新型コロナウイルス感染症の影響により、新たな顧客接点としてコンテンツマーケティングに取り組もうとする企業が増えてきました。コンテンツマーケティングにおいて、コンテンツを充実させることはもちろん大切です。しかし、そこだけに意識を向けすぎると、コンテンツマーケティングにおいて重要な視点を見落としてしまいます。今回はコンテンツマーケティングを始める、または始めたばかりのときに陥りがちな誤解について解説しながら、コンテンツマーケティングとは何か改めて考えます。

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コンテンツマーケティングはオンライン施策のみではない

コンテンツマーケティングと聞くと、オンラインのオウンドメディアやSNSなど、オンライン施策のみであると思われている節があります。新型コロナウイルス感染症の影響が広がる中、その傾向は顕著になっています。

コンテンツは、オンラインで配信する記事や動画だけではありません。紙のフリーペーパー、オフラインのセミナーなども立派なコンテンツです。現在の状況で対面型イベントを行うことは難しいと思いますが、オンラインのみに目を向けるのではなく、広い視野でコンテンツを考えましょう。

コンテンツの種類はさまざま

コンテンツ主体で考えてしまう

先述の内容と重なる部分もありますが、コンテンツマーケティングを進める上で陥りがちな失敗が、「コンテンツ主体で施策を考えてしまう」ということです。「今は動画がよく見られるから動画を」「オンラインのセミナーが流行っているからやってみよう」というように、「よく聞くから」「流行っているから」という理由だけでコンテンツを考えても効果は望めません。

全てはペルソナありきです。そして、「適切なタイミングで適切な情報を発信する」という考え方が必要です。カスタマージャーニーマップに沿ったコンテンツの設計を行いましょう。

SEO対策のみ考えてしまう 集客だけが目的になる

コンテンツマーケティングについて、「SEO対策をしっかり行って、とにかく集客する」という考え方に偏ってしまうケースがあります。SEO対策、集客も重要ですが、それはコンテンツマーケティングの一部です。あくまでマーケティング手法のため、集客し、オーディエンスのエンゲージメントを高め(ファン化)、最終的に購買に結び付く行動を取ってもらわねばなりません。

もちろんSEOを意識することは重要ですが、いわゆる「小手先のSEO対策」のみに力を注ぐのではなく、「顧客ファースト」の姿勢と「自社サイトを訪れた人に最終的にどういった行動を取ってもらいたいか」という視点でのコンテンツ制作こそが重要ということを頭に入れておきましょう。

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コンテンツマーケティングに即効性を求める

今回のコロナ騒動を受け、多くの企業がコンテンツを充実させ始めたように感じます。ここで重要なのは、「コンテンツマーケティングに即効性を求めてはいけない」ということです。

コンテンツマーケティングはオーディエンスに寄り添い、時間をかけて信頼を勝ち取っていく手法です。そのため、効果が出るまでに時間を要します。これまでの従来型の広告の代わりとしてコンテンツマーケティングを始めた場合は、この点に注意が必要です。時間をかけて勝ち取った信頼は深く、長いものになるという利点はありますが、即効性を求めるのであればコンテンツマーケティングには手を出さない方が良いともいえるでしょう。私の実感だと、BtoBの場合1年間は腰を据えて取り組むべきものです。

コンテンツマーケティングは“バズ”を生むものである

こちらも即効性という話につながりますが、コンテンツマーケティングは“バズ”を生み出すものではありません。もちろん、結果的にバズを生み出すことはあるかもしれませんが、それを最初から狙って行うことは避けるべきです。

繰り返しになりますが、コンテンツマーケティングで重要視するものはペルソナとカスタマージャーニーマップ、そして「オーディエンスの信頼を勝ち取ること」です。バズを生み出したコンテンツはその時は注目を受けますが、その後の信頼につながるとは限りません。また、バズ狙いのコンテンツは炎上リスクが伴うケースがあることも見逃せませんよね。「信頼を生むコンテンツとは何か」という視点で考えましょう。

コンテンツ戦略≠コンテンツマーケティング

コンテンツマーケティングについて学んでいると、コンテンツ戦略(コンテンツストラテジー)という考え方を見聞きします。この2つの言葉、実は似て非なるものです。

コンテンツ戦略の定義は「ビジネス目標達成に結び付くような、質の良いコンテンツを作るための戦略」のこと。質の良いコンテンツを作るためには、「コンテンツの内容」「コンテンツの管理」なども関わってきます。コンテンツ制作に関する戦略全てを含むのです。

一方、コンテンツマーケティングの定義は「顧客にとって価値があるコンテンツを一貫して配信し、コンテンツの受け手(顧客)を惹きつけ、関係を継続し、最終的には収益につながる行動を取ってもらうという戦略的なマーケティング手法」(Content Marketing Instituteより筆者訳)です。

すなわち、コンテンツ戦略はあくまで良いコンテンツを作るための「戦略」、コンテンツマーケティングとは、コンテンツを用いた「マーケティング手法」ということになります。どちらも「質の良いコンテンツを作る」という考え方を基本としているため、混同しやすいようです。

両者の違いについてはっきりさせ、コンテンツ戦略を念頭にコンテンツマーケティングに取り組むことで、より良い効果を発揮します。

(コンテンツ戦略についてはこちら)コンテンツ戦略(ストラテジー)とは? コンテンツマーケティングとの違いを中心に解説

コンテンツマーケティングで重要な視点は「オーディエンスの信頼を獲得する」こと

今回はコンテンツマーケティングにおいて生じやすい誤解をテーマに、改めてコンテンツマーケティングについて考えていきました。やはり重要なのはペルソナ設定です。つまり、顧客目線を大切にすることで自ずとコンテンツマーケティングの考え方に近づいていくのです。コンテンツを用意するうえで重視するべきなのは「オーディエンスの信頼を獲得する」こと。単にコンテンツを充実させるのではなく、この視点を大切にして取り組んでいきましょう。