新型コロナウィルスの感染拡大により、営業職を抱える多くの企業がリモートワーク、リモート営業を取り入れるようになりました。インサイドセールスは活動内容のほぼすべてをリモートワークで行うことができることから、近日注目を集めています。インサイドセールスの活動の中でも多くを占めるのが架電による営業です。今回は架電にフォーカスして、よくある失敗とその対処法についてご紹介いたします。
リモートワークの現在地(データ)
これまでインサイドセールスは訪問での提案を必要としないことや、データの管理により場所を選ばず活動でき、リモートワークにも適していることを説明してまいりました 。
最近は新型コロナウィルス騒動により一気にリモートワークをはじめる企業・職種が増えたのですが、緊急事態宣言が解除されしばらくたち、また通勤時間帯の満員電車が話題に上るようになりました。
4月中旬のまさに緊急事態宣言下の調査ですが、リモートワーク実施率は全国平均で27.9%で、緊急事態宣言発令前と比べておよそ2倍に増えたことがわかりました。現在はこの数値よりもかなり下がっているものと予想できます。
緊急事態宣言発令に伴い、いきなりリモートワークを強いられることになったと捉える企業が多いようですが、こちらの調査では「新型コロナウイルスの流行を機に日本企業に在宅勤務などのリモートワークが定着すると思うか」という質問に対し、およそ20%が「定着すると思う」と答えています。非常に前向きな調査結果だと思いました。
以上の調査から推測するに、これまでリモートワークに取り組もうとしなかった企業についても、新型コロナウィルス感染拡大の影響で強制的にリモートワークを経験した結果、「案外できるかも」と気づいたのではないでしょうか。実験的に業務のやり方を変えてみて、その間たとえ業務がうまく回らなかったとしても、「その方法が間違いだった」と確認することができます。
営業組織について、これまでの従来型の方法が根強く、なかなか変革ができないという声を多く聞きます。今回の新型コロナウィルスの影響により、無理やり営業スタイルを変革させられた企業があるように、外的要因にのみ任せるのではなく、日ごろから小さなトライアンドエラーを繰り返すことが、より良い方法を見つける近道なのではないかと考えます。
リモートワークの電話営業でやりがちな失敗
では、リモートワークで電話営業に取り組むにあたってどのような失敗が考えられるでしょうか。例を3つ挙げて紹介いたします。
例1:初回架電が遅くなってしまう
インサイドセールスの電話営業に関するよくある質問に、「リード発生から架電までの時間はどのくらいがベストか」というものがあります。
私の経験からすれば「早ければ早いほど良い」というのが真理だと感じます。とはいえ「リード発生から社内システムに登録→ラベリング担当が確度をつける→営業担当をアサイン→リード元の企業名や規模・所在地や(もしあれば)IR情報などを調べる」というフローをこなしていては、数分以内の架電は現実的に難しいでしょう。
これが、たとえばリードが発生してから1日経ってしまったり、1度も担当者につながらないまま放置してしまったりすると、ラベリングした確度にかかわらずどんどん顧客からの関心は別の方向にそれていってしまいます。また、関心がそれていくだけでなく、「問い合わせしたのに反応してくれない」「無視されている」とクレームにつながりかねません。
リモートワークにより、いままですぐ近くに座っていたメンバーと離れることになれば多少の不便が発生するかもしれません。リード振り分けから初回架電までのタイムラグも発生することが予想できますので、まずは自分でできる範囲のリードタイムを縮める工夫をしてみてください。
例2:一度失注したリードへの再架電が徹底されていない
発生したリードに対して、1回で担当者につながることはかなり低確率です。このように1回で担当者と話すことができなかった場合は、すぐに休眠リストに片づけてしまわずに、再架電の徹底が必要ですが、できていますでしょうか。
1度目の架電で担当者につながらなかった際、たまたま別の打ち合わせ中で電話に出られなかった場合が多くあります。にもかかわらず、1回目の電話がつながらなかっただけで休眠リストに片付けてしまうのは、先方からの問い合わせを無視していることと同義です。
例3:対応漏れ・重複対応が生じている
発生したリードに対してリードラベリング担当がインサイドセールスの担当者を振り分けますが、振り分けられたリードへの対応でミスが発生することが以外にも多くあります。
まずアサインされた担当者が他業務や顧客対応に追われて、振り分けられたリードに対してアクションすることができない場合です。先ほどの再架電の徹底でも触れましたが、問い合わせをしたにもかかわらず反応がないのは最悪のパターンです。
次に、一度対応したリードに対して他インサイドセールスが再度架電をしてしまうパターンもあります。こちらは対応が漏れてしまうよりはまだマシですが、一度目の架電で100%お断りだった場合はただのしつこいテレアポ営業と化してしまいます。場合によっては「何度もかけてこないで!」とクレームにつながりかねません。
対処法
これまで3つの失敗例を挙げてきました。ここからはそれぞれに対する対処法をご紹介いたします。
対処法1:リード発生から3時間以内に初回架電できる人を担当につける
それぞれ抱えているタスクや架電リストの順番待ちもあることでしょう。したがって、初回の架電は「数時間以内」と定めるのが現実的。SaaS系の場合「3時間」というケースが多いようです。
もし設定した時間を超えてしまうようであれば、アサインした営業担当を交代したり、どうしようもない場合は丁寧なあいさつメールを一斉送信したりといった対応をしましょう。一斉メールには「明日お昼休みまでに一度お電話させていただきます」など、架電する時間を予告しておくと親切でより丁寧な印象です。
なぜ早ければ早いほどよいのでしょうか。理由は2つあります。
1つ目は、見込み顧客が問い合わせした場にとどまっているうちにコンタクトが取れる可能性が高いからです。デスクのPCで問い合わせフォームに入力し、15分後には会議がはじまってしまったり、お昼ご飯を食べに席を立ったりしてしまうかもしれません。その場に残っているうちに架電できれば少しでもつながる確率が高くなります。
架電のポイントですが、「5分ほどお時間いただけますか」と前置きすることで、早くお昼ご飯を食べたい見込み顧客も耳を傾けてくれやすくなります。
2点目は、初回架電があまりにも遅いと、見込み顧客が問い合わせしたことを忘れてしまうことがあるからです。会社名やサービス名、製品名を伝えても「忘れてしまった」となればあまり興味を持っていない証拠でもありますが、そうでない場合、既に他の製品に気持ちが移ってしまっている可能性が高いでしょう。優位に商談を進めるのが難しくなるので、できるだけ覚えてもらっているうちに追い営業をかけるべきです。
対処法2:未接触の場合、再架電は1週間以内に最大5回行う
ある企業でのデータですが、最多5回までと決めて再架電を徹底して行った場合、リード発生時の担当者に接触できる割合は90%を超えました。時間が経ってから接触できたとしても担当者が内容を忘れてしまっている可能性もありますので、できるだけ早めに1日1回架電して1週間以内に5回架電できるようにしましょう。これにより、1週間以内にリードの担当者と接触できる可能性が90%になるはずです。
5回までの架電がベストですが、もちろん例外もあります。役職者などに架電する場合は秘書や受付の方が電話にでてくださることがありますが、はじめの時点で営業電話はすべてブロックするというオペレーションが組まれている場合もあります。そのような場合は無理やり5回架電して担当者を出すようお願いしつづけるのは失礼にあたります。
「5回架電する」というルールに縛られるだけでなく、インサイドセールスひとりひとりの判断も必要になるのです。
また、律儀に5回かけ続けるのではなく、留守番電話に折り返しかけてもらうようメッセージを入れたり、メールでフォローしたりといった工夫も可能です。どの方法が効果的かは、その場の雰囲気や電話を受けてくれた担当の方の都合に合わせるように臨機応変に対応してください。
対処法3:ツールへの入力方法・内容を徹底する
リードラベリング担当がアサインしたリードへの対応に責任を持つために、対応できる方法として、ツールの利用を徹底することがあげられます。
まずアサインされたリードへの対応日時の優先度をラベリング、対応済みのリードに対して結果や次回アクションが必要なものについては目立つようにラベリング、他のメンバーへの伝達事項がある場合は所定の場所にメモを残すなど、厳格にルールを定めておく必要があります。
また、ルールを定めたらもちろん他メンバーも必ず守るよう、徹底してください。一人でもルールを守らないメンバーがいれば、たちまち顧客リストが乱れて今います。発生したリードと対応後の反応の記録はその場のみならず、将来的に案件掘り起しや活動の最適化のために利用されるものです。データは決して軽く扱わないようにしてください。
顧客への急な対応や急ぎの作業が発生し、ツールへの情報入力がおろそかになってしまうかもしれません。そういった場合は急ぎの対応に手を回すのもよいですが、情報入力やリード管理のプライオリティを下げないようにしてください。
まとめ
今回は架電にフォーカスして3つの失敗事例をご紹介しました。一気に問い合わせがきたり、自分の作業範囲が増えたりすると混乱してしまいますが、きちんとオペレーションを組んで、最適な優先順位付けを意識してください。リモートワークは自宅で一人で活動することになります。どうしても周りが見えず空回りしてしまうこともあるかもしれません。
架電についてはリードをただのリードとしてみるのではなく、その先に人間のお客様がいることを想像してみると、きっと無下にはできないはずです。一呼吸おいて、何が大切なのかを考えてみてください。
<関連書籍>
野口優帆『40分でインサイドセールスの考え方がわかる本』
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