海外でビジネスを展開する際、重要な要素の一つが現地スタッフといかにしてイメージを共有するか、という点です。ビジネスをローカライズさせる際、現地スタッフが核となります。彼らに同じイメージを持ってもらい、なおかつ「自分ごと化」してもらうことが成功への鍵となります。その際、有効なのがワークショップです。今回は、私がタイやフィリピンで現地拠点立ち上げに参画した経験からの学びを紹介します。

海外ビジネスの経験とやりがい

私が海外での拠点立ち上げに参画したのは、タイにおける東南アジア拠点立ち上げが初めてでした。ただ、それまで外資系企業に勤めていたことから、海外の同僚とプロジェクトを進めたり、海外スタッフのマネージメントをしたりといった経験はありました。そのため、立ち上げ時にはある程度は現地スタッフのマネージメントには自信がありました。

しかし、それは「はりぼて」の自信でした。それまでは、自分と似た思考の人たちと接していたため、最初からイメージを共有できていたのです。この事実に気がついたのは、東南アジアで現地拠点立ち上げに参画した後のことでした。

私が担当した東南アジアは、いわゆる「タイムマシン経営」が有効でした(もちろんある程度は現地に合わせる為の試行錯誤が必要になります)。

例えば展示会。営業チームから顧客ニーズを教えてもらった上で展示会のコンテンツに織り込む。展示会の前後でSNSを有効活用する。これらは私にとっては当たり前のことでしたが、当時のタイでは一般的ではありませんでした。

これらに取り組むことは、当時とても大変でした。私からすれば、「過去」の施策ですが、現地スタッフにとっては「未来」の話です。したがって、イメージにどうしてもずれが生じてしまいます。イメージを全く同じにすることはできなくても、ある程度の方向性をあわせる必要があります。それがまた難しくもあり楽しくもありました。

イメージを統一するための解決策として、頻繁にワークショップを行いました。当時、グループ会社から様々な人材が集まっていたこともあり、入社年次や業界認識が異なるメンバーだったので、なおさらワークショップが重要でした。

ワークショップには色々な方法がありますが、会社経営や会社の方向性をより「自分ごと」としてとらえてもらうためにも、自分が一人でレクチャーするタイプではなく、全員で作り上げていく形式を採用しました。

ワークショップで取り組んだこと

会社のミッション・ビジョンの確認

タイの会社には、すでに本社のミッション・ビジョンがすでに存在しました。それを全員が知っているか、また理解できているかを確認。さらに深掘りして議論することで、会社のことを深く理解してもらいました。

SWOT分析

当時の会社では、自社の分析をするという習慣がありませんでした。そのため、ワークショップでSWOT分析にじっくり取り組みました。現地スタッフは最初こそ発言が少なかったのですが、慣れてくると様々な意見が飛び交い、白熱した議論となりました。

競合を分析+ポジショニング

自分たちの競合が誰なのか、また彼らがどのような動きをしているのか、さらには自分たちが業界でどの位置付けなのか。ポジショニング分析は、「自分ごと化」してもらうためにも有効です。しっかり話し合い、今後どういった方向に進むべきなのかを皆で決めていきました。

今後の戦略

ここまでの3つのワークショップに、総務、セールス、マーケティングの各チームで取り組み、全員が同じイメージを共有できたところから、これからどのような戦略でビジネスやマーケティングを展開していくのか話し合いました。

ワークショップ後は、毎週の定例会で1〜3をおさらいし、4の戦略を必要に応じてアップデートします。そうすることで、言われたことをただやっているのではなく、自分たちで作り上げたことに関して責任感が芽生えます。

褒めることでモチベーションアップ

ビジネスは長丁場の戦いです。モチベーション維持も重要となります。現地マネージャーであった私は、とにかく現地スタッフを褒めるように心がけていました。

当時、現地でマネージメントの経験がある複数人の方からアドバイスを受けたのですが、ほとんどの方が東南アジア、特にタイでは人前で叱ったり注意したりしないよう強くアドバイスされました。どうしても注意をしなければいけない時は1対1が原則とのことでした。これは海外だけではなく、日本でも同じだとは思いますが、国や地域によって、慣習は異なります。これらをしっかり学ぶことも重要となるでしょう。

さて、この褒めるというのも難しいもので、一人だけを褒めても他のモチベーションが下がってしまいます。したがって、誰をどういった理由で何回褒めたのかを、個人の日誌にちゃんとメモしていました。

ワークショップでみんなで同じスタートラインに立ち、そこから自分たちで戦略を立てる、それに関して上手く言ってる事は上手に褒めモチベーションを上げる。

最初はこの流れで上手く行っていたのですが、途中からマーケティングとセールズで方向性が多少変わってきて多少ギクシャクすうるのを感じました。ヒアリングをした結果、お互いがお互いを敵視していることがわかりました。手柄を取った取られたでいさかいが生じていたのです(これも国内でもよくある話ですね)。

本来なら、すぐに気が付いて先手を打つべきだったのですが、後手に回ってしまい状況が悪化。そこから色々と試した結果、一番上手く行った解決策は、「共通の目標」を改めて作ったことでした。

当時、最大のライバル企業の記事がたまたまウェブメディアに掲載されていました。インサイドセールスが潤滑油の役割を担い、セールス全体の成績が上がった。こういった記事だったと記憶しています。この記事を読んだセールス、マーケティングチームが、「自分たちも負けてられない」と団結。一体感が生まれ、自然とギクシャクとした関係は解消していきました。

当たり前のことですが、海外において自分は外国人となります。現地のことを理解している現地スタッフがビジネスの核となるので、いかに彼らのモチベーションを高め、持続させるかが重要となります。

そのために、皆同じイメージを持ってもらう。管理者/マネージャーとしては、ワークショップをうまく活用しながらチームビルディングに取り組むことが求められるでしょう。