コンテンツマーケティングオウンドメディアの基礎について当ブログで取り上げてきましたが、コンテンツを広く拡散させるためにはSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を活用することが大切です。今回は、コンテンツの認知獲得にも有効なSNSマーケティングについて解説します。

SNSマーケティングのポイント

今やSNSは世代年齢問わず利用されています。「SNS疲れ」という言葉が生まれるほど生活の中に溶け込んできており、一日全く触れないという方は少ないのではないでしょうか。まずは現在のSNS事情、そしてSNSマーケティングの概要についてもご説明します。

SNSの現在地

総務省が平成29年に実施した調査によると、「インターネットで利用した機能・サービス」のなかで、「ソーシャルネットワーキングサービスの利用」を選んだ人の割合は全体で54.7%でした。細かく見てみると、20~39歳では7割を超え、40~59歳では5~6割、60歳以上になると1~3割で推移するようです。このように見ると、20~59歳の間ではSNSの利用は一般的になっていると言えます。

では、サービスごとの利用者数はどのようになっているでしょうか。主要なSNSの国内ユーザー数はLINEが8400万、YouTubeが約6200万、Twitterが4500万、Instagramが3300万、Facebookが2600万、TikTokが950万となっています。日本の人口が約1億2000万人なので、LINEは国内でおよそ3人に2人、YouTubeは2人に1人が利用していることになります。

参考:
LINE Business Guide
Twitter Japanアカウント
nielsen「TOPS OF 2018: DIGITAL IN JAPAN ~ニールセン2018年 日本のインターネットサービス利用者数ランキングを発表~」
Facebook「Instagramの国内月間アクティブアカウント数が3300万を突破」
CNET Japan「フェイスブック ジャパン長谷川代表が語る「退任の真意」–独占ロングインタビュー」
ITmediaマーケティング「TikTokはコミュニケーションプラットフォームとして2019年の日本でどう進化するか (1/2)」

それぞれの利用者の年齢層はどのようになっているでしょうか。総務省の統計を見ると、LINEとYouTubeに関しては10~50代で利用率が5割を超えており、広い世代で利用されていることが分かります。Twitterに関しては10~20代では6割前後が利用していますが、30代以上になると3割以下に落ち込みます。

Twitterは比較的若い世代に好まれているようです。もし、30代に情報を届けたいとなると、TwitterよりもFacebookのほうが適切かもしれません。30代のTwitter利用者は30%ですが、Facebookは51.7%と約半数が利用しています。40~50代がターゲットとなると、TwitterやFacebookよりもYouTubeのほうが情報が届きやすい可能性があります。

TikTokに関しては公的なデータはありませんが、Business Journalの記事によると、ユーザー数は10代が突出しているようです。10代がターゲットの場合は有効的なSNSかもしれません。しかし、記事が伝える通り40代男性のユーザー数も増えているとのことです。認知されてからまだ間もないサービスのため、推移を注視していきたいところです。

SNSマーケティングは企業へのエンゲージメント(愛着)を高める

SNSマーケティングとは文字通り、SNSを使ったマーケティング手法ですが、どのような特徴があるのでしょうか。大きなものとして「ユーザー主体のマーケティング手法」「企業へのエンゲージメント(愛着)を高める効果が期待できる」という2つの特徴があります。

SNSには「シェアをする」という大きな機能があります。「これは役に立つ情報だからいろんな人に知ってほしい」と思われた投稿はどんどん拡散されていきます。一般的な広告の場合ですと、より金額をかけると大きく宣伝することかできますが、SNSだと情報を拡散するかどうかはユーザーの判断になります。そのような意味で「ユーザー主体のマーケティング手法」だと言えます。

また、SNSは直接売り上げに結び付けるために用いられることもありますが、企業のファンを増やす目的で使用されることもあります。ユーザーにとって役に立つ、または面白いと思われるコンテンツを配信し、企業へのエンゲージメントを高める効果が期待できます。このような観点からも、コンテンツマーケティングと相性の良いマーケティング手法と言えるでしょう。オウンドメディアに掲載した情報をSNSで告知することにより、コンテンツの効果を高めることができます。

「なぜ」「どのように」SNSマーケティングを行うのか

SNSマーケティングを行う際は、目的をはっきりさせておかなければなりません。「直接売り上げに結び付けたい」と「企業のファンを増やしたい」のように、目的が違えば発信する情報も変わってきます。

また、自社が扱っている商品の性質を考えて目的を設定することも大切です。例えば、「BtoCの自動車やマンションなどの商品」「BtoBの商品」は、衝動買いは少なく、通常は購入までに時間がかかるものです。このような場合に売り上げの効果を期待してSNSを用いても、それほど効果が期待できません。企業へのエンゲージメントを高める目的でSNSを運用した方がよいでしょう。

また、SNSユーザーに対してどのような価値を提供するのかについても考えなければなりません。それによってどのSNSを使えばよいのか変わってくるためです。

エンゲージメントを高めるため、顧客の心に響くようなコンテンツを届ける場合はどうでしょうか。写真や動画が効果的なため、InstagramやYouTubeを使うべきと考えられます。売り上げに結び付けるため、商品情報を届ける場合はどうでしょう。自社の商品ページに結び付きやすいTwitterやLINEを使用すべきかもしれません。ユーザーサポートの場合は、双方向のコミュニケーションがとりやすいTwitterやFacebookを用いるべきと考えられます。

このように「なぜ」「どのように」SNSマーケティングを行うのか考えることが重要です。

主要SNSの特徴と事例

日本国内で使用されている主要なSNSについて、それぞれの特徴と、SNSマーケティングの事例をご紹介します。

LINE

企業がLINEを使用する場合は、まず公式アカウントを作成しなければなりません。料金体系は無料でメッセージを送信できる数で決まり、月額0円のプランもあります。ユーザーは公式アカウントを「友達登録」することで、情報を見ることができます。オウンドメディアや実店舗でアカウントを宣伝することが一般的な告知方法になります。

大きな特徴としては、販促効果が期待できる点です。おすすめの商品や、クーポンを配信することができます。また、ポイントカードとしての機能もあります。BtoC企業はもちろん、BtoB企業でも飲食店への卸売りなど、比較的BtoCに近い業種で活用できるでしょう。

活用例としてはコーヒーチェーンのスターバックスコーヒーが挙げられます。スターバックスでは値引きクーポンの配信は行っていませんが、その時の気分でおすすめのメニューをピックアップするコンテンツを用意しています。また、ポイントカードのような機能を持った「スターバックスカード」をLINE上で発行できるようにすることで、新規顧客を呼び込む取り組みも行われています。

Twitter

Twitterの大きな特徴の一つに「匿名性」があります。アカウントは匿名で作れるため、情報を拡散させるハードルが低いといえます。またその匿名性ゆえ、全体としてフランクな雰囲気があります。しかしその分、ツイートに対して反発的な意見を書き込むハードルも低く、他のSNSと比較して「炎上」しやすいと捉えられることもあります。

効果的な使い方は「ハッシュタグ(#)」を使用することです。ハッシュタグは「#(特定のワード)」の形でツイートすることで、そのハッシュタグ付きのワードで検索した人から見つけてもらいやすくなります。例えば、ダイエットに興味のある人が「#ダイエット」と検索すると、ダイエット関連のツイートが表示されます。自社がダイエットグッズを扱っているのならば、#を付けてツイートすることでユーザーが見つけやすくなるでしょう。

ハッシュタグはそのときの世相に関連したものも多く、コロナウイルスの影響下では各自治体が飲食店に向けて「#●●(市町村名)エール飯」とハッシュタグを付けてテイクアウトメニューの写真を投稿するよう呼びかけるキャンペーンも行われています。社会の流れを見てツイートすることで発見される可能性が高くなりますが、炎上のリスクは高くなるため内容は十分精査しましょう。

このようにさまざまな利点のあるTwitterですが、投稿できる時数は140字以内に限られています。また、その匿名性の高さからアカウントのキャラクターが設定しやすいという特徴もあります。企業イメージが固いような企業が柔らかい内容のツイートをすることで、ユーザーのエンゲージメントが高まる場合もあるでしょう。そのような意味ではブランディングの効果が期待できます。いかに短い文章で画像や動画を用いながらキャラクターの特徴のある情報を発信できるか、担当者の腕が試されるところです。

電機メーカーのシャープの公式Twitterは、堅い企業イメージからは想像できないほどフランクな雰囲気のツイートを投稿しています。また、ツイートに対するリプライにも積極的に返信しており、うまくTwitterを活用している事例です。

Facebook

Facebookもハッシュタグがあるなど、Twitterと似た特徴がありますが、異なる特徴もあります。

まずは、制限文字数です。Facebookの制限文字数は約6万字で、Twitterに比べ詳細な情報を発信できます。次に、写真をより前面に打ち出せることです。Twitterでは一度の投稿で4枚までしか画像をアップロードできませんが、それ以上の枚数の画像を使用できます。さらに、本名でのアカウント登録が基本とされているため、起業アカウントの場合はより公式感が強く、ビジネス的な空気感が強くなります。

前述のシャープはFacebookアカウントも持っていますが、Twitterのアカウントと比べ製品の詳細な情報や導入事例を発信しているなど、使い分けていることが分かります。

また、前述の通り、比較的に10・20代はTwitter、30・40代はFacebookを使用します。「発信するコンテンツはどの年代に響くのか」といった視点から考えるのも一つの方法です。

Instagram

Instagramの大きな特徴は、「画像と動画中心のSNSである」という点です。TwitterやFacebookと違い、文字だけの投稿はできません。また、Twitterには「リツイート」、Facebookには「シェア」といったユーザーが気に入ったコンテンツを拡散させる機能がありますが、Instagramにそのような機能はありません。ハッシュタグ機能はあるため、いかに多く見つけてもらいやすいハッシュタグを付けられるかが重要なポイントとなるでしょう。

では、どのような画像を投稿すればよいのでしょうか。カギを握るのは「ストーリー」です。すなわち、画像にストーリー性を持たせるのです。

米国のビジネスバッグ、スーツケースのブランドAWAYの公式アカウントでは、AWAYのスーツケースとともに旅行の一幕や、人生の瞬間の写真が投稿されています。例えば、「疲れてスーツケースの上にもたれかかりながら眠る子供」「空港でプロポーズを受けて感涙する女性」などです。このように「AWAYのスーツケースがある旅行の場面のストーリー」を描くことで、ブランドのファンを増やしています。

YouTube

YouTubeの最も大きな功績は、「どんな企業でも気軽に、コストをかけることなく動画が配信できるようになった」という点です。メーカーが活用する場合は実際に製品が動いている様子、美容室やマッサージ店は施術の様子など、写真では伝えることができない情報を届けることができます。

ただし、単に製品が動く動画は購入を具体的に検討している段階のユーザーには有益と言えますが、そうでないユーザーにとっては価値のある動画とは言えないでしょう。このようにカスタマージャーニーマップの段階に合わせた動画作りが重要となります。

例えば、米国建設機械メーカー、キャタピラーの公式チャンネルでは、重機でジェンガをする動画をアップしています。このようにユニークな手法で製品の性能をアピールすることで、まだファンになっていないユーザーにコンテンツが届く可能性が高まります。

TikTok

まだ普及して間もないため、企業のマーケティング手法としては手探りの状態が続いているようです。そのなかでも、多くみられるパターンは「参加型コンテンツ」です。

TikTokではあらかじめ動画の編集ツールが揃っています。その特徴を生かし、企業は有名人を起用してオリジナルダンス、またはダンス用楽曲をアップし、それをもとにしたユーザーのダンス動画コンテストを開催することで新商品の認知度を上げるキャンペーンを行っている例が多く見られます。

また、ダンスだけでなく、商品を使ったストーリー動画のコンテストを開催するケースもあります。このような例は食品、飲料メーカーで多く見られますが、新しい手法が生まれるのか、さまざまな業種で広がりを見せるのかが注目されます。

SNSマーケティングでも大切なのは「ペルソナ設定」と「カスタマージャーニーマップ」

ここまで、SNSマーケティングについて解説してきましたが、文中で何度か触れたように、大切なのは戦略、すなわち「ペルソナ設定」と「カスタマージャーニーマップ」です。「SNSが流行っているらしいからなんとなく始めてみよう」という姿勢では効果は出ません。そればかりか、不用意なコンテンツを配信してしまい、炎上してしまう恐れもあります。企業のファンを増やすうえで強力な武器となるSNS。その特徴と注意点を押さえた上で効果的に活用しましょう。