自社サイトで商品やサービスの魅力をアピールするコンテンツをどれだけ用意したとしても、見てもらえなければ意味がありません。GoogleやYahoo!などの検索エンジンから多くの人を自社サイトに流入させるために、「検索順位をできるだけ上げたい」と思っているサイト運営担当者も多いのではないでしょうか。今回はサイト運営を始めた方、またはサイト改善を考えている方向けにSEO(検索エンジン最適化)の基本的な考え方と実践方法について解説していきます。
SEOの概要と目的
SEOとはSearch Engine Optimizationの頭文字を取ったもので、「検索エンジン最適化」という意味です。検索エンジンからのサイト流入者を増やすための一連の施策のことを指します。検索エンジンで何か調べ物をするとき、検索結果の上位に表示されているほうが多くの人の目に触れます。また、検索結果の例えば10ページ目のコンテンツよりも、上位に表示されているサイトのほうが、検索者にとって「信頼できるサイト」「良いサイト」と思われる傾向にあります。
SEOについて「検索順位を上げるためだけの手法」と思ってらっしゃる方も多いかもしれません。しかし、それはSEOの一つの要素であり、実践の「目的」ではないことに留意してください。SEOを実践するうえでは「自社サイトを訪れた人に最終的にどういった行動を取ってもらいたいか」といった視点を持ち続けなければなりません。目的はあくまで「こちらが望む行動を取ってもらえるようなサイトを構築すること」です。
このような目的を置けば「自社サイトを訪れた人が求めているコンテンツは何か」といった顧客視点を持つことが大切だと分かるでしょう。この点はコンテンツマーケティングで求められる姿勢とも共通します。SEOには徹底した顧客ファーストのサイト構築が求められるのです。
SEO実践の前に押さえるべき基礎知識
SEOを実践する前に押さえておきたい基礎知識を見ていきましょう。
検索順位は検索エンジン運営会社の評価で決まる
そもそも検索順位はどのように決められているのでしょうか?
例えば、広告であれば広告費を多く支払えば大きく宣伝できますが、検索エンジンの場合はそうではありません。検索エンジンの運営会社は独自の仕組みで評価基準を定め、検索順位を決めています。そのため、検索順位を上げるためには運営会社からサイトを評価してもらう必要があるのです。
主要な検索エンジンの一つであるGoogleが公開している「Google検索の仕組み」にも「広告は販売しても検索結果は販売していません」と明記されています。すなわち、SEOは多額の広告費を用意できない企業でも実践できる宣伝手法なのです。
検索エンジンといっても、様々なサービスがあります。日本で主要な検索エンジンはGoogle、Yahoo!、Bingです。それぞれに対策を立てなければならないのでしょうか。ここで、それぞれの国内シェアを見てみましょう。
WEBトラフィック分析サイトのStatcounter Global Statsによると、パソコンの検索エンジンシェアはGoogleが75.53%、Yahoo!が15.36%、Bingが8.47%です。この傾向はスマートフォンの検索エンジンシェアも同様で、Googleが75.35%、Yahoo!が23.91%、Bingが0.25%となっています。
GoogleとYahoo!で90%以上を占めていますが、SEOについて「Google用」「Yahoo!用」と分ける必要はありません。なぜならば、Yahoo!はGoogleと同じ考え方でサイトを評価し、検索順位を決めているためです。つまり、Google対策さえできていれば、SEOはほぼ万全と言っていいでしょう。
検索エンジン会社はウェブページの情報を整理している
世界中には数えきれないほどのウェブページがあります。Googleはどのようにして一つ一つ整理し、評価しているのでしょうか。ここで、Googleの「検索が情報を整理する仕組み」を見てみましょう。
Googleに限らず、検索エンジン運営会社は「クローラ」と呼ばれるシステムを持っており、そのクローラが世界中のウェブサイトのページ情報を自動的に収集しています。そのページの情報をキーワード(単語)ごとに精査し、「何が書かれているのか」を読み取ったうえでデータベース化されます。このデータベースを「インデックス」と呼びます。
これを本で例えると、一冊の本の一つ一つのページの内容を収集し、ページのキーワードを精査し、巻末の索引を作る作業のようなものでしょう。この作業を繰り返し、膨大な索引を作ることで、検索者が入力したキーワードに該当するページを表示できるようになるのです。
では、肝心の検索順位はどのような基準で決められているのでしょうか。その秘密はGoogleの「ウェブマスター向けガイドライン(品質に関するガイドライン)」と「検索品質評価ガイドライン」にあります。詳しくは「実践方法」で後述しますが、冒頭の「SEOの目的」でも取り上げた「ユーザーファーストのサイトかどうか」というところが大きな基準となっています。
実践方法
ここまで、SEOを実践するうえで身につけたい基礎知識を解説しました。ここからは実践方法について取り上げていきます。実践には細かい作業が伴いますが、ここでは基本的な流れを説明していきます。
Googleでは「検索エンジン最適化(SEO)スターター ガイド」を公開しています。今回ご紹介する流れを頭に入れた上で目を通しておくと理解が深まるでしょう。SEOのテクニックは無数にあります。ここを出発点として学んだり試行錯誤し続けたりすることが大切です。
検索者のニーズを考える
まずは、検索者のニーズを考えましょう。例えば「パン」というキーワード一つでも、様々なニーズが見えます。
「パン」について検索するときに、そのキーワードだけで検索する人は少数ではないでしょうか。「パン」の後に何かしらのキーワードが続くことが多いと思われます。例えば「パン 人気」ならば、人気のパン屋を探しているのかもしれません。あるいは「パン 作り方」ならば、自宅でパンを作りたいと考えているのでしょう。「パン 健康」ならば、パンの健康効果を知りたがっているのかもしれません。
このように検索者のニーズを考えることは、自社サイト内にどのようなコンテンツを用意すればいいか考えるヒントになります。
検索キーワードの「ニーズの量」と「競合性」を調査する
検索キーワードからコンテンツを考えるためには、チェックしておきたい項目が2つあります。それは「ニーズの量」と「競合性」です。
どれだけニッチな知識を詰め込んだコンテンツであっても、そもそも検索されなければ表示されることはありません。逆に誰もが知りたがっている、あるいは知っている情報を取り入れたコンテンツを用意しても、他の多くのサイトで取り上げている内容であれば競合が多いことになり、検索順位を上位にすることは難しいでしょう。
大切なのは「ニーズの量」と「競合性」のバランスを取ること。ほどほどニーズがあり、それほど競合も多くないキーワードを探すことが大切です。「ニーズの量」と「競合性」について調べられるツールがあります。ツールを活用しながら調べていきましょう。
サイトの専門テーマとサイトマップを作る
前述の通り、Googleはウェブサイトを細かく精査し、検索順位を決めています。Googleは専門性の高いサイトを評価する傾向があります。自社サイトの専門テーマを決めましょう。自社が様々な商品を取り扱っている場合、関連性の薄い商品は別々でサイトを構築した方が良いといえます。
テーマが決まった後は、サイトマップを作製しましょう。検索キーワードの調査をもとに用意するコンテンツを考え、関連性を考えて並べていきます。
コンテンツの質を良くする
前述の通り、Googleは「カスタマーファーストのサイト」を評価します。具体的にはコンテンツの専門性(Expertise)、権威性(Authoritativeness)、信頼性(Trustworthiness)を基準に評価します。このGoogleの評価基準をそれぞれの頭文字から取り、E-A-Tと呼びます。「自社サイトのコンテンツはユーザーが知りたがっている情報か」「専門性が高いものか」「信頼のできる情報を配信出来ているか」といった視点が重要です。
もちろん、誤字脱字や、読みにくい文章など、基本的なミスはご法度です。コンテンツの邪魔になるような過剰な広告も「カスタマーファーストでない」とみなされます。
さらに、「リンク」もSEOでは重要な要素となります。他サイトにしても、自社サイトの別のコンテンツにつながるにしても、リンクが多いコンテンツはユーザーが情報を得やすいコンテンツだと評価されます。逆に他サイトのコンテンツのリンク先に選ばれるほど、「信頼のできるサイト」とGoogleから認識されるでしょう。質の高いコンテンツを配信していれば、他サイトのリンク先として選ばれやすくなります。そのような意味でも、コンテンツの質を高めることは大切なのです。
振り返り改善する
「コンテンツマーケティング成功のためのチェックポイント」の記事でも振り返りの重要性は述べましたが、SEOにおいても振り返りは重要です。「自社のホームページはちゃんと発見されているか」「サイトに流入したユーザーが取ってほしい行動を実際に取ってくれているか」について定期的に振り返り、サイトの改善に努めましょう。振り返りを行う際はアクセス解析ツールを活用してください。
Googleの動向をチェックする
Googleはサイトの評価基準を絶えずアップデートしています。細かなアップデートは毎日行われており、そこまで気にする必要はありません。気を付けたいのが大規模な「コアアップデート」です。Googleの「ウェブマスター向け公式ブログ」ではコアアップデートが行われる際、前もってその内容が公表されます。ブログを定期的にチェックするようにしましょう。
コンテンツマーケティングとSEOはセットで考えよう
コンテンツマーケティング関連記事を配信している米国の「Content Marketing Institute」のSEOに関する記事では、SEOについて「コンテンツマーケティングの対立相手ではなく、パートナーとして考えよう」と述べています。コンテンツマーケティングは顧客目線の質の良いコンテンツを配信することが前提です。そのことはSEOで効果を挙げることにもつながります。自社サイトでコンテンツマーケティングを展開する際は、合わせてSEOについても考えていくことが重要なのです。