「顧客にとって有益なコンテンツ(情報)を提供する」のがコンテンツマーケティングの基本的な考え方です。ブログやメールマガジンなど、文章を用いたコンテンツはさまざまな種類があります。そのなかで、「ホワイトペーパー」は冊子のような状態で情報をまとめたものです。作成するのには手間がかかりますが、完成度の高いホワイトペーパーはそれだけ顧客にとって有益なものとなり、コンテンツマーケティングにおいて絶大な効果を発揮します。今回は、ホワイトペーパーの基本について解説していきます。(2021年2月19日更新)

ホワイトペーパーとは

ホワイトペーパーとは、「顧客にとって有益になる情報をまとめた資料」のことです。一般的に自社のオウンドメディアで用意し、入手したいと思った方がメールアドレスなどの連絡先の情報を入力した後に無料で提供する形を取ります。もともとの意味は公的機関による報告書を指す「白書」です。

ホワイトペーパーはBtoB、BtoCどちらでも有効ですが、特にBtoBの商材を扱う企業はぜひ取り組むべきものといえます。顧客にとって有益な情報をホワイトペーパーでまとめ、インターネット上で公開することで、まだ自社を知らない見込み顧客とホワイトペーパーを経由して接触できる可能性があるためです。商品に興味を持った顧客には営業担当者が訪問し、商品や業界知識について解説するケースが多いと思いますが、ホワイトペーパーは営業が語るような知識を一つの資料に詰め込んだものといってよいでしょう。ホワイトペーパーによって、顧客がある程度の予備知識を持った状態を作れるため、営業の手助けにもなりえます。

企業パンフレットやカタログとの違いは

企業パンフレットやカタログは、ホワイトペーパーとどう違うのでしょうか。企業パンフレットやカタログは企業や商品の情報、料金などを掲載したものになります。このように見てみると、ホワイトペーパーは「顧客にとって有益な(顧客が知りたいと思っている)情報を掲載したもの」、パンフレットやカタログは「企業が伝えたい情報」といった違いがあります。

カタログやパンフレットは、すでに自社への興味が高まっている顧客にとっては有益な情報となりえますが、ホワイトペーパーは、まだ自社に興味を持っていない顧客候補(リード)にまで範囲を広げてカバーできます。つまり、ホワイトペーパーはカスタマージャーニーマップの比較的初期段階で、特に効果的なコンテンツといえます。

(カスタマージャーニーマップについてはこちら)コンテンツマーケティングとは? 定義と仕組み、コンテンツの種類を解説

ホワイトペーパーが見込み顧客の信頼を得られる理由

先述の通り、ホワイトペーパーは見込み顧客の信頼を勝ち得るのに効果的なコンテンツ形態です。2017年のある調査では、71%の企業がBtoB商材の購入判断調査でホワイトペーパーを見るという結果が出ています。また同調査によって、個人情報を登録するのに一番ハードルが低いコンテンツはホワイトペーパーであることが明らかになっています。米国のContent Marketing Institute(CMI)の記事では、ホワイトペーパーがなぜ見込み顧客も含めた顧客のエンゲージメントを高めるのに有効か、ホワイトペーパーの性質を4つ挙げた上で説明しています。

・売るためでなく、教育するための、充実した実用的コンテンツ
・革新的な考え方を促す新しいアイデア
・関連性が高くタイムリーな問題についての視点を明確に伝えられる
・根拠のある統計的なデータとしっかり調べられた知見

以上の4点を見てみると、ホワイトペーパーが信頼を勝ち取るコンテンツとして機能している理由は、「顧客にとって実用的である」「タイムリーである」「根拠がしっかりしている」という要素が揃っているからだと言えます。

例えば、ある企業の新卒採用を担当している担当者が、最近の学生の傾向を調べているとします。そんなときに、採用広告会社がまとめている学生の考え方や行動について説明しているホワイトペーパーを見つけました。そのホワイトペーパーは、しっかりした統計データと共にまとめられており、今後の採用活動を考える上で有益な情報が掲載されていました。担当者にとってタイムリーで実用的なコンテンツと言えるでしょう。

ホワイトペーパーをダウンロードする過程でメールアドレスなどのリード情報を得ることで、見込み顧客の信頼を勝ち取りつつ、接点を持つことができるのです。

ホワイトペーパーの種類

では、「顧客にとって有益な情報」とは具体的にどのような情報なのでしょうか。ホワイトペーパーの主な種類について見ていきます。

調査レポート

商品やサービスに関係するアンケート調査や統計データをまとめたものです。例えば、「飲食店の予約システムを提供する事業者が、『飲食店を予約するときに使う手段についてのアンケート』を実施、結果を公表する」「新卒採用広告の会社が新卒採用に関するデータをまとめる」といった形を取ります。難易度は高いですが、質の高いデータであればプレスリリースで配信し、メディアに取り上げられることで大きな宣伝効果を発揮するケースもあります。

ノウハウ解説

商品・サービスを利用する顧客にとって役立つノウハウを解説します。BtoCであれば「戸建て住宅メーカーが家づくりで必要になる知識を解説」、BtoBであれば「営業ツール会社が営業マンに必要なスキルを解説」などが考えられます。インターネットで調べものをしている過程で自社を見つけてもらえるため、カスタマージャーニーマップの認知段階のリードと接触できます。

事例紹介

自社の商品・サービスが顧客の課題解決に結び付いた事例をまとめます。質の高いものにするため、顧客が課題を抱えていたときのストーリー、自社を選んだ決め手、課題解決に至ったストーリーなど、ストーリー性を持たせたものにするのも一つの手でしょう。カスタマージャーニーマップの「比較検討」段階で大きな効果が期待できます。

ホワイトペーパーの作成、配信のポイント

ホワイトペーパーを作製する際は「顧客が知りたがっている情報」についてリサーチする必要があります。BtoBであれば、普段から顧客に向き合っている営業担当者に、顧客からよく投げかけられる質問が何なのか質問してみるとヒントが得られます。BtoCであれば、顧客にアンケートを実施して情報招集するのも良いでしょう。

次に、配信するターゲットを決めます。コンテンツマーケティングの基礎でもあるペルソナの設定、カスタマージャーニーマップのどの段階に向けて配信するのか検討することが欠かせません。BtoBであれば、どのようなポジションにいる方に入手してほしいかについても考えましょう。

ターゲットを決め、取り上げるテーマも決まった後は、いよいよ作成です。使う文章や表現は誰にでも分かるような平易なものを使いましょう。特に、ノウハウを解説する場合は、商品・サービスだけでなく、業界についてもよく分からない方が手にするケースも想定すべきです。

自社のオウンドメディアで配信する場合は、設置場所に注意しましょう。記事内に設置する場合も、必ず誘導する文をつけて、分かりやすい位置に設置しましょう。また、複数のホワイトペーパーがある場合は、記事のテーマに近いものを設置するようにしてください。ホワイトペーパーを入手してもらう際は、メールアドレスや電話番号などの連絡先を入力してもらうようにしましょう。

ホワイトペーパーの基本的な構成

CMIに多数のホワイトペーパーに関する記事を寄稿しているMitt Ray氏のブログ記事「How to Write a White Paper with Examples and a Free Template」では、ホワイトペーパーの基本的な構成について解説がなされています。

記事によると、ホワイトペーパーのタイトルにはある程度の「型」があるようです。

1.「数字」「パワーワード」「結果を出す」方法
(例)コンテンツマーケティングで自社へのエンゲージメントを高める5つの確実な方法
2.「オーディエンスが達成したい結果」の方法
(例)コンテンツマーケティングで自社へのエンゲージメントを高める方法
3.「オーディエンスが達成したい結果」「時間制限」の方法
(例)1年かけてコンテンツマーケティングで自社へのエンゲージメントを高める方法
4.「用語」とは 「達成したい結果」の方法
コンテンツマーケティングとは 自社へのエンゲージメントを高める方法

このように見てみると、自社でどのようなホワイトペーパーを作ることができるのか、イメージできるのではないでしょうか。

ホワイトペーパーの基本的な構成は以下の図の通りです。

※Mitt Ray氏の記事を参考に筆者作成

まず、ホワイトペーパーで解説する内容がなぜ重要なのかについて説明します。例えば「コンテンツマーケティングで自社へのエンゲージメントを高める5つの確実な方法」というホワイトペーパーを作るのであれば、「コンテンツマーケティングで自社へのエンゲージメントを高めることがなぜ重要なのか」について解説すると良いでしょう。

次に、ハウツーに入ります。先ほどの例でみれば、実際に5つの方法を解説していきます。できるだけ説得力を持たせるため、ハウツーの根拠となるデータなどを用いながら解説すると良いでしょう。ここで気を付けなければならないのは、自社のサービスに言及することは厳禁だということです。あくまでオーディエンスが知りたいことを淡々と解説するよう心がけましょう。

最後に、まとめに入ります。そしてここでようやく、自社のサービスについて言及します。例で見ると、「コンテンツマーケティングでエンゲージメントを高めるためにどのような手助けができるのか」について言及しています。この要素内、もしくは要素の後に、自社のサービスへのリンクを設置しておくと良いでしょう。

ホワイトペーパー作成の際に役立つページ

ここでは、ホワイトペーパー作成の参考となるウェブサイトやページをご紹介します。

TradePub

こちらのページでは、さまざまなホワイトペーパーが紹介されています。検索機能もあるほか、業界ごとにホワイトペーパーが分類されています。また、「FEATURED EBOOKS(注目の電子ブック)」という項目も用意されており、質の高いコンテンツを見ることができます。自社のホワイトペーパーのイメージを膨らませるための参考になります。

Google Scholar

Googleが提供している検索エンジンサービスです。さまざまなワードについて論文に絞って検索できます。ホワイトペーパーに説得力を持たせるため、根拠となるデータを探す際に活用できます。

ホワイトペーパーの事例

ここでは、ホワイトペーパーの事例について見ていきます。

JUSTFOODのノウハウ資料

食品製造の現場についてテクノロジーを使ったソリューションを提供しているJUSTFOODは、ホームページ上で豊富なホワイトペーパーを用意しています。タイトルは「AIを使ったソフトウェアがどのように食品製造を変えるか」「食品業界のサプライチェーンマネジメントについて」など、食品に携わる方にとって有益な情報を配信しています。

HRlinkITの採用市場レポート

採用についてテクノロジーを使ったコンサルティングサービスを運営しているHRlimkIT。同社のホームページでは採用市場の動向や、採用に関するテクノロジーの影響についてのレポートを用意しています。採用のプロの目線から作られたレポートは、企業の人事担当の方からすれば貴重な情報源となるでしょう。このようなレポートを作成する例は国内でも多く見られます。

Amazon Pay導入事例集

Amazonの決済サービス「Amazon Pay」のサイトでは、導入した企業のストーリー仕立ての事例集が用意されています。事例集は半期ごとに新しいものが作られているようです。

ホワイトペーパーの発行は「業界のプロ」としての信頼を得るチャンス

ここまで、ホワイトペーパーの特徴や、種類、作成する際のポイントなどについて見ていきました。ホワイトペーパーは「業界のプロ」として自社のノウハウを存分に示せるコンテンツです。作成には手間がかかりますが、会社にとって資産として残っていきます。また、リードの獲得のみならず、自社内で人材育成の資料として応用することもできるでしょう。繰り返しになりますが、ホワイトペーパーを準備する際に必須なのは「ペルソナ」を設定すること、そしてカスタマージャーニーマップのどの段階のリードに対して配信をするかということです。クマベイスではBtoB企業向けコンテンツ制作サービスも行っております。カタログや企業パンフレットに行き詰まりを感じている方は、お気軽にご相談ください。