Content Marketing World 2019メインカンファレンス2日目朝のキーノートは、2セッションともストーリーテリングをテーマにしたものだった。個人的に印象的だったのが、最初に登場したエマソン・エレクトリック社のシニアバイスプレジデント・Kathy Button Bell氏のプレゼン。ストーリーが組織に対しいかにポジティブな変化を与えるのか、というテーマで、真摯な話ぶりと「世の中をよくしたい」という純粋な姿勢に心打たれた。その内容を紹介したい。
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ストーリーを通した組織変革
特にマーケティング業界におけるストーリーテリングとは、(チャネルにもよるが)認知の獲得や潜在顧客との関係性強化などに用いられる傾向にある。組織変革にもフォーカスした活用方法は、マーケティング畑の私としてはあまり馴染みがなかったため、新しい視座を与えられた気がした。
ストーリーを通した組織の変革に取り組んできたBell氏。組織はストーリーテラーではなく、人々(従業員)こそがストーリーテラーであるとの考えから、従業員にフォーカスした動画ストーリーテリングコンテンツを制作した。
従業員を一つにする
以下の図を見ていただければ分かるが、「設立125周年」「サイトオープン」といった各チャプターごとに、目的と(到達を目指す)目標を設定してある。エマソンほどの超グローバル企業ともなれば、業界は多岐にわたり、業種もさまざま。従業員を一つにすること、従業員に企業への愛着をもってもらうことも、ストーリーテリングの一つの目的となっているようだ。実際、紹介された動画は、従業員が本当に楽しく働いている様子を収めたもので、無関係の私でも「なんだかいい企業だな…」と感じてしまったほどだ。
「実はインターナルブランディングとしては、会社の歴史や従業員にフォーカスしたコンテンツは昔から東西を問わずよくあった」。日本から参加した日本SPセンターの村上氏は、Bell氏のプレゼン終了直後、私にこう教えてくれた。村上健太氏によると、社内の意識変革や士気を高める目的で、こうしたコンテンツを制作することは今も昔も一般的。ただし、質の高いストーリーテリングコンテンツを制作し、かつそれを対外的に出す「コンテンツマーケティング的」なアプローチをとるケースはほとんどないという。
対外的発信で従業員は愛着を持つ
対外的に発信することで、従業員はより企業への愛着が生まれるし、そこで働けることを誇りに思う。スタートアップでは日本でも時折見られる手法だが、企業規模が大きくなると確かにとたんに見られなくなる。企業名を連呼する、ストーリーのないCMが蔓延する日本においては、もっともっとこうした手法が浸透してほしいと感じた。それによりもっと誇りを持って仕事に取り組める日本人が増えるのではないだろうか。
何が起こるか予期できないことにあえて取り組もう。こう締めくくったBell氏。それにより、ポジティブな「何か」が起こるのだという。これは理由や数字がなければ前に進めないエンタープライズ企業に対する、愛のあるメッセージだと感じた。従業員のためのコンテンツマーケティング文脈のストーリーテリングについては、個人的にもう少し研究を進めたい。
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