コンテンツマーケティングに取り組むうえで、よく耳にする言葉が「ブランドジャーナリズム」です。一般企業がメディア企業のように振る舞うコンテンツマーケティングを考える上で押さえておきたいブランドジャーナリズムの考え方を解説します。

ブランドジャーナリズムの考え方

広告、ニュースに関わらず、かつての多くの企業にとってのPRは、新聞やテレビなど自社とは関係のないプラットフォームを利用することが一般的でした。ところが、ネット環境の発達によりSNSやオウンドメディアなど、あらゆる企業が自前のメディアを持つことが可能となります。多くの企業が主体的に情報発信できるようになっていくなか、「自社を報道する」という考え方が生まれ、ジャーナリズムの視点を取り入れたコンテンツを、自社プラットフォームで発信する動きが広まりました。これが、ブランドジャーナリズムの成り立ちです。

ブランドジャーナリズムが提唱し始められたのは、2004年ごろとされています。フランチャイズ展開における課題について、ブランドジャーナリズムの視点に立ったソリューションを提供している米国の「BRND JOURNALISTS」記事によると、同年にマクドナルドの最高マーケティング責任者であるLarry Light氏が新しいマーケティング手法としてブランドジャーナリズムを取り入れることを宣言したとのことです。

ジャーナリズム視点を取り入れるために心がけたいこと

では、コンテンツにジャーナリズム視点を取り入れるためには実際にどのようなことに心がければ良いのでしょか。米国のContent Marketing Instituteの記事「Want to be Trusted? Here’s a Crash Course in Brand Journalism」では、以下の4つのポイントが紹介されています。

1、情報の出所を明確に示す
2、客観的であることを心がける
3、読者のために書く
4、大人のように書く

1、2はコンテンツに客観性を与えるために心がけるべきことです。ジャーナリズム視点のあるコンテンツは、例え意見を表明するものであっても意見を補完するための客観的なデータや事実があります。客観性を持たせることで、人々はコンテンツの内容に納得し、信頼するのです。企業発信のコンテンツにありがちなのが、自社のことを良く見せたいあまりに自己中心的な情報で固められてしまうというケースです。

読者のために書くというのは、コンテンツマーケティングでも基本です。読者に寄り添ったコンテンツが求められます。「大人のように書く」というのは、文体を格式あるものにするということです。親しみやすさを演出するために口語体を用いるケースもありますが、ブランドジャーナリズムではコンテンツに信頼感をもたらすために落ち着いた表現方法を用います。

コンテンツマーケティングとの違いと期待される効果

ブランドジャーナリズムはコンテンツマーケティングと区別する考え方が欧米では一般的のようです。

マーケティングに関する情報を発信しているSarah Skerik氏の記事によると、コンテンツマーケティングとブランドジャーナリズムの違いは「意図される結果」の差にあるといいます。Sarah氏によると、ブランドジャーナリズムの目標は「ブランドの包括的なイメージを伝え、ブランドの認知度と親和性を構築するためにブランドストーリーをオーディエンスに伝える」ことだといいます。一方、コンテンツマーケティングの目標は、「カスタマージャーニーに沿ってオーディエンスをサポートし、自社に対するロイヤリティを育てるのに有用なコンテンツを公開することで行動に影響を与える」とのことです。すなわち、ブランドジャーナリズムはブランドを認知してもらい、愛着を持ってもらうことをゴールとしますが、コンテンツマーケティングは実際に自社サービスを購入してもらうことを目指しています。

Sarah氏は、二つは対立するものではないということも強調しています。カスタマージャーニーマップでイメージするとしたら、入り口の「認知」の前段階でブランドジャーナリズムを取り入れることで両者は共存できるでしょう。

続けて、Sarah氏はブランドジャーナリズムが社内コミュニケーションの促進やメディアへの売り込みにつながると主張しています。個人的には、これに加えて採用活動にも展開できるのではないかと考えています。客観的な視点が取り入れられたストーリーコンテンツは、マスメディアが取り上げやすいだけでなく、幅広い人々の信頼を得ることができます。

事例

ブランドジャーナリズムの典型的な事例がスターバックスの「STABUCKS STORIES & NEWS」でしょう。ここではスターバックスで働く人のストーリー、環境への取り組みなどを紹介しています。最近のニューストピックである「黒人差別問題」も取り上げ、スターバックスで働く黒人労働者の声も掲載しています。社会問題を取り上げることは難易度の高い手法ですが、時事問題と自社を絡める手法はお手本とすべき事例でしょう。

社会問題と絡めた記事を配信する「STABUCKS STORIES & NEWS」

Adobeでは、CMOというオウンドメディアを立ち上げています。デジタルに関するトピックについて、専門家が客観的なデータをもとに解説しています。直接自社のストーリーを取り上げたものではありませんが、客観性が担保され専門的な知見を生かしたコンテンツを自社オウンドメディアで配信しているという点においては、ブランドジャーナリズムの一つの形と言えるでしょう。

AdobeのCMO

コンテンツマーケティングとブランドジャーナリズムを使いこなそう

先述の通り、ブランドジャーナリズムとコンテンツマーケティングは対立することなく、それぞれの特徴を知ったうえで組み合わせて活用していくべき考え方です。それぞれで目指すべきゴールを設定し、オーディエンスの信頼を勝ち取っていきましょう。