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2020年は世界中が新型コロナウイルス感染症に振り回された1年となりました。従来の対面型の営業が難しくなり、コンテンツマーケティングについての注目度が上がった年だとも感じています。今年最後となる今回は、Content Marketing Institute(CMI)で公開されている2020年のBtoBコンテンツマーケティングに関するレポートを見ながら、今年のコンテンツマーケティングのトピックを振り返っていきます。レポートは上半期に行われたコンテンツマーケターへの調査をもとに作成されています。CMIの記事「2021 B2B Content Marketing: What Now? [New Research]」でもレポートについて解説されているため、ご興味のある方はこちらもぜひチェックしてください。

コンテンツマーケティングの戦略にどのような変化があったか

レポートによると、83%のコンテンツマーケターがコロナの影響により、コンテンツマーケティングの戦略を急速に変えたと回答しています。また。80%が効果的に変化できたと回答しており、変化が将来的に良い影響を与えると回答しています。このように見てみると、急な変化を余儀なくされましたが、おおむね前向きな戦略の変化だと捉えているコンテンツマーケターが多いことが分かります。

※CMIのレポートより筆者作成、記事中の図の単位は%

それでは、具体的にどのように戦略を変化させたのでしょうか。このことについても、レポートは回答を示しています。最多の回答を得たのは「ターゲティング/メッセージングの戦略」でした。続いて、「編集カレンダーの調整」「コンテンツ配信/プロモーション戦略の変更」「ウェブサイトの変化」「ソーシャルメディア/オンラインコミュニケーションへのリソースの追加」です。

※CMIのレポートより筆者作成

ターゲティングとメッセージングの変化を余儀なくされたのは当然のことと言えるでしょう。コロナの影響により、オーディエンスの状況や心情は劇的に変化しました。変化があったのはオーディエンスだけでなく、コンテンツを配信する企業も同様です。変化に合わせて編集カレンダーを調整する必要に迫られた実情が透けて見えます。「オンラインコミュニケーション」についての変化が見られるのも、今年ならではと感じます。

筆者が意外だと感じたのは「ペルソナ」「カスタマージャーニー」の見直しを行ったケースが少ないことです。見直しを行っているのは、いずれも20~30%台にとどまっています。コンテンツマーケティングの土台ともいえるペルソナとカスタマージャーニーマップの変化にまで着手したコンテンツマーケターは少なかったようです。今年は先が見通せない中、手探りの状態で変化を模索してきたという実態が浮き彫りになっていると感じます。年が明け、腰を据えて戦略を変化させるため、ペルソナとカスタマージャーニーマップにまで変化を加えるコンテンツマーケターが増えるのか。この点は、注目すべきと言えるでしょう。

コンテンツマーケティングの成功に結び付いたものは何か

コンテンツマーケティングを成功に導いた要因として、コンテンツマーケターは何を挙げているでしょうか。下の図はそれを表しています。「Most Successful」はコンテンツマーケティングが成功したと捉えているコンテンツマーケターの回答率、「All Respondents」は全体の回答率、「Least Successful」はコンテンツマーケティングがうまくいかなかったと考えているコンテンツマーケ―ターの回答率となります。例えば、「コンテンツマーケティング戦略を文書化したものがあった」に「はい」と回答しているのはコンテンツマーケター全体で43%、成功したと考えているコンテンツマーケターに限ると60%、うまくいかなかったと考えているコンテンツマーケターに限ると21%。つまり、コンテンツマーケティングの成否を分けた施策がここで明らかとなっています。

※CMIのレポートより筆者作成

これらを鑑みると、戦略について目に見える形にしたほうが成功に結び付きやすいと考えられます。また、編集カレンダーを作成することも成功のカギを握っているようです。また、コンテンツマーケティングを活用する目的として「サブスクライバーやオーディエンス、リードを育成する」を選択している例が、成功しているコンテンツマーケターほど強いということが分かります。いきなりサービスを売り出すのではなく、時間をかけて「育成する」という目的を持っているほうが、コンテンツマーケティングの成功に結び付きやすいと言えるでしょう。

※CMIのレポートより筆者作成

上の図は、コンテンツマーケティングが成功したと答えたコンテンツマーケターが要因として挙げた割合を示すグラフと、失敗したと答えたコンテンツマーケターが原因として挙げた割合を示すグラフです。このように見てみると、成功要因としては「コンテンツの提供価値」「新しいコンテンツなど、ウェブサイトの変更」がトップ2として挙がっています。一方、失敗した要因として「コンテンツ作成の課題」が挙がっていますが、注目すべきは「戦略の問題」が2番目に挙がっていることです。

筆者の推測ですが、成功している要因として「戦略」ではなくコンテンツについての言及がトップ2に挙がっているのは、なぜでしょうか。筆者は、コンテンツマーケティングが成功している組織は戦略がすでにしっかりとあるため、コンテンツの質を上げることに注力できたのではないかと考えます。ところが、コンテンツマーケティングが失敗している組織になると、戦略の部分がしっかりと定まっていないケースが多いと考えられます。コンテンツだけを自社メディアに充実させても、戦略がなければ意味がありません。コンテンツマーケティングはあくまでマーケティング戦略であるということを、この結果を見て改めて思い返しました。

コンテンツの種類とプラットフォーム

配信しているコンテンツの種類と利用しているプラットフォームで多いものは何でしょうか。下図はそれぞれのグラフです。

※CMIのレポートより筆者作成

コンテンツの種類で最も多かったのは、ブログ記事や短い記事です。次いで多かったのがメールマガジンでした。ウェビナーなどのオンライン施策が67%で対面型のイベントが42%なのは今年ならではと言えるでしょう。また、プラットフォームに関してはソーシャルメディアがトップですが、ここでもまたメールが2番目に位置しています。

このように見てみると、やはりメールはコンテンツマーケティング界隈では以前重視されていることが分かります。また、記事コンテンツについても引き続き重視されていることもが分かります。

コンテンツマーケティングで達成した目標

※CMIのレポートより筆者作成

上図は、コンテンツマーケティングで達成した目標についてのコンテンツマーケターの回答率を表したものになります。左が現在、中央が1年前、右が2年前の数値となっております。

このように見ると、「ブランド認知度を高める」については2年前から達成の割合が高いでしょう。注目すべきは「信頼構築」が2年前の68%から、今回は81%に上昇していることです。コンテンツマーケティングが信頼獲得に寄与しているという事実が浮き彫りになっていると言えるでしょう。

2020年も大切なのは「オーディエンスの信頼を獲得すること」だった

2020年のコンテンツマーケティングについて振り返りました。このように見てみると、急激な変化に戸惑いながらも、しっかりと戦略を立て、オーディエンスの信頼を着実に獲得するためにコンテンツの質を上げていった組織がコンテンツマーケティングで成功を掴んでいると感じました。今後も予測が難しい時代が続きますが、「信頼を獲得する」というコンテンツマーケティングの価値観がぶれることはないでしょう。2021年以降もオーディエンスに寄り添ったコンテンツを作り続けていきましょう。