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「メールマーケティング」と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。メルマガ? ニューズレター? マーケティングオートメーション(MA)ツールによるメール配信? 実はどれもある意味正解です。しかし、これらだけではメールマーケティングの要素は足りていません。本稿では、メールマーケティングの概念や、メールマーケティングの先進地・米国におけるメールマーケティングの考え方について詳しく解説します。

メールマーケティングの定義

まずはメールマーケティングの定義について確認しておきましょう。メールマーケティングとは、メール(Email)という手段をベースしたマーケティング手法のこと。つまり、マーケティング戦略に基づいてメールを用いてさえいれば、それはメールマーケティングとなるのです。

ただし、近年はメール「のみ」によって態度変容を促し、見込み顧客や顧客へと育成するマーケティング手法を、狭義にはメールマーケティングと呼ぶこともあります。ちなみにMAツールは、このフローを自動化するものです。細かく条件を指定して行動が条件と一致したメールアドレスに対し、自動で特定のメール文面を送る。これにより、顧客へ育成することを目指します。

先述の通り「メールマーケティング」の範囲は広く、手段というよりもはや「概念」のようなものです。メールだけでマーケティングファネルの大部分をまかなうパターンもあれば、メールはマーケティングファネルのごく一部にすぎず、他のチャネルと有機的に連携させるケースもあるでしょう。マーケティングの基本であるペルソナ設定とカスタマージャーニーマップの作成をしっかりと行い、その結果メールというチャネルが選択された、という流れが本来あるべき姿です。戦略と戦術を混同しないよう気をつけてください。

サブスクライバーという概念

メールマーケティングの先進地は米国です(マーケティング全般に言えることですが)。米国で数年前から主流となっている概念に、サブスクライバー(Subscriber)というものがあります。メールマーケティングにおけるサブスクライバーとは、「自ら進んでメール配信等を申し込んだ人」を指します。

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この「自ら進んで」の部分が重要であり、この企業(ブランド)からの情報を受け取りたい、つまり「この企業(ブランド)とつながりたい」という思考になっている状態です。自ら進んでメールアドレスなどの個人情報を企業側に提供してくれるわけですから、ある程度の倫理観も企業側には求められます。サブスクライバーを裏切るようなことは、決してあってはならないのです。

企業はサブスクライバーによって有益な情報を提供し続ける必要があります。これを繰り返すことで、信頼関係を構築。最終的に何らかの企業利益につなげていきます。企業利益につなげることができなければ、それはメールマーケティングとは呼べません。どういった導線でサブスクライバーを獲得し、どういった導線で企業の利益に結びつけていくのか。メールマーケティングは戦略が命なのです。

サブスクライバーが注目されるようになった背景

サブスクライバーが注目されるようになった背景には、個人情報保護に関するルールが世界中で整備されていっていることがあります。例えばEU(欧州連合)は2018年5月25日、個人情報保護に関するルール「GDPR(一般データ保護規則)」を施行しました。これにより、個人の同意なき個人情報の収集・活用ができなくなったのです。

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また、SNSをはじめとした第三者が運営するプラットフォームへの依存リスクも、サブスクライバーが注目されるようになった理由として挙げられます。SNSのアルゴリズムが変更されたり、サービス内容が変更されたりすると、ユーザーである企業は大打撃を受けます。事実、数年前にFacebookのアルゴリズムが変更された際、ある国ではメディア企業のFacebook依存が著しく、PVが激減したという笑えない話もあります。

SNSなどのプラットフォームは、読者と直接つながった状態とは呼べません。ある日突然、読者を失うリスクを伴います。これらのことを背景に、「唯一コントロール可能なチャネル」であるメールへの注目が高まっているのです。

サブスクライバーをどのようにして獲得すべきか

サブスクライバーは、自ら進んで個人情報を差し出した状態であることは先述の通りですが、この個人情報の利用範囲を企業側が明示し、サブスクライバーがそれをしっかりと理解している状態であることが鉄則です(ちなみに、自社で収集し、個人の同意のもと利用可能にある個人情報を「ファーストパーティデータ」と呼びます)。なかなか難易度が高いようにも思えますよね。

日本では「Twitterのフォロワー○○○人」がマーケティングにおけるKPIとして設定されることがあります。しかし、米国のマーケティング業界では近年、Twitterのフォロワー数ではなく、ニューズレターなどのサブスクライバー数をKPIとするケースが増えています。最近でも、マーケティング業界の著名人が「サブスクライバー2万人達成!」とTwitterで報告するのを目にしました。SNSの仕様がちょくちょく変わるのを見ても、獲得が難しそうなサブスクライバーの重要性はどうやら増すばかりのようです。

このように重要なサブスクライバーですが、ではどうやって獲得すればよいのでしょうか。ポイントは「コンテンツの質」です。最もオーソドックスなのは、自社サイトやオウンドメディアに質の高いeBookやホワイトペーパーを用意しておくやり方です。米国では、時に一般書籍として流通しているような書籍のPDFデータが用意されていることもあります。また、相当なコストをかけたセンサスを、インフォグラフィックなどにまとめたものもあります。せっかく個人情報と引き換えにダウンロードしたコンテンツが低品質だと、エンゲージメントは大きく下がります。そこからさらに営業メールが届くようになれば、相手の心情は取り返しのつかない状態となるでしょう。

また、日本では名刺交換した相手にメルマガを送ることが常態化していますが、これはご法度です。こうして個人情報を獲得したとしても、それはサブスクライバーとは呼べません。先述の通り、サブスクライバーとは自ら進んで利用可能な個人情報を差し出した人のことであり、「名刺交換=個人情報の利用の同意」ではないのです。むしろ、相手のエンゲージメントが下がるだけなので絶対にやめてください。

例えば名刺交換した相手と雑談し、相手が自社のサービスや業界に興味を持ってくれたとします。そのタイミングで「うちで業界動向をまとめたメルマガを配信しているので、よかったら登録されませんか?」などと伝えてみてください。それで相手がプライバシーポリシーを確認した上で登録したら、サブスクライバーと呼べるでしょう。「よかったらお名刺に記載してあるメールアドレスを、こちらで登録いたしましょうか?」というのは、個人情報の利用範囲に相手が同意するタイミングが生じないので、おすすめできません。

個人的には、サブスクライバーを獲得するために大量の広告を打つのも、なんだか違う気がしています。カンファレンスにブースを出展し、そこで本人の同意のもと獲得したデータを活用するのは、MAツール運用においてよくあるパターンですが、これも「自ら進んで」の部分が欠落しているので、サブスクライバーとは呼べないでしょう。例えばセミナーの最後に告知するなどにとどめておき、本当に興味を持った人物が登録してくれるのを待つのが、持続可能なビジネスを展開するうえでは大切だと考えます。

倫理的なメールマーケティングとは

先述の通り、サブスクライバーとはメールによるコミュニケーションが自由にとれます。だからといって営業メールばかりになると、相手は引いてしまいます。

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以前、リスクコミュニケーションの専門家を取材させてもらった際、「住民と行政の信頼関係が構築できていないと、非常時に情報を発信しても聞いてもらえない」と話していたのが印象的でした。メールマーケティングもこれと同じことが言えます。サブスクライバーになってもらってからが勝負であり、相手のことを思いやりつつ、有益な情報発信を通してお互いの信頼関係を醸成していく必要があるのです。

欧米のメールマーケティング業界では今、「倫理観」と「人間的」がキーワードとなっています。相手が欲していない情報を一方的に送り付けても、むしろ印象は悪くなります。今回の新型コロナ対応では、企業の情報発信の姿勢が問われました。相手がどんな状態なのかをしっかりと考え、寄り添ったメッセージを出し続けた企業の評価が高まっています。

MAツールの活用を否定はしませんが、機械的に送り続けるだけでは、これからの時代効果を出すことが難しいと考えます。工数はかかりますがより細かくセグメントし、人間の温かみが感じられるような文面を、状況別に大量に用意する。こうした作業が必須になっていくでしょう。

メールをトラッキングできない世界へ

プライバシーが守られる世界においては、主導権は消費者側にあります。少し専門的な話になりますが、htmlメールの場合、トラッキングピクセルが埋め込まれており、開封率といった数字が計測できます。しかし、計測することについて個人の同意を得ているケースは極めて少ないものです。また、果たして開封率の計測がどこまで重要かという議論もあります。サブスクライバーであれば、情報がほしくて登録しているわけですから、開封率はおのずと高まります。逆に、名刺交換した相手にメールを送っている状況だと、相手の興味関心を測るうえで開封率は重要となってくるでしょう。

日本ではあまり知られていませんが、受信者自ら「迷惑メール」に振り分ける傾向にあるメールの送信元は、システム側から「スパムの可能性がある」と認識される可能性が出てきます。何もしていないのにメールが「プロモーション」や「迷惑メール」のフォルダに振り分けられるのであれば、それはあまりよい傾向とはいえません。マーケティング戦略を見直し、マーケティング施策として送信するメールの内容を早急に見直すべきです。

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今年に入って、MAツール業界に激震が走りました。トラッキングを防ぐことのできるメールサービスが登場したのです。このサービスは、トラッキング可能なメールが届いた場合、受信者がその事実を知ることができます。こうした動きを受け、欧米のメールマーケティング業界では、「トラッキングしている場合、その事実をメール本文内で相手に知らせるべきだ」との主張が聞かれるようになりました。さらにはもう一歩進んで「可能であればトラッキングピクセルのオンオフを受信者に選ばせるべきだ」との考えも出てきています。

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この動きはMAツールの仕組みの根幹に関わるもので、個人的に注視しています(ちなみにクマベイスメルマガはテキストメールにしており、トラッキングしたことは一度もありませんのでご安心ください)。いずれにせよ、社会からの要求により、自動化したマーケティングが、より人間的な「顧客第一主義」という本質的なマーケティングに戻ってきている点は皮肉です。

直接つながっている状態は危機に強い

メールマーケティングの世界は日進月歩であり、メールマーケティングだけのカンファレンスも世の中には存在するほどです。導線設計だけでなく、タイトルのつけ方、スパム扱いされにくい方法まで、非常に細かく研究が進んでおり、体系化されています。古くて新しい「メール」に注目が集まっているのは本稿で説明してきた通りですが、個人と直接つながっていることは、危機に強いマーケティングが展開しやすい状態ともいえます。先行き不透明な現代だからこそ、企業の大小を問わず、一度導入を検討してみてもよいかもしれません。

<お知らせ>
クマベイスではメールマーケティングのコンサルティングサービスを提供しております。半年間で自走できる状態を目指すものです。ご興味のあられる方は以下のテキストリンクより内容をご確認ください。

>>サブスクライバーを獲得するためのメルマガ戦略コンサルティングサービス