インサイドセールスは正しく取り組めば「平和」な営業手法です。電話を使う場面もあることから、とにかく電話をかけまくる、押し売りのようなテレアポ営業と思われる方が多いかもしれませんが、そうではありません。あくまで「売り込まず、必要なものを提供する」というのが、インサイドセールスのスタンス。電話やWeb会議を利用した「完全非対面」の手法で、場合によってはクロージングまでもっていくことが可能な、まさにポストコロナの時代に求められる営業スタイルといえるでしょう。ここでは、非対面でいかにして顧客からの信頼を獲得し、関係を構築していくべきか、解説します。
非対面の弱み
まずは、非対面の弱みについて見ていきましょう。フィールドセールスは基本的にお客様のもとへ行って提案、お伺いをするのが一般的です。
フィールドセールスは対面で会話するため、その場の雰囲気で相手の要望に合わせた提案内容へと変更することが可能です。また、本題以外の世間話(いわゆるスモールトーク)などを駆使し、お客様との信頼関係を構築することも比較的容易です。つまり、フィールドセールスは質の高い商談になりやすいといえます。
この面でインサイドセールスは弱みを持っています。Web会議では、営業担当者の「雰囲気」や「空気感」を伝えることができず、非対面に慣れていない顧客からは熱意や人間味がないと感じられてしまいます。
しかし、フィールドセールスの顧客に対して時間をかけて信頼を寄せる方法は、裏を返せば、時間コストがかかりすぎる営業手法とも言えます。移動時間、名刺交換、世間話。十分な数の営業マンがいる会社なら問題ないかもしれませんが、人数が少ない場合、これらのコストは業績を圧迫しかねません。また、訪問先としても、残業を避けるよう上司から指導される中、以前と比較して営業対応に時間を割く余裕がなくなってきています。
非対面で信頼を獲得するためのポイント
フィールドセールスに比べ熱意や人間味が感じられないという、非対面のインサイドセールス。順調にクロージングまでもっていくためには、どのように信頼を獲得すればよいのでしょうか。
ポイントは、以下の3点です。
- 顧客の潜在ニーズを引き出してあげる
- リード発生から時間をあけずに対応する
- わかりやすいメールを送付する
顧客の潜在ニーズを引き出してあげる
顧客がサービスや商品について資料請求をしたり、導入に関する問い合わせをしたりする理由は様々です。インサイドセールスとしては、導入・契約していただくことを目標としていますが、「ニーズが顕在化したとき」に確度がぐっと上がります。
「上司に検討しろと言われたから」「コマーシャルでいいと言っていたからちょっと気になっただけ…」という状況でとりあえず問い合わせをするという方も多いでしょう。このように自身も問い合わせの内容や目的ははっきりとしていない状況では、問い合わせ先に心を開いている状況とはいえません。
一方「働き方改革プロジェクトのひとつで経費精算をシステム化することになったので、上司にいくつかの候補を取って検討しろと言われた」だったり、「ちょうど今年度までに経費精算システムを導入せねばならず、今年度までの申し込みキャンペーンで予算がなくても大丈夫というコマーシャルをみたから気になって問い合わせた」といったケースでは、顧客の担当者はきっと前のめりになっているはずです。なぜなら導入を検討しなければならない理由(ニーズ)が明確だからです。
とはいえ、こうした明確なニーズがない場合が圧倒的に多いのが現実ともいえます。したがって、インサイドセールス側からお問い合わせ元にコンタクトする際に、問い合わせてくれた担当者の代わりに、こちらから理由を提示してあげることが効果的です。なんとなく問い合わせしたものの「自社のことをわかってくれている!」と感じてもらえれば、信頼を獲得するきっかけになります。
リード発生から時間をあけずに対応する
インサイドセールスは、基本的にリードが発生したところにのみ営業活動を行います。なんのきっかけもなく、ただ無作為に作成したリストをもとに架電していく、というのは単なるテレアポでしかありません。
「リード発生=先方担当者の動き」のため、あまりに放置をしてしまっては、対応する気がないといっているのと同じです。時間を開けすぎてしまうと対応する気がないように思われるのみではなく、リードを発生させた担当者が問い合わせしたことを忘れてしまったり、コンタクトが取れる確率が低くなってしまったり、他製品にすでに気持ちが移ってしまう可能性が高くなります。
リード発生から一次対応までの時間は、早ければ早いほど良いでしょう。すぐにレスポンスがあると「しっかり対応してくれている」と感じやすくなるからです。
それぞれ抱えているタスクや対応リストの順番待ちもあることですし、初回の対応は「数時間以内」と定めるのが現実的。SaaS系の場合「3時間」というケースが多いようです。
もし設定した時間を超えてしまうようであれば、アサインした営業担当を交代したり、どうしようもない場合は丁寧なあいさつメールを一斉送信したりして対応しましょう。一斉メールには「明日お昼休みまでに一度お電話させていただきます」など、架電する時間を予告しておくと親切でより丁寧な印象を持ってもらえます。
わかりやすいメールを送付する
営業をするにあたり、言葉では説明しきれないような内容については資料を送付したり、まとめたメールを送付したりすることがあります。また、クロージング後のお礼メールは、トラブル時の連絡チャネルを確実にしておく意味でも必ず送付すべきです。
メールを送付する際、必要な情報をすべて詰め込むと1通が長くなりがちです。例えばサービス内容、値段、利用期間、解約の方法などを一連の文章で書くのではなく、以下のように記号や括弧を使ってみるのはいかがでしょうか。
[Before]
(件名)
金融系コンテンツ制作サービスにお申込みいただきましてありがとうございました。
(本文)
この度は金融系コンテンツ制作サービスにお申込みいただきましてありがとうございました。
お客様のご利用料金は月額○○万円、10コンテンツフリー制作プランです。
ご利用期間は2019年9月1日から12月31日となっております。
操作マニュアルは(URL)からダウンロード可能ですのでぜひご利用ください。
もし解約をご希望の場合は誠に残念ではございますが、カスタマーサービスへのご連絡(電話xxx-xxxx-xxxx)または解約フォーム(URL)より解約のお申込みをお願いいたします。
ご不明点はいつでも 担当 熊本(クマモト) までお気軽にご連絡ください。
[After]
(件名)
【お申込完了】金融系コンテンツ制作サービス /クマベイス熊本
(本文)
この度はお申込み誠にありがとうございました。以下のようにお申込みいただきました。
■サービス概要
金融系コンテンツ制作サービス
■ご利用料金/プラン
月額○○万円/10コンテンツフリー作成プラン
― 操作マニュアルはこちら(“こちら”にテキストリンク)
■ご利用期間
2019年9月1日~12月31日
■解約したいときは?
― ご利用に関する不明点はこちら(“こちら”に利用マニュアルのテキストリンク)
― カスタマーサービスへのご連絡はこちら(“こちら”にカスタマーサービス連絡先のテキストリンク)
― ご解約フォームへの入力はこちら(“こちら”に解約フォーム送信ページのテキストリンク)
ご不明点はいつでも担当・熊本(クマモト)までお気軽にご連絡ください。
[Before]は一見丁寧な言葉遣いですが、パッと読んだだけでは分かりづらく、何のメールか理解するまで時間を要します。Afterではあいさつ文は少なめですが、要点を簡潔に伝えることができるため、結果としては好印象を与えると考えます。また、担当者の名前を入れておくことで親身な印象になります。
大量のリードへの対応は短く済ませる必要があります。短い時間に少しでも丁寧な印象を与えられるように工夫したいですね。
信頼を得る架電メソッド
インサイドセールスにおいて、「会話」の手段はほとんどが電話です。また近年は、Web会議のケースも増えています。ここでは、信頼を得るための架電メソッドについて解説します。
ポイントは、以下の3点です。
- 会話の声に注意する
- いただいた電話に出られなかった場合、必ず折り返す
- 会話した内容を簡単にまとめてメールする
会話の声に注意する
電話やWeb会議での通話では、通常の声よりも低く聞こえると言われています。自分ではいつもと同じ調子で話していたつもりが、元気がないように聞こえてしまう可能性があります。少し声を高く、はっきり話すことを意識しましょう。
いただいた電話に出られなかった場合、必ず折り返す
他の顧客とのWeb会議をしていたり、架電中に受電したりした場合には、必ず折り返し架電をすることをおすすめします。こちらから寄り添っていかなければ顧客は確実に離れていきます。インサイドセールスでは深追いはしないスタンスですが、一度発生したチャンスを簡単に逃していては、単純にクロージング機会の損失になります。
会話した内容を簡単にまとめてメールする
ヒアリングや商談の内容について、会話しっぱなしでは説明した内容を忘れてしまい、何度も同じ説明をすることになってしまったり、後々「言った、言わない」の問題に発展したりしかねません。
もちろん活動記録はCMSに記入すると思いますが、顧客に対してもお話したことは次回の活動予定、お手伝いすることなどを簡単にまとめてメールで送付しましょう。先方でも商談の記録を残しておく必要がある場合、そのメールをコピーできればとても親切です。
まとめ
インサイドセールスはフィールドセールスと違い、人の温度が伝わりにくい営業ではありますが、簡単な工夫をするだけでフィールドセールスとの違いは埋められるものです。まだまだ「迷惑なテレアポ営業」と誤解されていることが多いのですが、「誠実な営業手法」として定着してくれることを願っています。
<関連書籍>
野口優帆『40分でインサイドセールスの考え方がわかる本』
野口優帆『続・40分でインサイドセールスの考え方がわかる本』