コンテンツマーケティングを勉強していると、よく目にするのが「コンテンツ戦略(コンテンツ戦略=Content Strategy)」という言葉です。コンテンツマーケティングと混同されやすい概念で、事実、日本では同等に語られるケースもあります。しかし、コンテンツ戦略という概念を意識することで、コンテンツマーケティングはより高い効果が期待できるのです。今回は、少々分かりにくいけど重要なコンテンツ戦略について解説します。

コンテンツ戦略の定義とコンテンツマーケティングとの違い

まず、コンテンツ戦略の定義について見ていきましょう。ストラテジー(strategy)の意味は「戦略」「計画」。すなわち「コンテンツのための戦略」ということになります。

コンテンツ戦略の定義は「ビジネス目標達成に結び付くような、質の良いコンテンツを作るための戦略」のこと。重要なのは後半部分の「質の良いコンテンツを作るための戦略」です。質の良いコンテンツを作るためには、「コンテンツの内容」「コンテンツの管理」なども関わってきます。コンテンツ制作に関する戦略全てを含むのです。

ここでコンテンツマーケティングの定義を振り返ってみましょう。米国の「Content Marketing Institute」は、コンテンツマーケティングの定義を以下のように説明しています。

「顧客にとって価値があるコンテンツを一貫して配信し、コンテンツの受け手(顧客)を惹きつけ、関係を継続し、最終的には収益につながる行動を取ってもらうという戦略的なマーケティング手法」

だんだん違いが分かってきましたね。それぞれの注目ポイントを見比べて、違いをより明確にしてみましょう。

このように並べてみると、それぞれの違いがはっきりします。コンテンツ戦略はあくまで良いコンテンツを作るための戦略、コンテンツマーケティングとは、コンテンツを用いたマーケティング手法なのです。

もちろん、コンテンツマーケティングは、質の良い(ペルソナにとって有益な)コンテンツを作ることを基本としています。そんなコンテンツを作るための戦略がコンテンツ戦略ということになります。

コース料理で例えると、「コース全体」がコンテンツマーケティング、「コース内のそれぞれの料理」がコンテンツ、その料理の「調理」「味付け」「食材の管理方法」「調理チーム管理」などがコンテンツ戦略といったところでしょうか。どちらも「質の良いコンテンツを作る」という考え方を基本としているため、混同しやすいようです。

コンテンツ戦略はコンテンツマーケティングにだけ応用されるものではなく、自社内にあるコンテンツを使った全てのマーケティングに応用できます。ほかにどんなマーケティングがあるのかはここでは省略しますが、コンテンツ戦略については、「良いコンテンツを作るための方法論なのだな」と理解しておいてください。

コンテンツ戦略と間違えやすい「コンテンツマーケティング戦略」

コンテンツ戦略について調べていくと、今度は「コンテンツマーケティング戦略(Content Marketing strategy)」という言葉が出てくることがあります。この言葉がコンテンツ戦略とコンテンツマーケティングを混同してしまう一因と言えます。

コンテンツマーケティング戦略とは、「コンテンツマーケティングを適切に実行するための戦略」のこと。詳しく見ていくと、「5W」という5つの要素に分類されます。5Wとは、「誰(who)」「何を(what)」「どこで(where)」「いつ(when)」「なぜ(why)」の頭文字に由来します。文章を書くときに意識すると良い考え方として、一度は耳にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この要素をコンテンツマーケティングに置き換えると、「誰にコンテンツを届けるのか(誰がコンテンツを作るのか)」「何をコンテンツで伝えるのか」「どこでコンテンツを公開するのか」「いつコンテンツを公開するのか(いつコンテンツを作るのか)」「なぜコンテンツを作るのか」といったように考えられます。ここでお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、これは「ペルソナ設定」「カスタマージャーニーマップの作製」「KGIの設定」など、コンテンツマーケティングを進める上で考えなければならない基本的な項目です。

実は英語圏の記事でも、このコンテンツマーケティング戦略をコンテンツ戦略と混同したまま書かれたものがあります。いかに「ややこしいか」を物語っていますね。

なお、ペルソナ設定やカスタマージャーニーマップについては、コンテンツマーケティングの定義について解説した記事、KGIについてはコンテンツマーケティングを成功させるポイントをご紹介した記事を参照ください。

コンテンツ戦略に含まれるもの

ここでは、コンテンツ戦略に含まれるものをいくつか見ていきます。

キャッチフレーズの作成

キャッチフレーズは「その企業が大切にしているものは何か」ということを伝える戦略の一つです。例えば「ココロも満タンに」というフレーズを耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。これはコスモ石油株式会社のキャッチフレーズです。このように、キャッチフレーズは企業のブランディング手法として用いられます。

ストーリーテリング

ストーリーテリングとは「伝えたい情報や思いを『物語』として伝えること」です。ストーリーを用いて伝えられた情報は人の記憶に残る傾向にあります。ストーリーテリングについての詳細な解説はここでは省略しますが、一例をご紹介します。

例えば、ドラマ仕立てのCMはその一つです。音楽教室などを展開する「東山堂」(盛岡市)CMでは、結婚式で娘のためにピアノを演奏する不器用な父の物語を描いています。またCMだけでなく、自社の商品や業界知識についてまとめた漫画などもストーリーテリングの一種といえるでしょう。このように、自社の理念や、自社の商品・サービスを利用した後の世界を物語で伝えることで、自社のファンを増やすことができます。

SEO

SEO(Search Engine Optimization)とは「検索エンジン最適化」のことです。このSEO対策もコンテンツ戦略の一例です。詳細については別の記事で説明しますが、「GoogleやYahooで何かしらのキーワードが検索された際、自社サイトが上位に表示されるようにする手法」を指します。せっかく作ったコンテンツも見つけてもらわなければ意味がありません。コンテンツマーケティングを進める上でも意識すべき手法の一つといえるでしょう。

コンテンツの整理、アップデート

コンテンツの整理やアップデートもコンテンツ管理という観点から、コンテンツ戦略の一種と言えます。例えば、情報の古くなったWEB記事について最新のものにアップデートすることで、より質の良いコンテンツとすることができるでしょう。

今回はコンテンツ戦略の概要と、コンテンツマーケティングとの違いについて解説してきました。それぞれ明確な違いはありますが、コンテンツマーケティングを進める上ではコンテンツ戦略についても考えることが大切です。コンテンツマーケティングにおけるコンテンツ制作部分については、コンテンツ戦略のメソッドを取り入れて良質なコンテンツを作ることで、より自社の存在感が高まることでしょう。