9月16日から30日にかけて、東京都武蔵野市の商業施設「アトレ吉祥寺」で開催された、熊本の“今”を知るイベント「Do you know 熊本?」(主催・アトレ吉祥寺、企画運営・株式会社クマベイス)のプロデューサーを務めた。


熊本の料理人が炊き出しメニューを振る舞う「逆炊き出し」の様子。熊本市内で居酒屋を経営する上村元三さん(薄口醤油を手にした男性)の軽妙なトークに、会場からは笑いが絶えなかった=2016年9月18日、東京都武蔵野市のアトレ吉祥寺

仲間たちと「熊本のために」という使命感を持って取り組んだこの企画。多数のメディアに取り上げられ、次に繋がるようなオファーも複数あった。まずはイベントが成功したことを素直に喜びたい。

イベントの趣旨や経緯について尋ねられることが増えてきたので、イベントを終えたばかりのこのタイミングで、一度まとめておきたいと思う。

「被災地の情報をどのように得ればよいのか」をテーマに議論したトークセッションDay1=2016年9月22日、東京都武蔵野市のアトレ吉祥寺

ジモコロで話題を集めた熊本地震の漫画や町屋の被害状況を説明したパネルなどの展示=東京都武蔵野市のアトレ吉祥寺

「これからの被災地支援」をテーマに活発な意見交換がなされたトークセッションDay2=2016年9月22日、東京都武蔵野市のアトレ吉祥寺

ひょんなことから関わらせてもらうことになったこのイベント。アトレ側から「熊本のために何かしたい」と打診があったのは6月中旬のことだった。この時点では何も決まっておらず、7月に熊本を訪問し、何ができるか考えようということになった。

被災した後に復旧したばかりの田んぼを見る「Do you know 熊本?」の企画メンバー=2016年7月、熊本市南区

田んぼの脇では壊れた墓石が手付かずの状態で転がっていた=2016年7月、熊本市南区

7月上旬、アトレ吉祥寺の担当者らが熊本を訪れ、私も一緒に2日間かけて農産物や加工食品の生産者らに話を聞いてまわった。「田んぼがダメージを受けた」「風評被害で観光農園の客が激減した」。直接・間接被害により、どこも経営が苦しくなっている現状を知った。

田んぼの被害状況を説明する一般社団法人日本お米協会の森賢太さん=2016年7月、熊本市南区

私は、熊本地震の被災地の課題を共有するMeetup「むしゃんよか熊本のオーガナイザーを務めている。実際に支援活動にあたっている方に被災地の課題や現状を話してもらい、その内容をメンバーがTwitterやブログで発信する、という取り組みだ。その中で、被災地の現状を知ったつもりになっていた。

直接の被害は免れたが、観光客が激減した観光農園「吉次園」=2016年7月、熊本市北区

しかし、現地に直接出向き、当事者から話を聞くのとでは、感じ方が違う。Meetupでは課題を「知って」はいたが「理解」はできていなかったと、強く感じた。

その日の夜、生産者らと食事をともにした。昼はしんみりした雰囲気だったが、南国気質の熊本人はお酒を飲むととにかく明るい。「イベントがきっかけで熊本に多くの人が来てくれるといいな」。そんな前向きな話も出た。

打ち合わせで使用したホワイトボード。この日、イベント開催が正式に決まった=2016年7月、熊本市中央区

翌日、アトレ吉祥寺の担当者らも交え、中心メンバーで打ち合わせをした。今回の体験を踏まえ、イベントの目的は「熊本の現状だけでなく魅力も伝える」「熊本の生産者らの販路拡大」に決定した。

タイトルは、「復興」という単語をあえて使わないことで意見が一致。分かりやすく、かつ今回の趣旨を一言で伝えられるよう、「Do you know 熊本?」とした。

この打ち合わせにより開催が正式決定決したので、準備期間は実質約2カ月間しかなかったということになる。コンテンツ企画、スタッフ集め、制作、PR。やることは山のようにあった。会社の通常業務も同時並行でやる必要があったため、この2カ月間はほとんど記憶がないほどの忙しさだった。

逆炊き出し」では配布開始前から行列ができ、わずか10分で配布終了となる人気だった=2016年9月、東京都武蔵野市のアトレ吉祥寺

だご汁を食べながら料理人の話を聞く来場者ら。食べ終わった後も多くの人が席に残った=2016年9月18日、東京都武蔵野市のアトレ吉祥寺

熊本の料理人らが炊き出しを再現する「逆炊き出し」、復興支援に携わるキーマンらによるトークセッション、震源地・益城を体験できるVR。苦労して企画したコンテンツは話題を集め、NHKや産経新聞、熊本日日新聞など、数多くのメディアに取り上げられた。

「Do you know 熊本?」のことを報じた9月17日付の熊本日日新聞

各店舗のレジ横に掲示してもらった応援メッセージや共通ポップなど、アトレ吉祥寺全体を巻き込んだ取り組みも、多くの人に熊本に関心を寄せてもらうのに一役買った。

各テナントが応援メッセージを書き込んだ店頭ポップ

今回のイベントで印象的だったのが、「熊本はまだこんな状態なのか」という来場者の声が多数聞かれたことだ。熊本県内では連日、熊本地震関連のニュースがあふれている。しかし、東京ではほとんど目にする機会はない。風化が進んでいることに強い危機感を覚えた。

熊本県産品を販売したマルシェの様子。スタッフと客が会話を楽しむ姿が目立った=2016年9月、東京都武蔵野市のアトレ吉祥寺

一方で、「熊本地震の被災地に何かしたい」と話す人も目立った。しかし、そういった人のほとんどが「何をしてよいか分からない」と困り顔だった。イベントのトークセッションでも話題になったが、これからは東京からできる支援を考える機会や、東京と熊本をつなぐ仕組みをつくる作業が重要になってくるのだろう。そういった意味では、今回のようなイベントを、熊本県外のいろんな場所で継続していくことが、最も重要なのかもしれない。

「自分が知っている熊本」を付箋に書いて熊本の白地図に貼る企画「Do you know 熊本?白地図」。かわいらしいイラストも多かった=2016年9月、東京都武蔵野市のアトレ吉祥寺

シートベルト着用を呼びかける客室乗務員の声で目が覚めた。もうすぐ熊本空港への着陸態勢に入るようだ。飛行機の窓に顔を近づけると、屋根にブルーシートをかけた家屋が目に入った。熊本の復興はまだ道半ば。今回のイベントを次につなげていきたい。