新型コロナウィルス感染拡大の影響が世界中に広がり、日本でもwithコロナの新しい生活様式が呼びかけられてからずいぶん時間が経ちました。外出自粛の空気は今も色濃く残り、以前のような営業活動ができない状況が続いています。そんな中、活躍の場を広げているのがインサイドセールスです。新たな危機により、発祥の地である米国でもインサイドセールスが見直されているようです。なぜなら、インサイドセールスはフィールドセールスにはない強みがあり、危機下において様々な役割が期待されるからです。今回は、インサイドセールスに求められる役割について解説いたします。

リーマンショック危機下の米国でインサイドセールスが台頭

インサイドセールスという職種は米国で誕生したものです。概念は以前からありましたが、2008年のリーマンショックをきっかけに急激に広まっていったとされています。当時、多くの米国の企業が営業コストを削減したいと考えており、また多くの職を失った人々に雇用の機会を与える必要がありました。実際にインサイドセールス市場はリーマンショック以降、年率約7%で成長しており、米国だけでも新たに80万人の雇用を生み出したといわれています。

リーマンショック下の経済的に厳しい状況の中、企業の営業コストを下げ、かつ人々に雇用を生んだ(その裏ではもちろん企業の売り上げ拡大も達成されているはず)インサイドセールス。現在の新型コロナウィルス感染拡大という危機においても、少なからず企業に利益をもたらすものであると考えています。具体的な「売上金額」かもしれませんし、「安定している」という心理的な安心感かもしれません。

危機下で求められるインサイドセールスの役割

ではこの世界の危機の中、日本のインサイドセールス担当者は、どのような責任を持ち活動していけばよいのでしょうか。企業がインサイドセールスに求める役割はこちらの記事で詳しく紹介いたしましたのでご参考にされてください。
(関連記事)インサイドセールスのやりがいについて考える 電話営業が「つらい」とお感じの方へ

営業売り上げを新型コロナ前に戻す/伸ばす

営業売り上げについて、新型コロナウィルス感染の影響を受けている場合は、売り上げを元に戻すということが優先順位1位と考えます。しかし、多くの企業が影響を受け業績が悪化している中、そもそも企業が製品やサービスの導入予算を削減していることが予想されます。そのような状況で、無理にぐいぐい押す営業を行うのではなく、適切な営業先にフォーカスしてリソースを投入することが理想です。

これはリードを発生させる過程の話のため、マーケティング部門との密接な連携が必要となります。営業する対象の製品/サービスが必要な企業、必要となりそうな企業を精緻に洗い出すために、これまでのデータをひっぱり出して、リード発生までの導線や傾向を見直してみてください。

迅速な営業対応

最近は外出自粛の影響を受け、多くの企業で在宅勤務やリモートワークが推奨されるようになりました。オフィスに誰もいないという光景も珍しくないようですが、それが原因で「顧客からの連絡が担当者につながらない」「返事が遅くなる」「不足情報や必要な確認が増えてしまいやり取りを余計に増やしてしまう」となるのは良くない状況です。

インサイドセールスは日ごろから場所や外的環境に影響を受けない営業手法のため、基本的に相手の都合を気にするだけで通常と同じペースで営業活動することができます。もちろんこれまでのフィールドセールスにも同じ営業対応はできるでしょうが、常日頃から相手と直接会っての会話をしない営業に慣れているのはもちろんインサイドセールスです。インサイドセールスの方が、必要情報の送付、注意事項を補足しておくなど細かい気配り面は技術力が高いといえます。

安心感を与える営業活動

世間が新型コロナウィルスの感染拡大で対応にバタバタとせわしない状況だったり、逆に自粛ムードで必要以外の経済活動がなされていなかったりと、不安定な状況です。そんな中において、営業してくれる担当者が状況になれておらず、地に足のついた活動ができていなければ、購入側も落ち着いて検討を進めることができません。

インサイドセールスはあらかじめ設定されたマニュアルに沿って、正しく活動をしていく安定した組織である必要があります。この状況下で以前と全く同じマニュアルで対応できるとは考えていません。インサイドセールス個々人がこの状況にあった方法をバラバラに考えるのではなく、まずは組織のリーダーで合った方法を模索、マニュアルに落とし込みます。もちろん新マニュアルに沿った活動を行いますが、インサイドセールスメンバー一人ひとりの感触も徐々に取り入れていくべきです。

営業している当事者(インサイドセールスメンバー)が新マニュアルにそって安心して営業を続けることにより、営業される側の顧客も安心してじっくりと検討を進めてくれるはずです。個人的には新規架電のアイスブレイクにもあまり新型コロナの話題を盛り込むことはおすすめしていません。不安を煽るような会話でなく、メンバー一人ひとりより安心してもらうような雰囲気をまとっていることが重要です。

まとめ

これまでメールマガジンや本ブログでインサイドセールスの特徴やメリットを紹介しつづけてきましたが、それほどまだ日本企業に浸透している印象ではありません。しかし、新型コロナウィルスの感染拡大により、世間一般が外出自粛ムード一色のなか、さすがに訪問して営業はできないということで一気に認識が広がったのではと感じます。

個人的にインサイドセールスの浸透はあと10年くらいかかると踏んでいましたが、新型コロナウィルスは社会に様々な営業を及ぼし、営業を含む仕事全体の取り組み方について、10年の差をあっという間に縮めてしまいました。世間は10~20年時代が進んでしまったにもかかわらず、営業手法や仕事の仕方がこれまで通りのようでは、周囲から遅れをとってしまうでしょう。

緊急事態宣言は解除されましたが、秋から冬にかけてまた大流行も懸念されています。通常の営業活動に戻るだけでなく、自粛期間中の営業手法や仕事の仕方について振り返る機会を設け、これからに生かす必要があると考えます。通常出勤にもどった方も多いかと存じますが、ぜひこれまでの所感をもとにこれからについてチームで腰を据えて話し合ってみてください。

<関連書籍>
野口優帆『40分でインサイドセールスの考え方がわかる本』
野口優帆『続・40分でインサイドセールスの考え方がわかる本』

<関連記事>
SalesZine「ひとりではじめるインサイドセールス」(外部リンク)