コンテンツマーケティングにおいて、ストーリーを語る「ストーリーテリング」は代表的な手法の一つです。今回は、ストーリーテリングの基礎を振り返りながら、ストーリーを用いたコンテンツが多いブライダル業界の事例をご紹介します。「自社に語るべきストーリーはないか」と考えながら読み進めてみてください。

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ストーリーテリングとは

ストーリーテリングとは、物語を語ることです。ストーリーテリングが施されたコンテンツはそうでないコンテンツに比べ5倍以上も滞在時間が長くなるというデータがあるなど、人々はストーリーに強く惹かれる傾向にあります。人々は古くからストーリーに親しんできており、リファーラルマーケティングのソリューションを提供している米国のReferralCandyのブログ記事によると、人類が狩りで生計を立てていたころからストーリーの痕跡があるようです。

ReferralCandyのブログ記事より

自社のストーリーやプロダクトについてのストーリーを語ることになりますが、大切な視点は「オーディエンスの将来の姿を描いてあげること」です。「自社と関わることでどんな良い未来が待っているか」「自社のプロダクトを使うことでどんな良い効果があるか」をストーリーの力で導くことが、オーディエンスの信頼を獲得することにつながります。

自社のストーリーを導き出すためにはどうすればよいか

では、実際に自社でストーリーを導き出すためにはどうすればよいでしょうか。ReferralCandyのブログ記事では、この点についても解説しています。ブログ記事では詳細に描かれていますが、ここでは「自社を理解する」「顧客を理解する」の2点に焦点を当て解説していきます。

まず、自社を理解するために、自社のブランドを定義付けなければなりません。「自社が何を提供しているのか」「誰のためにあるのか」について考えてみましょう。ここで注意してほしいのは、「何を提供しているか」については、ただ単にプロダクトの種類を述べるということではないことです。

自社のプロダクトを通じてどんな世界を実現したいのでしょうか。何を成し遂げたいのでしょうか。人々にどんな価値を与えたいのでしょうか。

こう考えていくと、自然と自社についてストーリー仕立てで理解できます。「オーディエンスを導く」ということにもつながるでしょう。

また、自社のブランドを理解するためにも、顧客について理解することが重要です。「なぜ顧客は数あるブランドの中から自社を選んだのか」「競合も含め、顧客がプロダクトを求めるようになったきっかけは何か」「どのようにして自社を見つけたのか」「どんな疑問を持っているか」「どのような感情から購入に至ったのか」「競合と比べた自社の違いは」など考えを突き詰めていきます。このように見てみると、ペルソナとカスタマージャーニーマップにつながることが分かります。ストーリーテリングを施したコンテンツも、ペルソナありきなのです。

(ペルソナとカスタマージャーニーマップについてはこちら)コンテンツマーケティングとは? 定義と仕組み、コンテンツの種類を解説

海外事例 ブライダル業界が集合「Love Stories TV」

ブライダル業界は比較的ストーリーを用いたコンテンツが作りやすいジャンルといえます。「結婚」は「出会い」「別れの危機」「プロポーズ」「それぞれとの家族との交流」など、ストーリーにあふれているからです。

そんなストーリーの力を使っているメディアが「Love Stories TV」です。このメディアでは結婚式の動画を公開し、感動の瞬間を描いています。ホームページには宗教や国別、「エレガント」「クラシック」といった式のタイプ別に整理されており、これから結婚式を挙げようと考えているカップルが、自分たちのイメージに合う動画を探し出しやすいよう設計されています。

こうして見ると「単なる動画制作会社」と思いがちですが、注目すべき点は動画が「フォトグラファー」「ブライダルサロン」「イベントデザイナー」といった、ブライダル業界に関わりのある業種でもカテゴライズされている点です。カテゴリーから入ってみると、さまざまなブライダル業界の企業が掲載されています。どれかの企業をクリックすると、式の動画が並べられており、動画の下には「by〇〇(企業名)」と「Contact」と添えられています。つまり、撮影されている式で何かしらのサービスを提供している企業がLove stories TVに集まっているのです。言い換えると、「ブライダル業界のプラットフォーム」のような機能を果たしているといえます。

動画には企業名と問い合わせフォームが添えられている(Love Stories TVより)

Webサイトには以下のように記されています。

「私たちのゴールは、まるで結婚式の最中にシャンパンを飲みながら泣いているかのように気軽に式を体験してもらうことで、式に必要な商品やサービスとあなたを結びつけることです」

オウンドメディアとは違った手法ですが、多くの企業がストーリーを活用しようとしている姿勢が伝わります。

国内事例

国内のブライダル業界でも、ストーリーを重視したコンテンツが配信されています。ブライダル事業やホテル事業を展開する「テイクアンドギヴ・ニーズ」のオウンドメディア「結婚式のキセキ」では、夫婦の結婚式の模様を動画付きの記事でレポートしています。また、このサイトは「結婚式に至る過程」、すなわち「両家が家族になる過程」を描いている点で特徴的です。ある記事では、「新郎が新婦の両親、新婦が新郎の両親に親孝行をする」という記事が掲載されています。

先述のLove Stories TVはドラマチックに作りこまれているものでしたが、こちらは「ほっこりとする家族の物語」を描いています。「ここで結婚式を挙げるとこんな暖かい景色を作り出すことができるんだ」とオーディエンスに思わせることができるでしょう。

どんな企業にもストーリーはある

「自社には語るべきストーリーはない」と考えてしまう方もいらっしゃるかもしれません。しかし、どんな業種、規模の会社であれ、自分たちの気づかないところにストーリーは眠っているものです。自社の商品・サービスのヘビーユーザーに自社の魅力についてヒアリングし、それを基にストーリーを導き出すのもよいでしょう。結婚式のキセキの例を見てみると分かりますが、ストーリーは企業に「暖かみ」を与えてくれます。ストーリーの力を使い、自社へのエンゲージメントを高めていきましょう。