コンテンツマーケティングでは、カスタマージャーニーマップを作成します。この中で、認知のきっかけとして「検索流入」を想定することは一般的ですが、結果世の中には既視感のあるSEOコンテンツがあふれるようになりました。この記事では、「似たようなコンテンツの海」から一歩抜け出すために必要なコンテンツの「傾き」(ティルト)について解説します。

コンテンツティルトとは

コンテンツティルトのティルトは「Tilt=傾き」を意味します。コンテンツマーケティングの父ジョー・ピュリッジが唱える概念です。コンテンツが物理的に傾いているわけではなく、私はこれを「独自性」「トガり(尖り)」と解釈しています。

コンテンツに傾きがあれば、似たり寄ったりのコンテンツが大量に漂っているウェブ上でコンテンツの競合がいなくなり、ブランドや企業が突き抜けた存在となります。

上位記事も多くは傾いていない

カスタマージャーニーマップの上流(またはマーケティングファネルの上部)では、検索流入を狙うパターンが多いといえます。結果、検索結果の上位ページは似たり寄ったりなコンテンツが目立つようになりました。中には既視感のある情報を寄せ集めただけのコンテンツもあります。もちろん、工夫して制作したからこそ上位表示されているわけですが、ペルソナが検索順位1位のページを訪れたからといって、課題・悩みの全てが解決するかといえば、そうではないのが現在の環境です。

<「コンテンツマーケティング」と検索した上位20記事>

「コンテンツマーケティング」の検索結果上位20

グレーのタイトルはGoogle抽出の質問や強調スニペット。タイトルだけでは似ており、どれを開けばよいか迷ってしまう

 

コンテンツの傾かせ方

クマベイスの考える「コンテンツのトガらせ方」を以下5ポイントにまとめました。

1:必要だけど手に入りにくい情報を提供する

ペルソナにとって必要だけれども手に入りにくい情報。これを手に入れることができれば、ペルソナは「役に立つサイトだ」と思うでしょう。例えば、アンケート調査による数百人の意見や考えをまとめた情報は、なかなか個人では手に入れることができませんよね。

2:専門知識がなければ理解できない内容を読みやすく「翻訳」する

ペルソナが知りたいと思っている情報について、ネット上に専門的なコンテンツしか存在していないことはよくあります。あまりにも専門的すぎる内容であれば、丁寧に説明するコンテンツを制作することで、ペルソナに刺さるコンテンツとなります。

3:「欲しい」と認識していない情報を先回りして提供する

ペルソナが「欲しい」と思っていない情報でも、ペルソナの状況によっては提供すると役立つ場合が多々あります。例えば、ペルソナに影響のある法律や制度については、たとえ世間一般のニーズが少なくともコンテンツ化すべきです。

他にも、ペルソナが頼りにしているような資料の最新版の情報を提供すると喜ばれるでしょう。ペルソナの行動やマインドからコンテンツを逆算して企画することが大切です。

4:同じ内容のコンテンツは他にもあるならトンマナに特徴を出す

これは変化球気味ですが、同じ解説記事、比較記事などにおいて、デザインや説明口調に特徴が出ているものです。ただの記事形式のコンテンツではなく、インフォグラフィックにしてみたり、マンガで提供したり、デザインを工夫したりすることで、目にとまる確率が高まります。

5:「3つのE」の娯楽・感情にフォーカスを当てる

コンテンツに必要な要素を表した「3つのE」(Educational:教育(的)Entertaining:娯楽(的)Emotional:感情(的))の、「娯楽」「感情」にフォーカスを当てることも、トガらせる方法の1つです。

コンテンツに必要な「3つのE」

 

以上の5点はよくある解説記事や比較記事などに比べ、企画段階にすこし手間とコストがかかるものです。しかし、その分差別化ができます。ペルソナが欲しいと思っているコンテンツがすでに世の中に存在していたら、ぜひコンテンツをトガらせることを考えてみてください。

なぜコンテンツをトガらせることは難しいのか

5ポイントにまとめてコンテンツをトガらせる方法をご説明しました。やはりありふれた情報を並べるだけのコンテンツより、コストも手間もかかります。

しかし、コンテンツマーケティングにおいては、ページやサイトの流入数だけを目標にするのではなく、あくまでもペルソナに有益な情報を提供することで関係性を構築していくことが重要となります。

私の考える「トガっていないコンテンツ」の代表は、関連キーワードを詰め込んだだけのSEOコンテンツです。上記5ポイントをコンテンツに盛り込もうとすると、当然こうしたSEOコンテンツよりもコストや手間がかかります。これ以外にも、トガったコンテンツ制作に取り組めない状況があると考えます。

「1:必要だけど手に入りにくい情報を提供する」では、文字通り手に入りにくい情報を手に入れる必要があります。ペルソナが容易に手に入れられない情報ですから、コンテンツを提供する「企業の強み」を使う必要があるでしょう。

「2:言語や専門的な知識がなければ理解できない内容を読みやすく翻訳する」では、専門知識がコンテンツ制作チームにない場合、外部から探してきたり、習得したりすることが必要となります。

「3:「欲しい」と認識していない情報を先回りして提供する」では、コンテンツマーケティング戦略を立てている時点で、予測を立てることができます。しかし、コンテンツの配置の段階で、詳しくペルソナを定義できていなければ、詳細に予想することはできません。他のポイントに比べると導入しやすいですが、ざっくりとした戦略のみでは難しく、詳細な設計があることが条件になるでしょう。

関連して「4:同じ内容のコンテンツは他にもあるため、トンマナに特徴を出す」も、ペルソナの好むトンマナを想像するには、詳細ではっきりとしたペルソナ像をチーム全員が持っている必要があります。戦略設計の重要さを感じますね。

明らかにコストや手間のかかりそうなコンテンツのトガらせ方ですが、どの企業も手を出すことができる従来型のコンテンツを量産しても、競争に勝つことはできません。ペルソナが同じようなコンテンツを出している企業と自社を見分けることもできないでしょう。

無駄にコストや手間をかけるのはNGですが、コンテンツの制作本数だけを目標にするのではなく、ペルソナに振り向いてもらえるトガったコンテンツを作るために、何ができるのか考えてみてください。

トガったコンテンツ事例

コンテンツを傾かせる方法について考えてきました。次は、個人的に「このメディアのコンテンツは他とは違いトガっているな」と思う事例をご紹介します。

検索したら出てくるようなよくある例ではなく、最近さまざまな案件に関わる上で見つけたものですので、そこまで有名どころはないかもしれません。

まず、米国のモビリティの会社です。

ミッションのページは美しいデザインと熱いメッセージで構成されており、この会社の思いが伝わってきます。

いわゆるコンテンツマーケティングとして行なっている施策は「news」のページですが、よくあるSEOコンテンツがなく、Arcimotoの決算情報や自動車についての関連ニュース(~~州では〇〇のような法律が整備された、など)、CEOの挨拶などがコンテンツ化されています。法律整備のニュースは、専門性を生かした内容で、ペルソナにとっても必要な情報です。

このページでは、いわゆるファネルの上層、まだ興味を持っただけの通りすがりの人々に届けるのではなく、すでにある程度ファンになっている層に向けたものと思われます。ファンでない人物が決算報告会の質疑応答の内容を見ても、興味は持てないでしょうし、サムネイルに設定されている庭で楽器を演奏している役員らの写真を見ても、面白さは理解できないでしょう。

しかし、ブランドのファンは喜んで詳細ページに進むはずです。まだ認知や需要が限定されている分野でオウンドメディアを作る場合、大衆向けコンテンツではなく、すでにファンになっている層をどれだけコンバージョンに近づけるかの工夫がされているところは、非常にトガっている、よく計算されていると感じました。

トガったコンテンツ事例(2)

サンドイッチチェーン「サブウェイ」の、ストーリーテリングコンテンツです。

サブウェイは、日本にも多くの店舗を展開しているファストフードのサンドイッチ店。ファストフード店がダイエットのコンテンツを提供する。受け手からすると一瞬混乱しそうな切り口です。

ストーリーは、体重約190キロの大学生がサブウェイ・サンドイッチを1年間食べ続けながら運動し、体重を半分近く落としたというもの。大学生を最初に取り上げた学生新聞の記事がサブウェイの目に留まり、逆に男性を取り上げたコンテンツを制作することになりました。

こちらの大学生のその後を紹介した記事によると、その後20年にわたりキャンペーンが続き、「サブウェイ=ヘルシー」のイメージを定着させることに成功しました。

一般的にファストフード=ダイエットの敵というイメージがありますが、だからといって「自社製品はヘルシーですよ」とストレートに伝えるだけでは、ユーザーの心をつかむことができません。ストーリーや動画、話題性を活用した非常にトガった例であると感じます。

まとめ

トガったコンテンツを制作することは、よくあるSEO記事を作るよりもコストも時間もかかってしまいます。しかし、コンテンツがあふれる現代においては、自社が抜き出た存在となるために、コンテンツ制作を丁寧に行う他ありません。関連キーワードを網羅しきれなくとも、ペルソナの課題解決に繋がるような有益な情報を提供していくべきなのです。コンテンツ制作にはかけられる工数もコストも限られている状況でしょうが、すぐに思いつくコンテンツの制作に取り掛かる前に良い意味で目立つコンテンツを考えてみるのはいかがでしょうか。