新聞やテレビなどのメディア企業は、自ら情報を発信するメディア運営によって収益を上げています。もし一般企業が自社のオウンドメディアでマネタイズ(収益化)できれば、「どんな企業でもメディア企業のように振る舞う」というコンテンツマーケティングの考え方からしても理想の形といえるでしょう。事実、米国では事業会社がメディア企業としても展開している事例があります。今回は、そんなオウンドメディアのマネタイズについて見ていきます。

オウンドメディアのマネタイズは「目的」ではなく一つの「手段」と考える

オウンドメディアのマネタイズに取り組むうえで大切なことは、「収益化をオウンドメディアの一番の目標にしない」ということです。オウンドメディアはあくまで自社のファンを増やす、もしくは自社プロダクトの販売につなげるといった目的で運用していくことが大切です。その上で一番大切なことは「信頼」の獲得。いきなり利益を求めるのではなく、まずは「顧客がオウンドメディアと自社を信頼してくれるよう運用する」ということが鉄則です。「急がば回れ」ともいえます。

多くのケースにおいて、オウンドメディアは見込み顧客(リード)を増やす媒体として運用することが重要です。ここが抜け落ちていると、オウンドメディアは見向きもされません。収益化には、「信頼でき、価値のあるオウンドメディア」を持っていることが前提なのです。

あくまでオウンドメディア自体のマネタイズは目的ではなく、運用するうえでの一つの手段と見るのが良いでしょう。「オウンドメディア経由のリードも増えてきたな」という段階でマネタイズへの取り組みを始めるようにしましょう。

オウンドメディアのマネタイズ手法

オウンドメディアのマネタイズにはどんな手法があるのでしょうか。それぞれについて見ていきましょう。

基本は自社製品の販売、リード獲得、ECサイトへの誘導

前述の通り、オウンドメディアで収益を上げるには、自社のオウンドメディアに対しての信頼を向上させなければなりません。その上で、オウンドメディアを見た人に、収益につながる行動を取ってもらうように設計します。

そのためには、用意したコンテンツにCTAを設置することが大切です(CTAについては「オウンドメディアの基礎 成功のポイントとコンテンツマーケティングでの位置づけ」をご参照ください)。BtoC企業ならば、「商品ページに移動させる」「ECサイトに誘導する」といったことが考えられるでしょう。一方、購入までに時間がかかるBtoB企業ならば、「リード獲得」のため問い合わせページに導くことが収益化につながるCTAだといえます。また、BtoC、BtoBに関わらずメルマガを配信しているのであれば、購読者登録をしてもらうことも考えられるでしょう。

オウンドメディアで直接収益を得ることを考える前に、「オウンドメディアを通して自社の商品・サービスを購入してもらう」ことがマネタイズの第一歩です。

純広告

純広告とは、オウンドメディア内で広告枠を設け、そこに他社の広告を掲載して収益を得る手法です。一番オーソドックスな手法でもあり、よく見かけるという方も多いでしょう。

掲載料金は「掲載期間」「PV(ページビュー数)」「クリック数」などによって決まります。こちらは一般的な広告と同様、あまり見てもらえないメディアに掲載依頼があることは考えにくいでしょう。そのような意味でも、多くの人に見てもらえるような信頼できるオウンドメディアを作ることが前提条件となります。また、後述するいずれの広告の場合でも同じですが、オウンドメディアの内容とあまりにかけ離れた広告を掲載することは、ユーザーの視点から見て好ましくありません。

インフィード広告

インフィード広告は、自社のコンテンツの間に差し込む広告です。純広告は一目で広告と分かりますが、こちらはコンテンツの邪魔にならないよう自然な形で掲載できます。自然と目に入るので、ユーザーが広告を目にする機会も増えるでしょう。

しかし、コンテンツと勘違いしてクリックしたユーザーが「紛らわしい」と感じてしまい、心証を悪くする場合もあるでしょう。

アフィリエイト広告

アフィリエイト広告とは、一言でいうと「成果報酬型の広告」です。自社のオウンドメディアに他社商品の広告を掲載し、その広告からユーザーが購入に至った場合に報酬が入ります。つまり、「自社のオウンドメディアを経由して広告元の企業の商品が購入された場合に報酬が入る広告」です。広告元の企業と掲載企業の仲介役をするASP(Affiliate Service Provider)のサービスを利用してアフィリエイト広告を掲載します。

アフィリエイト広告を掲載する場合は、オウンドメディアのコンテンツと親和性が高い広告を掲載するようより強く意識する必要があります。そうすることで収益を上げる可能性が高くなるためです。例えば、戸建て住宅メーカーのオウンドメディアで住宅ローンについての比較コンテンツを掲載した場合、そのコンテンツに住宅ローンの広告を掲載すると収益を上げられる可能性は高くなるでしょう。

アドネットワーク

アドネットワークとは、GoogleAdSenseYahoo!ディスプレイアドネットワークなどのサービス事業者を介して、自社の広告枠に広告を配信してもらう手法です。自動的に広告を配信してくれるため、自社で広告主を探す手間が省けます。

ただし、表示される広告にはある程度制限をかける必要があります。制限なしだと、競合他社の広告が掲載される可能性もあります。サービスを利用する際は、どれだけの制限がかけられるのか確認することが大切です。

一部コンテンツの有料化

コンテンツに「課金」をさせることで収益化する手法です。「お金を払ってでも見たい」と思わせるコンテンツを用意しなければならないため、難易度の高い手法です。上記全ての手法を取れるほど信頼のあるオウンドメディアを運用できて初めて検討するべきでしょう。

一般企業がメディア企業化するのと同時に、メディア企業も一般企業化している

ここまでオウンドメディアのマネタイズについて解説してきましたが、このように見ると、どのような企業でもメディア企業のように自社メディアによって収益を上げられる時代となってきたことが分かります。しかし、それと同時にメディア企業も元々持っていた「ユーザーの信頼」を活用し、メディア以外の商品・サービスを提供するケースが増えてきています。

英国の雑誌出版社「Dennis Publishing」は、オンライン自動車ディーラーを買収後、自動車販売の事業を開始しています。同社は1974年の創業以降、自動車についての雑誌を出版し続けており、多くの見込み顧客を持った状態で事業を始めたことになります。

このように、もはや「一般企業」「メディア企業」の垣根はなくなりつつあります。「業界全体が古い体質だからコンテンツマーケティングやオウンドメディアを重視しなくても大丈夫」という姿勢では、突然の市場環境の変化に耐えられなくなる可能性があります。

それぞれの手法のメリットとデメリットを理解した上で取り組もう

オウンドメディアのマネタイズ手法にはさまざまな種類がありますが、今回見てきたようにそれぞれメリット・デメリットがあります。そのことを把握した上で、マネタイズに取り組むことが大切です。繰り返しになりますが、「信頼できるオウンドメディアを運営する」ことが何よりも重要です。まずは顧客目線に立ったコンテンツを用意することから始めましょう。