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コンテンツマーケティング界のゴッドファーザーと呼ばれるジョー・ピュリッジは、コンテンツによってビジネスを成功させるための「Content Inc.モデル」を提唱しています。7つのステップから成り、収益化までに18カ月、サイクルを完成させるまでに24カ月以上を必要とするものです。今回は、このモデルを紐解いていきます。
Step 1:スイートスポットを見つけストーリーを見出す
スイートスポットとは「自社の持つ強みや専門知識、提供できる技術」と「ターゲットが欲しいと思っているもの、情報ニーズ」が重なる部分のことです。需要と供給が重なっている部分ですね。
このスイートスポットを見つけるためには、それぞれ「自社の持つ強みや専門知識、提供できる技術」と「ターゲットが欲しいと思っているもの、情報」をきちんと調査する必要があります。
「自社の持つ強みや専門知識、提供できる技術」については、改めて確認する機会が思いのほか少ないものです。ワークショップで「自社の持つ強みや専門知識、提供できる技術」を見つけるミニワークを行うと、言葉に詰まってしまう方も多いもの。ぜひ一度考えてみることをお勧めします。
情報ニーズについては、ターゲット自身も言語化できていない可能性があります。顧客との深いコミュニケーションの中から少しずつ見つけていくしかありません。「インサイト」にもつながる話です。
Step 2:コンテンツを傾かせる、差別化する
コンテンツを傾かせることを「コンテンツティルト」と呼びます。ジョー・ピュリッジは自身のLinkedin投稿で、コンテンツマーケティングの失敗の原因には「コンテンツの継続的な投稿をやめてしまうこと」「コンテンツティルトが足りないこと」の2つがあると説明します。
前者は仕組み化することでなんとかクリアできそうですが、後者は意識しないと難しい。これだけ情報があふれる時代ですから、ただ漫然と専門知識と情報ニーズが重なる部分でコンテンツを制作しているだけでは、ターゲットに届かないのです。「コンテンツを他とは違うものにするために、コンテンツを十分に傾けなければ、コンテンツは他の雑踏の中に消え去り、忘れ去られてしまうだろう」。ピュリッジもこう説明します。
コンテンツティルトのティルトは、「Tilt」すなわち「傾き」を意味します。物理的に傾いているわけではなく、私はコンテンツの「独自性」「トガり(尖り)」と解釈しています。すでに世の中はコンテンツであふれており、コンテンツ制作しようと考えてもたいていのものはすでに何者かによって制作済み。
そんな中、自分たちが制作したコンテンツをペルソナに「消費する価値がある」と思ってもらうためには、似たようなコンテンツをたくさんつくるのではなく、トガったコンテンツを制作するのがポイントです。
コンテンツをトガらせることで、これまで似たようなページを見てきたペルソナも足を止めて興味をもってくれます。いい意味で目立ったコンテンツというわけです。
とはいえ、普遍的な内容を説明するコンテンツで事実を並べるだけでは、トガっているとはいえません。コンテンツの傾け方についてはこちらの記事で解説しています。
Step 3:コンテンツの置き場所を決め、構築する
制作したコンテンツを十分トガらせたところで、次はコンテンツの置き場所について考えていきます。
コンテンツマーケティングに取り組む際、コンテンツの置き場所としてすぐに思いつくのが、オウンドメディアやサービスサイトです。
コンテンツマーケティングでは、ペルソナにとって有益なコンテンツを制作し、適切なタイミングで届けることが重要となります。結果、見込み顧客の興味を引き、エンゲージメントを高め、購買に向けた行動を促します。
オウンドメディアなどへのコンテンツ投稿のほかに、SNSや紙媒体、動画プラットフォーム、メルマガ(ニュースレター)、プレスリリース、外部媒体への寄稿、広告、インフルエンサー発信など手段は様々ですが、ペルソナに最も情報が届きやすいチャネルを検討して選びましょう。
ただし、チャネルを多く選んでしまうと、どれもが中途半端になり、コンテンツの品質を維持することが難しくなります。運用可能な範囲で検討してください。
Step4:コントロール可能な場所でオーディエンスを構築する
コンテンツをコントロール可能な場所に置くことで、管理しやすく、オーディエンスを構築しやすくなります。
コントロール可能な場所とは、SNSや外部媒体のように、他社都合で環境が変化してしまう場所ではありません。自社ウェブサイトやオウンドメディア、自社出版した印刷媒体などが該当します。
コントロール不可能な場所にコンテンツを継続して配信し続けた、オーディエンスが十分に集まり、かつオーディエンスのエンゲージメントを高めることができたとします。それでも、ある日突然、その場所自体がなくなってしまったり、オーディエンスにとって居心地の悪い環境となったりする可能性があるでしょう。これらを自分たちの手でコントロールすることはできません。
TwitterがXとなった直後、大きな混乱が生じたのは記憶に新しいですね。SNSは、オウンドメディアにはない、さまざまな機能を持ち、多数のユーザーを抱えます。簡単にアカウントを作ることができますが、ある日突然積み上げてきたものがゼロになるリスクもあるのです。
安定してコツコツとオーディエンスを構築するには、コントロール可能なオウンドメディアが堅実といえます。また、印刷物など物理的な媒体も、購読者を獲得していくことでオーディエンスビルディングが可能となります。ただし、言うまでもなく双方とも外部プラットフォームを利用するよりも断然手間がかかります。コンテンツマーケティングの成功に近道はないと改めて感じるところですね。
Step 5:収益化のためのマネタイズ方法を考える
コンテンツマーケティングの目的やゴールはさまざまですが、収益を得ることを目的とする場合、マネタイズが不可欠です。企画段階でマネタイズを一切考えずにスタートすることはないと思いますが、それでもすぐに売上が発生する広告運用に比べ、収益化を想像しづらい施策といえます。
この点について、ジョー・ピュリッジがヒントを提示しています。
広告/スポンサーシップ
カンファレンス/イベント
プレミアム・コンテンツ(書籍、電子書籍)
寄付
アフィリエイト収入
購読料
「ブランドや企業に忠実なオーディエンスを作り上げた後の、直接的な収益化の方法」としてピュリッジが挙げる上記のキャッシュポイント。コンテンツマーケティングにより、ある程度エンゲージメントの高いファンができたら、選択肢が広がるわけです。
ある調査によると、コンテンツクリエイターの主なマネタイズ方法としては、以下が人気とのこと。
コンサルティング
コーチング
本の出版
オンラインクラス(セミナー)
「Step3:コンテンツの置き場所を決め、構築する」では、あれこれ手を出さずに継続して注力できるチャネルを選択し、コンテンツを提供し続けることが大切とお伝えしました。しかし、マネタイズの方法については、一つに絞ってしまうと成功のチャンスが狭まります。むやみやたらと手を出すことはNGですが、ペルソナの行動に沿ったマネタイズ方法が複数あると安心です。
Step 6:コンテンツの多様化、リスクの低減
コンテンツの多様化とは、様々なタイプ、様々な切り口のコンテンツを企画していくことを意味します。ペルソナが好むコンテンツの種類と、自社の得意なことや提供できるコンテンツの内容がマッチした企画を考えることでクリアできるでしょう。
記事コンテンツのみではなく、ペルソナによっては漫画コンテンツや動画コンテンツ、インフォグラフィックコンテンツが必要なケースも出てくるはずです。
次にリスク軽減について。一つのチャネルでコンテンツを届けている場合、その方法でコンテンツを提供できなくなった際にコンテンツマーケティングの取り組み自体が終了してしまうリスクがあります。ある程度余裕が出てきたタイミングで、別の場所へのコンテンツ配信を検討してもよいでしょう。
全体のリスク軽減の意味で、いくつかのコンテンツ提供方法(提供チャネル)を確保してみてください。
Step 7:売却、もしくは拡大を判断する
最後はビジネスの売却をするか、もしくは拡大させるのかを判断するステップです。無理にビジネスを売却したり拡大させたりする必要はありませんが、ステップ7に到達すれば、いずれもそこまで難易度が高くない状況となります。
これまで7ステップでコンテンツマーケティングによるビジネスモデルサイクルを説明してきました。
出典:Content Marketing Institute “7 Steps to Build a Successful Long-Term Content Model” https://contentmarketinginstitute.com/articles/success-long-term-content-model/
Step 1:スイートスポットを見つけストーリーを見出す
Step 2:コンテンツを傾かせる、差別化する
Step 3:コンテンツの置き場所を決め、構築する
Step 4:コントロール可能な場所でオーディエンスを構築する
Step 5:収益化のためのマネタイズ方法を考える
Step 6:コンテンツ・ポートフォリオを多様化し、収益を増やし、リスクを大幅に低減する
Step 7:売却、もしくは拡大を判断する
コンテンツマーケティングを活用してビジネスを成功させるためには、この道のりを綺麗に走っても24カ月以上かかることになります。
まとめ
これまでコンテンツマーケティングのビジネスモデルサイクルを説明してきました。巷のコンテンツマーケティング事例を研究すると、力の入っているステップとそうではないステップがあることが見えてきます。
さまざまな戦略を見たとき、日本のコンテンツマーケティングの現場で足りていない部分、個人的にもっと力をいれたほうがよいと感じる点は「Step 2:コンテンツを傾かせる、差別化する」です。このステップについては別の記事でご説明しています。
成長を急ぐあまり手間を惜しんでは結果につながりません。ぜひチームで腰を据えて取り組んでみてください。