と言語化しました。そして、ソートリーダーシップ戦略のさまざまなフレームワークを駆使し、解決すべき課題の抽出やビッグアイデアの策定を進めていきました。
奥山さん:能登半島地震では、破損し、廃材となった陶磁器が大量に生まれました。CACLが回収した陶磁器片だけで4トンにもなります。この陶磁器片は、何も手を加えなければ廃棄されます。そうなると地球環境に負荷がかかる。陶磁器片をアートや素材として利活用することで、これらの課題を解決できる。これがワークショップで導き出したビッグアイデアです。
整理すると、大量の陶磁器片が生まれており、廃棄すると地球環境に負荷がかかるという課題があった。その課題を解決するために、「陶磁器片をアートや素材として利活用する」という革新的な解決策、つまりビッグアイデアを導き出したというわけです。

九谷焼と珠洲焼の陶磁器片をベースに、輪島塗の技法で新たな造形物に変えた作品(株式会社CACL提供)
ビッグアイデアの言語化で実現した事業ドメインの整理
――その後も石川県内で戦略立案WSを開くなど、時間をかけてソートリーダーシップ戦略を策定していきました。印象的だったワークはありますか?
奥山さん:一つに絞ることは難しいですが、パーパスと出会えたワークは印象に残っています。また、事業ドメインを絞るワークもよかった。会社の中心メンバーで会社の事業を洗い出し、パーパスやビッグアイデアとの整合性を確認していきました。最終的に事業ドメインを絞ることができました。
他方、ワークショップで悩んだのが、CACLが手がけている障害福祉事業との整合性です。会社としてのパーパス「リフレーミングの機会提供」やビッグアイデア「陶磁器片をアートや素材として利活用する」とどう整合性を取るか。これについては、施設において陶磁器片を活用したプログラムを用意することでクリアになりました。自分たちがやってきたことは、全部つながっていたのだと実感した瞬間でした。

ソートリーダーシップ戦略を通して、事業ドメインを整理した(株式会社CACLウェブサイトより)
――ソートリーダーシップ戦略を立案し、施策を実行しました。これによりどのような効果を実感しましたか?
奥山さん:まず、CACLの事業を絞ったことで、リソースを効果的に使えるようになりました。WSで定めた、ソートリーダーシップを発揮するためのコンテンツ戦略により、リソースを情報発信に割くことができた。その結果、比較的早い段階で実績に結びつき、プレゼンスが上がるという好循環が生まれました。例えば、さまざまな展覧会にアート作品を出品したり、日本文学者のロバート・キャンベルさんとの対談が実現したり、元NHKアナウンサー・武内陶子さんと能登を歩いて動画撮影をしたり。各種メディアに取り上げられることも増えました。

元NHKアナウンサー・武内陶子さんとコラボレーションの機会を得た(株式会社CACL公式YouTubeより)
CACLが発信する2つ目のビッグアイデア
――今後の展望をお聞かせください。
奥山さん:まずはハイブランド(ラグジュアリーブランド)とのコラボレーションを進めていきます。もう一つは、能登半島地震でダメージを受けた能登瓦(のとがわら)を集めて活用します。今回はアートではなく、建材としてです。全国の施設で利用いただく想定で準備を進めています。
――いずれも素晴らしいプロジェクトですね。特に能登瓦については、2つ目のビッグアイデアといえそうです。
奥山さん:ソートリーダーシップ戦略のWSで、田中さんから「ビッグアイデアは1つで終わるわけではない。1つ目のビッグアイデアが広まったら、2つ目に取り組むべきだ」とのアドバイスがありましたからね。これからもビッグアイデアをどんどん進化させていきたいですし、ソートリーダーとしても進化していきたいです。
視線が海外にあることがクマベイスの特長
――クマベイスと他の支援会社さんとの違いについてはどうお考えですか?
奥山さん:クマベイスさんの本社は熊本にあります。地方に根ざしながらも、視線は海外にあり、田中さんや社員さんも海外でどんどんチャレンジしている。ここが他の支援会社さんとの違いだと思います。通常、支援会社やコンサルティング会社って、何かを顧客に教えることに集中しがちですが、積極的に動いて質の高い情報を取得したりチャレンジしたりしている姿は、ある種異質です(笑)。実は私たちCACLも、クマベイスさんの姿勢に影響を受けています。自分たちのプロダクトや作品を海外に出していこうという発想になりましたし、自分たちでどんどんイベントを企画していこうというマインドセットになりました。
あと、クマベイスさんは、禅やマインドフルネス、仏教的な思想をお持ちです。本来の自分を取り戻すことを目的にされているというか。こうした思想に、最新のブランディングやマーケティングという、ある意味資本主義を生き抜くための方法論を掛け合わせている。そこのバランスは唯一無二だと思いますし、最適解を提示してくださる印象です。
ソートリーダーシップ戦略は自分の人生を取り戻せる
――クマベイスのソートリーダーシップ戦略支援サービスは、どういった人におすすめですか?
奥山さん:考える前に動ける人にとっては、極めて効果的だと思います。行動できる人は、そもそもアイデアや素材を持っている。ソートリーダーシップ戦略を通して、頭の中が整理され、進むべき方向が見えてきます。他方、行動しない頭でっかちな人にはおすすめしません。ビッグアイデアを出せたとしても、それを信じられないからです。「果たしてこのビッグアイデアでいいのだろうか」と堂々巡りになってしまうでしょう。

ソートリーダーシップ戦略を通してさまざまな企業・著名人とのつながりが生まれた(株式会社CACLウェブサイトより)
――最後にソートリーダーシップ戦略に興味がある方に向けて、メッセージを。
奥山さん:人が決めたレールの上で競争していることに違和感がある人には、ぜひソートリーダーシップ戦略支援サービスを検討してほしいですね。本当の自分の人生を取り戻すことにもつながります。そうすると、世界が違って見えます。僕自身がそうでした。今こそ、本来の自分に立ち返るときです。
クマベイスが提供するソートリーダーシップ戦略支援サービスでは、パーパスの言語化からビッグアイデアの策定、情報発信戦略の立案まで、事業の核をともに整える伴走型の支援を行っています。
詳しくはサービス紹介ページをご覧ください。
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