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2021年最初の記事となる今回は、Content Marketing Institute(CMI)の記事で識者らが述べていることをもとに、2021年のコンテンツマーケティングがどうなっていくのか予測していきたいと思います。今回の記事はCMIの「100+ Content Marketing Predictions for 2021」「7 Content Experts Share What Matters Most in 2021」「What’s Up in 2021 for Content Marketing?」をもとに執筆。キーワードは「音声コンテンツ」「人間味」「パーソナルコンテンツマーケティング」です。

予測は難しいがオーディエンスのニーズに応えていくことは変わらない

ブランディング戦略などを手掛ける米国のBarkleyのデータドリブンマーケティング担当副社長・Jessica Best氏は、2021年のコンテンツマーケティングについて「Know not(分からない)」と題し、「現時点で分からないことは分からないと認めざるをえない」と潔く述べています。そのうえで、「消費者のニーズに従うのであれば2021年のマーケットで居場所を持てるということは唯一の真実だ」と指摘しています。ストーリーテラーのLindsay Hotmire氏は「マズローの欲求5段階説のような考え方を理解したうえで、それらのニーズがどのように変化し、コンテンツを形作っているかを把握する。このことは2021年により大きな役割を果たすことになる」と主張しています。

将来を予測することは困難です。2020年を迎えた直後、世界が新型コロナウイルス感染症に振り回されることを正確に予測できた人がどれだけいるでしょうか。それでも、コンテンツマーケティングに取り組むうえで大切にしなければならない軸は「オーディエンスのニーズを把握し、それに応えていくこと」です。ニーズは時代や状況に合わせて変化するものであり、柔軟に対応していく必要があります。この基本姿勢は今年も持ち続けていく必要があると言えるでしょう。

音声コンテンツが台頭

多くの識者が、Podcastなどの音声コンテンツの台頭を期待しています。著名なコンテンツマーケターであるChristoph Trappe氏は、「人々が通勤を再開するようになり、2021年はポッドキャスティングの記録的な年になるだろう」と予測しています。また、米国のマーケティング会社「Helen & Gertrude」の戦略責任者、Leire Bascaran氏は「2021年はリスニングの年になる」とし、その理由について「画面疲労の増加」を挙げていています。テレビやスマートフォンはもちろんですが、オンライン会議が増えたことにより、人々は画面を見すぎています。できるだけ画面を見る時間を減らそうとするなかで、音声コンテンツの需要が高まるというのです。

CMIの2020年のコンテンツマーケティングに関するレポートによると、BtoBマーケターのうちPodcastを使用したと答えたのは26%。これはブログ記事(93%)、メールマガジン(77%)に比べかなり低い数字です。しかし、Podcastは徐々に広がりを見せています。米国の市場調査会社「Edison Research」の調査によると、12歳以上の米国人でPodcastを聞いたことがある人は2006年の11パーセントから2019年には51%に増加しています。また、過去1カ月でPodcastを聞いたことがある人は2008年の9%から2019年には32%となっています。このように見ると、まだまだ伸びしろのあるコンテンツであると考えられ、2021年にどのような展開を見せるのか気になるところです。

「人間味」がより重視される

2020年はさまざまな分野でDX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれる年となりました。デジタル化により効率化や利便性が求められ、あらゆるものの自動化が進んでいます。そんな状況と逆行するように求められつつあるのがヒューマンタッチ、すなわち「人間味」です。米国のソフトウェア開発会社「Zoomin」のカスタマーエクスペリエンス担当副社長、Megan Gilhooly氏は「データプライバシーに関する意識は上昇傾向にあり、2021年は消費者がマーケティングコンテンツを拒否するようになる」と予測しています。

例えば、自動送信されるメールや機械的に作られたような文章には、人々は拒否反応を示すということです。自動的に毎週届くプロモーションメールが、見ないままメールボックスにたまっているという方も多いのではないでしょうか。

また、コンテンツマーケティングストラジストのCarmen Hill氏は、「テクノロジーなしでは仕事もできず、家族にも会えないが、私たちはデジタルに疲れているのではないだろうか」としたうえで、「2021年、最も記憶に残り、意味のあるコンテンツは人間的なものだろう」と予測しています。

個人的には、コンテンツを人間味のあるものにするカギを握る言葉は「手」だと思っています。それは「手書き」でも良いでしょうし、「手紙」でも良いでしょう。手紙は手書きである必要はありませんが、メールにしても、動画にしても、友人に手紙を送るようなメッセージを顧客に向けて発信することが必要になってくるでしょう。

また、ときには手書きも強い力を発揮します。筆者は昨年末にある音楽バンドのグッズを購入しましたが、パッケージに記載されていた宛名(この場合は筆者の名前)が手書きで大変驚きました。ツイッターなどで検索すると、購入者全てに手書きで送られていたようです。暖かみが感じられ、さらにその音楽バンドを好きになりました。宛名も人間味を加えるコンテンツになりうると感じた体験でした。

「パーソナルコンテンツマーケティング」が盛り上がりを見せる?

2020年はコンテンツマーケティングへの注目度が増した1年となったと感じています。コンテンツマーケティングがより一般的になると、個人の情報発信をコンテンツマーケティングの手法を用いて行うことにつながっていくかもしれません。Podcastの配信も行っているマーケターのChris Luecke氏は、コロナによって対面営業ができなくなって「コンテンツマーケターになっている営業パーソンが増えている」と主張したうえで、「多くの営業パーソンがより戦略的にソーシャルメディアを運用し、動画を作り、独自のコンテンツカレンダーを作成するだろう」と述べています。

昨年末にはコンテンツで自身をブランディングする「パーソナルコンテンツマーケティング」についての記事がCMIでアップされるなど、将来的にはコンテンツマーケティングは企業単位でなく、個人単位で展開されるものになるのかもしれません。営業パーソンが自身のノウハウを独自のコンテンツで発信することで差別化を図る未来が、すぐそこまで来ていると言えるでしょう。

2021年も真摯にコンテンツを発信し続けることが重要

ここまで2021年のコンテンツマーケティングについて予測してきましたが、大切なのは真摯にコンテンツを発信し続けることです。有効なコンテンツの型や発信方法に変化はあっても、発信し続けることの重要性は変わりません。2021年もコンテンツマーケティングについての情報をアップデートしつつ、顧客に有益なコンテンツを展開し続けていきましょう。