コンテンツマーケティング界の重鎮、ジョー・ピュリッジ氏が、『Content Inc.』の第2版を発表した(※未邦訳)。コンテンツマーケティングに取り組もうにも、どうすればいいか分からない。コンテンツSEOとの違いが分からない。コンテンツマーケティングに取り組んでいるが結果が出ない。こうした悩みをお持ちの方には、強くお勧めする良書だ。

タイトルは、同氏が近年提唱している、コンテンツマーケティングのモデル「Content Inc.モデル」と同じ名である。ピュリッジ氏は妻と共同で所有する企業「コンテンツマーケティングインスティテュート」を、1760万ドルでUBM plcに売却している。新刊は、その経験も踏まえたアップデート版となっている。

ピュリッジ氏は同書で、「Content Inc.モデル」を6つのステップに分けて説明している。すなわち、「スイートスポット」「コンテンツティルト」「ベース構築」「オーディエンス獲得」「多角化」「マネタイズ」だ。

スイートスポットは、得意分野や専門知識について、世の中にとって価値あるものと交差する「点」を指す。ブランドやビジネスのポジショニングと近い概念だ。

コンテンツティルトは、コンテンツを「傾ける」作業である。コンテンツに「個性」を加えていく。これにより、独自の存在を確立させる。

ベース構築は、コンテンツを届けるためのプラットフォームを構築すること。好みのコンテンツ形態(テキスト、音声、動画など)を1つ選択し、そのコンテンツを最低12カ月にわたり配信するプラットフォーム(ブログ、Podcast、YouTubeなど)を決める。

オーディエンス獲得では、コンテンツに触れる人を増やした後、そこから同じ人に継続的にコンテンツを届ける仕組みを構築する。いわゆる「サブスクライバー」の獲得だ。

多角化は、コンテンツの多角化を意味する。メインとなるプラットフォームで十分なサブスクライバーを獲得したら、そこから別のコンテンツ形態やプラットフォーム(もしくはチャネル)に取り組む。

マネタイズは、「Content Inc.モデル」の総仕上げ。これまで構築してきた信頼性やサブスクライバーとの関係性を利用して、ニーズのあるサービスを提供する。ピュリッジ氏は、例としてコンサルティングサービス、ソフトウェア、ライセンスコンテンツ、有料の教育イベントを挙げている。

マネタイズが完成したら、その後どうするかは好きにすればいい。規模の拡大を求めずに、心地よいサイズ感でビジネスを続けるのもよし。ビジネスをさらに成長させるのもよし。ビジネスをバイアウトするのもよし。自分の魂の声に耳を澄ませ、納得のいく決断をしたい。「Content Inc.モデル」が完成すれば、これだけ選択肢の幅が広がるのである。

さて、「Content Inc.モデル」には注意点もある。それは、大企業の場合は必ずしもうまくいくとは限らない点だ。中小企業に有効なモデルであり、大企業の場合は社内起業や社内の1プロジェクト単位で取り組まなければ、効果が期待できない。コンテンツマーケティングは、ニッチな分野で一位を目指すことで安定的な収益につながるものだ。

まだまだ社会の混乱は続くが、本書はコンテンツマーケティングに取り組む企業の道しるべとなるであろう。