BtoBコンテンツマーケティングはBtoCと何が違うのか?

BtoBとBtoCのコンテンツマーケティングは何が違うのか。こうした疑問をお持ちの方は多いかと思います。筆者もセミナーで登壇するたびに、似たような質問をいただきます。ステークホルダーが多数にのぼることの多いBtoBの場合、BtoCとは違ったアプローチが必要な場合も確かにあります。しかし、コンテンツマーケティングに取り組むうえでやるべきことは基本的に同じといえるでしょう。本稿では、コンテンツマーケティングにおけるBtoBとBtoCの共通点や違いについて確認します。

BtoBとBtoC コンテンツマーケティングの共通点

まず、BtoBとBtoCの定義について確認します。

BtoBとはBusiness to Businessの略称であり、企業間での取引を指します。一方、BtoCはBusiness to Customer(Consumer)の略称で、企業と消費者もしくは個人との取引を意味します。

マーケティング業界では、よくBtoBとBtoCという分け方をしますが、実はこれは本質を見誤る可能性のある、危険な分け方でもあります。BtoBだとしても、小規模かつ商品単価の低い商品を扱う小売店がターゲットの場合、BtoCに似たカスタマージャーニーマップとなることがあります。同様に、BtoCだとしても、例えば住宅や車の場合、高単価かつ検討期間が長く、また決裁権者が複数にのぼるケースもあります。結果的にBtoBと似たアプローチとなることも多いのです。

とはいえ、これらはあくまで「結果的にそういう戦略になった」だけのことです。企業理念に基づくビジネスゴールを設定して、顧客第一主義のもとペルソナ設定やカスタマージャーニーマップ作成を進めていく。私たちはこれらのことだけに注力すればよいのです。「商材がこうだからBtoC的なアプローチだな」などと考えることなく、顧客と向き合って戦略を立てていくことが重要といえます。この点こそが、BtoBとBtoCの共通点であり、コンテンツマーケティングの本質的な部分なのです。

違い①検討期間の長さと関係者の人数

商材にとらわれることなく、顧客と向き合って戦略を立てるのがコンテンツマーケティングの本質であることを理解したうえで、BtoBコンテンツマーケティングの特徴を、BtoCとのおおまかな違いを中心に見ていきましょう。

まず、BtoBの場合、関係者が複数、かつ検討期間が長くなる傾向にあります。

BtoBコンテンツマーケティングの特徴

例えば、あるマーケティング・テクノロジー・ツールの導入を検討している企業があるとします。関わる人物は、マーケティング担当者、マーケティング部の部長、経営層の少なくとも3人にはなるはずです(実際はもっと多いケースが多いですが)。それぞれ立場や視点が異なり、必要な情報は異なります。

高価なツールの場合、何らかのコンテンツ(情報)によって、担当者→部長→経営層と順に口説き落としていく必要があるでしょう。半年ほどかけて提案を続け、ようやくほとんど導入が決まったという状態になったにもかかわらず、最後の最後で経営層にひっくり返されるなんてことは日常茶飯事です。ひっくり返されないにしても、なぜか契約直前に値下げ交渉なんてこともよくあります。

これは、経営層が求めるコンテンツ(情報)が足りなかったことが要因です。いくら担当者とベンダーとの間に人間関係ができており、担当者が「このベンダーは信頼できる」と感じていたとしても、ベンダーとの人間関係ができていない経営層は、そう感じない可能性があります。特にコモディティ化が進む分野であれば、そのツールでなければならない蓋然性に乏しいと経営層は判断しがちです。

したがって、BtoBのコンテンツマーケティングの場合は、先回りしてコンテンツを用意しておく必要があります。担当者だけでなく、部長や経営層についてもカスタマージャーニーマップに落とし込み、必要なコンテンツを作成していく。こうやって制作したコンテンツは、担当者が上司を説得する際にも役立ちます。

企業組織は直感だけで行動しがちな個人とは異なり、論理的に複数人でじっくり検討を進めます(人間関係が関わってくることもありますが…)。結果、検討期間は長くなりがちです。関係者が多く検討期間が長いBtoBは、綿密な設計が不可欠。ペルソナが1人であることも多いBtoCと比較すると、複雑な設計となることも多いといえるでしょう。

違い②コンテンツマーケティング戦略の目的

マーケから営業に受け渡す

BtoCの場合、例えばコンバージョンを「ECでの購入」に設定するケースはよく見られます(ブランディング目的でオウンドメディアを運営するような「ブランドジャーナリズム」の場合は異なります)。一方BtoBの場合、オンラインだけで契約に至るケースは、よほど単価が低くない限りは稀でしょう。

BtoBの場合、コンバージョンを「オンライン商談」に設定するケースも比較的安価なSaaSのツールだとあり得ますが、「お問い合わせ」「資料請求」などを通したリード獲得とするケースが一般的です。そこからインサイドセールスやフィールドセールスに情報を受け渡し、営業活動を展開するという流れです。

したがって、BtoBの場合は、マーケティング戦略と営業戦略を一緒に考える必要があります。マーケティング部と営業部の仲が悪いような企業だと、協力して戦略を立てることができず、売り上げにつなげられる確率は下がるでしょう。

違い③コンテンツの種類

BtoBコンテンツ

BtoBの場合、コンテンツの種類(や媒体)はコーポレートサイトやサービスサイトの基本コンテンツや動画コンテンツ、オウンドメディアの記事コンテンツ、SNSの投稿といったものはBtoCと共通しています。これに、ダウンロードコンテンツであるホワイトペーパーや製品カタログ、ウェビナーといったものが加わります。

論理的に説得していく意味では、ビジュアライズされたコンテンツをコーポレートサイトやサービスサイト内に置くケースも増えています。最近注目を集めるインフォグラフィックコンテンツもその一つです。データをインフォグラフィックで可視化することで、一目で業界の環境や自社の強みなどを伝えるものです。

インフォグラフィックイメージ

まとめ:BtoBとBtoCは本質的には同じもの

BtoBにおけるペルソナの人数やコンテンツの種類に、正解はありません。繰り返しにはなりますが「結果的にそうなった」というだけであり、顧客と向き合って戦略を立てることだけにフォーカスすることが大切です。その意味ではBtoCとの違いは、実は「ほとんどない」というのが、筆者が長年コンテンツマーケティングを研究してきて感じる結論です。「顧客第一主義」を心がけましょう。