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2023年に入って、まちなかでも外国語を耳にする機会が増えてきました。少しずつコロナ前のような活気が戻りつつあると感じます。パンデミック中にビジネスプランを変更したり、国内市場の減少に伴い海外に販路を求めたりした企業も多いと思います。今回はそのような企業に向けて、海外コンテンツ制作のコツを紹介します。

AI翻訳 VS 英語コンテンツ

ここ10年でAI翻訳は飛躍的に進化し、より自然な翻訳になっています。原文の文法が正しければその精度はかなり高く、翻訳後にネイティブが読んでも違和感を感じないぐらいです。それもあって、日本語ページをプラウザーの翻訳機能でそのまま翻訳している、またはAIによる翻訳をそのまま使用している企業も多いのではないでしょうか。

しかし、それで本当にいいのでしょうか。

念のため英語のウェブサイトを作りたいだけであれば、問題ないかもしれません。しかし、ほとんどの企業が、海外の潜在顧客に向けた認知拡大、または購入促進がウェブサイト制作の目的だと思います。ブラウザの自動翻訳機能を用いることで、多少の効果は期待できますが、もともとのポテンシャルを発揮することはできません。なぜなら、日本語を元にしたメッセージが、オーディエンスに合わないケースが多々あるからです。

日本語は、行間を読ませたり、読み手に想像する余裕を与えたりする言語です。直訳したとしても、それが海外の受け手には伝わることはありません。

例えば、パナソニック・グループは、国内向けと海外向けで、表現を使い分けています。

日英のスローガンの違い

画像:https://panasonic.jp/

日本語ページ あなたに”ちょうどいい”をくらしに。
Ai翻訳    Just right” for your life
英語ページ  Live Your Best

おわかりになりますか?

AI翻訳も、ちゃんと元の日本語の英訳になっています。しかし、少し抽象的になっていますよね。これでは海外向けのオーディエンスに伝わりにくい。そこで、英語では別の表現としています。

日本企業の日本向けのスローガンは、「挑戦」「品質」「信頼」などのキワードを含むことが多く、逆に海外のスローガンは商品やサービスそれ自体のアピールに重きを置く傾向にあります。

日本企業のスローガン例
Innovation For Tomorrow ダイハツ工業
Quality for you   MUFG
Leading Innovation 東芝

海外企業のスローガン例
JUST DO IT  NIKE
Think Different Apple
Because you’re worth it L’Oreal

AI翻訳で訳することで、ニュアンスは伝わりますが、伝えたいメッセージは届きません。トップページのスローガンだけではなく、ウェブサイトのコンテンツも同様です。翻訳機能で訳するのではなく、ニュアンスを含めてローカライズすることで、伝えたいメーセージを余すことなく伝えることができます。手間もコストもかかりますがそれが逆に近道になるのです。

虹の色は何色?

突然ですが、「虹色」と言われると何色をイメージしますか? 多くの方が7つの色をイメージされると思います。しかし、全世界が虹を7色と識別をしているわけではありません。

7色に見えている国(赤、橙、黄、緑、青、藍、紫)
日本、オランダ、イタリア、韓国

6色(赤、橙、黄、緑、青、紫)
アメリカ、イギリス

5色(赤、橙、黄、緑、青)
ドイツ・フランス・中国・メキシコ

4色 (赤、黄、緑、青)
ロシア・インドネシア

国によっては、同じ虹でもこんなに見え方が違うんです。色の見方は地域や民族によって異なるケースがあるとされます。日本では黄色や緑色に対して敏感で、赤色や青にはあまり敏感ではありません。

一方、北欧地域では青色に敏感で黄色や緑色にはあまり敏感ではありません。このように目の構造によって色の見え方に差異が生じるのです。

また見え方だけではなく、色の与えるイメージも国や地域によって異なります。ウェブサイトに用いる色は、ブランディング面でも重要です。しかし、その色が海外でも同じイメージとは限りません。国によって色のイメージは異なるのです。

白色
欧米では日本同様に純潔、潔白、真実、エレガンス、平和などのイメージがあります。中国では欧米や日本と同じイメージですが、陰湿、不吉などのイメージもあるようです。また、ベトナムやヒンドゥーでも、葬式、不吉、というイメージとのことです。

黄色
日本ではあまりネガティブなイメージがない黄色ですが、欧米では意外と裏切り、卑劣、臆病のイメージがあります。また中国では、いかがわしいイメージを持たれているようです。もちろん、ネガティブなイメージだけではなく、エジプトでは幸福、幸運のイメージがあるようです。

国によってかなりイメージが違いますね。地域や文化によっては、色に対する印象や感じ方に差異があるため、海外向けコンテンツの文言やデザインにおいてターゲット国や地域の文化や習慣も配慮する必要があります。とはいえ、各言語それぞれについてウェブサイトを制作する必要は必ずしもなく、各言語の簡素版ページを1ページ作るだけで十分なケースも多いでしょう。

インターネットや販売網の発達により、海外への販路拡大は以前よりも容易になりました。自国ではもうニーズがない商品も、海外ではまだまだニーズがあるケースも多いでしょう。しかし、簡単だからこそ準備やリサーチに時間を費やすることが逆に成功への早道といえるのです。