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書籍シリーズ『コンテンツマーケティング最前線』(クマベイス出版)第2弾、「コンテンツ制作の極意」出版を記念したトークイベントが3月26日、東京都渋谷区のブックカフェ「BOOK LAB TOKYO」で開かれました。イベントには、本書に登場する「セーラー服おじさん」こと小林秀章、SUUMOタウン編集デスクの岡武樹、アーティスト・ヌケメの3氏が、特別ゲストとして登壇。人々に支持されるコンテンツの条件や、記事コンテンツ制作の極意などについて、株式会社クマベイス代表取締役CEOの田中森士と語りました。本稿では、イベント内のパネルディスカッションの様子をレポートします。
何のためにコンテンツ制作をしているのか
パネルディスカッションの一つ目の題目は、「何のためにコンテンツ制作をしているのか」というもの。マーケティングとコンテンツ制作は、切っても切れない関係にあります。登壇した3人は、どういった目的でコンテンツ制作にあたっているのでしょうか。
岡氏は、SUUMOという不動産情報サイトを見る人は、引っ越しや家探しを目的としている人がほとんどであると前置きした上で、「その前段階の場として、SUUMOタウンで『街』に焦点をおいたコンテンツを提供し、潜在読者数を増やすため」だと明かしました。
アーティストであるヌケメ氏は、コンテンツを生み出すことが目的ではなく、コンテンツに触れた人に何か気づきを与えることが目的だと強調。問題解決のためではなく、課題を提示するためにコンテンツ制作をしていると述べました。
自身がコンテンツであるとも言える小林氏は、そもそも「何のために」という目的部分を強調してコンテンツを提供すべきではないと指摘。コンテンツは「見えない価値」こそが大事であり、経済効果に直接反映されないものでも、お金に換算されない何らかのものを提供できた感覚さえあればいいのではないか、と自身の考えを述べました。
小林氏のこの考えに、他の2人も同調。岡氏は、メディアやブランドのイメージが良くなったと言われると、それが利益に直結していなくとも、コンテンツを制作する意義にはなるではないかと訴えました。
良質なコンテンツとは
続いての題目は、「良質なコンテンツとは」。立場によっても異なり、また、哲学的とも思えるこの問いに、3人は明確な答えを用意していました。
小林氏は、良質なコンテンツの条件として、「面白い」「役に立つ」の項目を列挙。その上で「コンテンツが面白いと人はファンになる。マーケティング臭のしないという点も重要だ」と指摘しました。
ヌケメ氏は、「くだらなさを突き詰めれば良質なコンテンツとなる」と、自身の考えを披露。「つまんないけどずっと見ちゃうコンテンツ」には確かな需要が存在すると断言しました。
岡氏は、「素人っぽさのあるリアルで生々しいコンテンツこそ良質なコンテンツではないか」と強調。定型的なコンテンツが蔓延していることを念頭に、「美しい完璧すぎるものはつまらないのでは」と問題提起しました。
ペルソナ設定をどう考えるべきか
コンテンツマーケティングにおいて、欠かせないペルソナ設定。登壇した3人は、意識しているのでしょうか。
岡氏は、ざっくりとしたペルソナはあるものの、記事を書くライター自身がペルソナという風に決めている、と自身の方針について説明。「ライターが書きたいものを楽しんで書いてもらったほうが、結果的に良いコンテンツになる」と、自身の経験に基づいたメソッドを披露しました。
ヌケメ氏は、自分のコンテンツがこういう人に届くだろうというのを考えることは少ないとした上で、「耕されてない土地を探して、そこをずっと耕している感じ」と述べました。
小林氏は、自らがコンテンツと呼べる存在です。したがって、「自分に会いに来た人がペルソナ。毎日ペルソナが変わるし、訪れる国によってもペルソナは変わってくる」との見方を示しました。
コンテンツ制作のワークフロー
コンテンツ制作のワークフローに悩むオウンドメディア運営者は多く存在します。3人は、どのようなワークフローで取り組んでいるのでしょうか。
岡氏は、制作の流れを固めて関係者だけで会議するのではなく、ライターとの密なやり取りを重視していると明かしました。
ヌケメ氏は、まずは興味のあるものをリサーチし、世の中に存在しないものを見つけてから制作に入ると述べました。作品制作におけるリサーチの比重は、7割を占めるといいます。
小林氏は、気がついたら自身がコンテンツとなっていたと告白。ただ、自らをコンテンツとして使ってくれる人はワークフローを持ち合わせており、そのセンスで良質なコンテンツとなるか否かが決まってくるのではないか、と分析しました。
コンテンツ制作の極意とは
パネルディスカッションの締めくくりは、「コンテンツ制作の極意とは」というお題目。3人とも、端的にまとめてくださいました。
岡氏は、コンテンツ制作の極意は、そもそも人によって答えが異なるため、これが極意だと決めつけず、常に探求心を忘れないことこそが極意であると強調しました。
ヌケメ氏は、「リアリティがあること」と一言。受け手が具体的に何かしら想像できるコンテンツを目指すことこそ、極意であると訴えました。
小林氏は、下心がないことの重要性について強調。受け手に対して親身になること。受け手のことを想像すること。これらがコンテンツ制作の極意であると指摘しました。
熱量の伝わるリアルなコンテンツを
今回のトークイベントでは、読者に美しいコンテンツを提供するよりも、コンテンツ自体の「リアルさ」や「生々しさ」を発信できるところに価値があるなど、コンテンツマーケティング業界ではなかなか聞けない考えが提示されました。テクニカルな部分に力を入れるのではなく、熱量の伝わるような、リアルなコンテンツが求められる時代に突入したのだと、強く感じます。時代の転換点を感じさせるような、イベントとなりました。
<書籍情報>
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