コンテンツマーケティングには代表的な4つの型があります。その型とは「エデュケーショナル(教育)型」「ネイティブ広告型」「コンテンツSEO型」「面白コンテンツ型」です。今回は、その4つの特徴と事例、使い分け方について解説します。

エデュケーショナル(教育)型

エデュケーショナル(教育型)とは「見込み顧客(リード)が知りたがっていることに対して回答するコンテンツ」のことです。この型は自社の専門知識を生かすことができ、これからコンテンツマーケティングを始めようと考えている企業が取り組みやすい典型的な手法といえるでしょう。コンテンツマーケティングの基礎について解説した記事でも取り上げたコンテンツマーケティングの定義にある「顧客にとって価値があるコンテンツ」にも当てはまります。価値のある情報を発信し続けることで、リードの信頼を獲得していきます。自社の専門知識を生かした解説型のコンテンツとなるので、カスタマージャーニーマップでいえば「認知」の段階で大きな効果を発揮するでしょう。

事例

コンテンツマーケティングの典型例とだけあって、事例は豊富です。例えばBtoBであれば、電機メーカーのパナソニックが制御機器についてのオウンドメディアを立ち上げています。コンテンツは用語解説からホワイトペーパーまで各種そろえています。ここまで揃えるのは難しいかもしれませんが、「このサイトに行けば〇〇についてほとんど分かる」とリードに思わせるのが理想です。

BtoCにも多くの例があります。例えば、住宅メーカーの積水ハウスのオウンドメディアでは、家づくりを検討するにあたって役立つコンテンツを配信しています。ここで特徴的なのは、「大掃除」や「熱中症対策」など、家づくりと関係のなさそうなコンテンツも配信している点です。しかし、一貫しているのは「お役立ち情報」という点です。それも「家づくりを考える世代」に向けた記事ということが分かります。このように、しっかりとペルソナを設定すれば、商品に直接関連するものでないお役立ちコンテンツを作ることもできます。

ネイティブ広告型

ネイティブ広告型とは「自社でない他のメディア媒体に掲載する一つのコンテンツのような自然な形の広告」のことです。オウンドメディアのマネタイズの記事でもご紹介した「インフィード広告」がこれにあたります。また、検索結果の上位に「広告」と表示されたうえで表示される「リスティング広告」や、SNS上で表示される広告、他社メディアで表示される記事広告も同様です。

もし広告が掲載されるメディアがコンテンツの想定するペルソナに合致していれば、そこをきっかけに自社のオウンドメディアや商品の購入に至ります。そのような意味では「認知」のきっかけとなるでしょう。しかし、広告のコンテンツはもちろん、流入先コンテンツの中身もしっかりしたものでないと、せっかく他社メディアから流入してきたユーザーからの信頼を得られません。ネイティブ広告型を用いる際はコンテンツの質に注意しましょう。

事例

ビジネス情報を発信する「東洋経済ONLINE」には、あらゆる企業が記事広告を配信しています。例えば、空調事業を展開する「ダイキン工業」の記事広告「『オフィスの換気』知っておきたい5ポイント」では、オフィスの空調をテーマに空気の専門家「空気ドクター」と呼ばれる社員へのインタビューで同社の技術を伝えています。記事の最後には、空気・換気についての相談窓口の電話番号が記載されている同社ホームページのリンクが設置されています。

ここで注目するべきポイントは、記事広告が東洋経済ONLINEのテイストに合わせられていること、記事のテーマに沿った流入先がきちんと設置されていることです。このようにしっかりと設計された記事広告を見て問い合わせた顧客は、会社について理解を深めた上で問い合わせてくるため、その後の案内がスムーズに進む可能性が高くなります。

コンテンツSEO型

コンテンツSEOとは、「検索エンジンからの流入を狙い、SEOを意識して作られたコンテンツ」のことです。SEOについては、「SEO(検索エンジン最適化)とは? コンテンツマーケティングに取り組むうえで押さえておきたい基本」をご覧ください。コンテンツSEO型では、検索キーワードからコンテンツを考えます。

もちろん、前述のエデュケーショナル型でもSEOは意識されますが、この型は認知段階で大きな効果を発揮するため、認知段階以外ではSEOを重視しません。その点、コンテンツSEO型では認知段階以降の「情報収集」「比較検討」「購入」段階でもSEOを意識します。認知段階以降のコンテンツをコンテンツSEO型にすることで、流入経緯を増やすことができるでしょう。

SEOについて解説した記事でも取り上げましたが、検索キーワードの「ニーズの量」と「競合性」については調査しておく必要があります。ニッチなキーワードを選べば他社コンテンツとの競合性は低くなりますが、「そもそもこのキーワードは調べられているのか」と立ち止まって考えることが重要です。もちろん、適切なキーワードを見つけても、自社で取り扱っていないサービスについて取り上げたコンテンツはご法度です。また、Googleはコンテンツの質を重要視して検索順位を決めていることから、質が低いコンテンツを用意するのも避けましょう。

面白コンテンツ型

面白コンテンツ型とはその名の通り、「人の関心を惹くようなコンテンツ」のことです。「面白い」と感じるのは人それぞれ違うため難易度の高い型ですが、ひとたびはまれば爆発的な効果を発揮します。

面白コンテンツ型の利点は「企業や商品・サービスの認知度を高める効果がある」ということ。もともと自社に興味がなかった人の目に触れる可能性もあるため、想定していた見込み客以外にもコンテンツが届く可能性があります。一方で、コンテンツを見たすべての人が購買行動を取るわけではないといえます。面白コンテンツを配信する際は知名度の向上を主眼に置きつつ、見込み客がコンテンツを見た後に問い合わせなど、購買に結び付く行動を取ってもらうよう、CTA(Call to action)は明確にしておきましょう。また、コンテンツが拡散されるよう、SNSを活用しましょう。

事例

コンテンツといえば記事や動画を連想される方も多いかもしれませんが、セミナーなどのイベントも一つのコンテンツいえます。

2016年に「大ベンチャー展」というオフィス仲介会社などが共催するイベントが行われました。面白コンテンツと聞くと、「突拍子のないコンテンツ」というイメージを持たれるかもしれませんが、このイベントは明確にコンテンツのゴールとペルソナが設定されていました。ペルソナは「オフィス移転を考えているベンチャー企業の責任者」、ゴールは「オフィス仲介会社の知名度を上げること」です。

イベントではベンチャー企業家によるトークセッションも行われましたが、オフィス仲介会社のイベントにもかかわらず、オフィス移転の失敗談が語られるなどされたようです。また、展示スペースもあり、よく見かける人類進化図をモチーフとした「ベンチャーの進化図」など、一風変わった展示品(コンテンツ)が用意されていました。

このように、大ベンチャー展はベンチャー企業家の興味を引くようなコンテンツが大量に用意されているイベントだったようです。突拍子が無いように見えて、しっかり作りこまれているイベントだったといえるでしょう。

4つの型の使い分け方

今回見てきたようにコンテンツマーケティングには大きく分けて4つの型がありますが、重要なのは「コンテンツを発信する目的を明確にすること」、そして「目的に合わせてコンテンツの型を使い分けること」です。

前述の通り、一気に知名度向上を狙うのであれば面白コンテンツ型を採用するのもよいでしょう。しかし、面白コンテンツ型は一過性のものに終わる可能性も高いため、「時間がかかってもいいから継続的に知名度を高めていきたい」というのであればコンテンツSEO型を考えても良いかもしれません。また、「新商品を開発したけど、自社のこれまでの商品と性質が違い、自社で確保している見込み顧客が振り向きそうもない」ということであれば、新たな見込み顧客発掘のため他社メディアにコンテンツを配信するネイティブ広告型を検討するのも良いです。「自社の信頼度を高めたい」ということであれば、エデュケーショナル型のコンテンツを用意すると良いでしょう。

いずれにせよ、それぞれの型の特徴を押さえ、コンテンツの狙いに沿って使い分けていくべきです。コンテンツを作るのには大きな労力がかかります。目的があやふやなコンテンツの「無駄打ち」を極力防ぎましょう。