「質の良いコンテンツ」とはどんなコンテンツを指すのでしょうか。もちろん、一言では表せません。ただ、一定の判断基準は確実に存在します。

クマベイスでコンテンツ制作のお手伝いをさせていただく際、おおまかに以下のポイントでコンテンツの良し悪しを判断しています。

・ペルソナを定め、そのペルソナに向けた内容になっているか
・ペルソナの情報ニーズにきちんと応えているか
・コンテンツの届け方について、「いつどこでどうやって」が適切であるか
・文章やデザインがトンマナに合っているか
・世の中にとって役立つ内容となっているか
・メンテナンスされているか
・適切なコストをかけているか

各項目について解説していきます。

誰に対して(ペルソナ)を定め、その人に向けた内容になっているか

マーケティングの基本であるペルソナですが、細かくきちんと定められているケースは思いのほか多くありません。なんとなく大きなユーザーグループをターゲットとして設定してしまい、「人にメッセージを届ける」という本質が抜けてしまっているパターンが多いように思います。

しっかりとペルソナを詳細に定めることで、「○○さん(ペルソナの名前)はコンテンツを読んでどう思い、どう行動するだろうか」と、想像がより具体的になります。

例えば「忙しい立ち仕事の個人事業主」がペルソナなのに対し、記事の仕上がりが1万文字を超えてしまったとします。スマホで読む想定の記事を、忙しい個人事業主が立ったまま果たして最後まで読むでしょうか?

コンテンツ制作のご相談をいただく方は、多くのケースでターゲットを大きく設定し、ページやサイトへの流入を多くすることを目的としています。たった一人のペルソナ(と同じ属性に当てはまる複数の見込み顧客)にメッセージを届けるほうがコンバージョンに近づきやすいことは、弊社のメルマガなどでコンテンツマーケティングを学んでいる皆様はご存じの通りでしょう。

むやみにキーワードや文字数、記事本数を増やして入口を広げても、大量の離脱を生みかねません。ペルソナに正しくメッセージを伝えることに注力しましょう。

ペルソナの欲しい情報、必要な情報にきちんと答えているか

正しいペルソナを設定し、そのペルソナのために情報を発信することが、コンテンツ制作の本来の目的です。

しかし、制作時に「制作側の発信したいこと」にばかり重きを置いてしまい、ペルソナの欲しい情報や必要な情報が盛り込まれているかの検討が後回しになっていることがよくあります。これでは何のためにコンテンツを制作しているのかがわかりません。

「制作側の発信したいこと」は<関連するキーワードをなるべく多く解説して検索流入を占有する(したい)>と<自社製品やサービスの宣伝につなげる(つなげたい)>に大別されます。設定したペルソナは、この2つの情報が本当に欲しいか冷静に検討する必要がありますが、検討のステップを飛ばして制作に取り掛かっているケースが多いのです。

コンテンツ制作において企画書や構成書を作成する時点で、ペルソナの欲しい情報とこちらから発信したい情報はわけて考えなければなりません。もちろん、ペルソナの欲しい情報を優先し、コンテンツを組み立てていくべきです。

キーワードを取るべく記事を量産する方法では、ペルソナの欲しい情報の検討が二の次になってしまいます。もしくは、全く検討されないケースも発生してしまうでしょう。検索キーワードから流入を増やしたい気持ちはわかりますが、まず考えるべきなのは、ペルソナの欲しい情報がそのコンテンツできちんと得られるのかどうかです。そもそも、まだ製品やサービスを検討する段階でないペルソナの場合は、いきなり自社製品やサービスを宣伝されても見向きもしてくれないでしょう。

コンテンツの届け方(ディストリビューション)が適切である

ペルソナを具体的に、詳細に設定することで、コンテンツを届けるタイミングや届け方の検討もしやすくなります。ペルソナがよく利用する媒体やメディアについて想像がしやすいためです。

ここまで取り上げてきた「記事コンテンツ」のほか、例えばオフラインのイベントやチラシなどもコンテンツに含みます。ペルソナによっては、オンラインコンテンツよりもオフラインコンテンツのほうが効果的な場合もあります。

スマートフォンやパソコン、インターネットを普段使わないようなペルソナには、記事コンテンツをいくら量産しても目に触れない可能性が高いでしょう。したがって、ペルソナの身の回りの媒体から洗い出す必要があります。新聞広告やポストに届けるDM、時にはイベント開催、期間を絞ったテレビ・ラジオコマーシャルなどです。

オンラインでコンテンツを届ける場合は、オフラインよりも時間や場所を指定してピンポイントで配信することが可能です。例えば、メールマガジンやニュースレターは、スマートフォンやタブレットを片手に休憩するお昼前後に見てもらいやすいでしょう。通勤時間もメールチェックする人は多く、目にしてもらいやすい時間帯だといえます。

配信方法を検討するにも、とにかくまずはペルソナ次第。そこにペルソナがなければ、届ける情報もその届け方もわかりません。リソースや制作側の発信したい情報ありきで手を動かすと、的外れな施策になってしまう可能性が高くなります。

いくら良いコンテンツを制作しても発信する媒体や時間が外れていては、正しく届けることはできません。

トンマナが合っており正しい文章を使用している

正しいペルソナを設定でき、しっかりとペルソナの欲しい・必要な情報をコンテンツにそろえたとしましょう。しかしながら、仮にペルソナに届きやすい方法や媒体で準備できても、ペルソナが読みづらい文章であっては台無しです。ペルソナに対してトンマナがあっていない文章は、内容が優れていても離脱を促してしまう可能性があります。

トンマナとはトーン(tone)&マナー(manner)の略称です。デザインを揃えるという意味で使われることが多いですが、文章においては「口調」や「書きぶり」などと表現されています。

例えば、オウンドメディアで考えてみましょう。「ペルソナが親しみやすい、もしくは信頼してくれるようなデザインやフォントを選択する」「若者向けの文章であれば口調が堅くなりすぎないように注意する」。トンマナはこのようなことを検討します。例えば、医師や薬剤師など、士業の方が発信するコンテンツなどにおいて、あまりにもくだけた口調は、なかなか受け入れられないでしょう。漢字とひらがなの使い分け、記号(!や?)、顔文字の使用など、ペルソナがコンテンツに触れたときどのように感じるかを意識して使用することが大切です。

トンマナを統一するだけでなく、もちろん正しい日本語を使うべきです。内容がペルソナに寄り添った素晴らしいものでも、間違った日本語や誤字脱字が散見されるようでは、ペルソナが内容に集中できなくなってしまいます。また、その記事やメディアの信用度も落ちてしまうでしょう。特に多くの人の目に触れるものであれば、制作者本人以外にも複数の目で確認してください。

社会性があり、役立つ内容となっている

制作したコンテンツを例えばオウンドメディアに公開すれば、削除するまで基本的に掲載され続けます。

一般的にウェブメディアの場合、公開したばかりのものはよく読まれますが、古いものになればなるほど読まれなくなっていきます。しかし、社会性があり、ペルソナにとって役立つコンテンツはいつまでも読み続けられます。前者はフロー型、後者はストック型といえるでしょう。事業会社は後者を目指すべきです。

社会性のあるコンテンツとは、発信側の発信したい情報のみを一方的に出すものではありません。ペルソナはもちろん、結果的に社会全体の役に立つものです。

内容は裏付けのとれた状態で正しいことが前提で、制作に倫理的な視点も必要です。人がコンテンツを目にしたときに不快な思いをすることを避けることはもちろんですが、さらっと読み終えてしまうだけでなく、何かを得たと思わせる、考えさせるようなコンテンツが望ましいででしょう。

世の中は情報であふれています。読者に「時間の無駄だった」「なにも役立たなかった」と思わせていては、手間をかけて制作したとしても意味がありません。情報が豊富で役に立つかつ、その先を考えてみたくなるようなコンテンツを企業が責任をもって発信することが重要です。

これらが実践できている企業は、思いのほか少ないもの。しっかり継続的に実践できれば、優良コンテンツを発信する企業として認識してもらえます。いわゆるソートリーダーを目指すためにも、ぜひ心がけてみてください。

メンテナンスされている

本稿では、「コンテンツは大量に作れば作るほどよい」という考えは誤っていると主張しています。大量のコンテンツを制作するデメリットの一つとして、コンテンツのメンテナンスが行き届かないことが挙げられます。

古いコンテンツはだんだんと読まれなくなる傾向にはありますが、古い情報のままにしておくことは危険です。ユーザーがそのコンテンツに触れた際、メディアや運営企業の信用を落とす可能性すらあります。当時は正しい情報を記載していても、状況が変わってしまった今では、誤った情報となっている可能性があります。また、制作当時と現在ではコンテンツを受け取る側の価値観、倫理観が変化しているかもしれません。

新しくコンテンツを公開するタイミングで関連するカテゴリーの記事を見返し、古い情報があれば更新していく方法が良いでしょう。また、かぶっている内容が見つかったら記事をマージ(複数記事を統合)したり再編集したりして、可能な範囲で細かくメンテナンスすることをおすすめします。

そもそも、同じメディアに似たような記事が乱立していては、読み手にとって親切とはいえません。記事を量産することだけでなく、流入した後にユーザーにどう行動してもらいたいかを念頭において設計企画してほしいと切に願います。

適切なコストをかけている

コンテンツを制作するには、内製であれ外注であれ多少のコストがかかります。コストは多すぎても少なすぎてもいけません。

ペルソナを設定し企画に正しい情報を盛り込んで、きちんと役立つ内容になっているかを確認できたとします。しかし、制作費が少なすぎる場合、企画通りに全て制作しきれない可能性があります。

記事コンテンツであればライターに、デザインの必要なコンテンツであればデザイナーに適切な報酬を払い、必要な時間をきちんとかけて制作に取り組んでもらうことが重要です。無理に低価格で制作しようとすると、企画通りにいかないものが必ず出てきてしまいます。

制作の際は企画について理解できており、かつ必要な技術を持ち合わせたライターさん、デザイナーさんを選ぶようにしたいもの。したがって、必ず適切な報酬を準備し、当初の企画に対応できる体制を整えましょう。

一方、コストを過剰にかけすぎてしまうパターンもあります。コンテンツ制作の前提に、コンテンツマーケティング、コンテンツ戦略があります。短期的に効果が出やすい広告とは違い、コンテンツマーケティングによる施策は金額的効果がすぐに表れませんし、目に見えづらいところで効果を発揮するものでもあります。簡単に測れないからこそ、コストは適切に設定すべきなのです。

コンテンツマーケティングの費用対効果の測定は難しいもの。だからこそ、すぐに見向きもされなくなるコンテンツを低コスト・多工数で大量に制作するよりも、長期的に見ても有用な質の高いコンテンツを丁寧に作っていきましょう。

まとめ

本稿でご紹介した判断基準について、コンテンツを制作する側(内製なら制作者、外注なら受託した制作会社と発注した企業の双方)も、受け取る消費者側も知っておくべきだと考えています。制作側で基準を理解できておらず、低品質なコンテンツを世の中に出し続けても、コンテンツマーケティングのメリットを十分に享受できません。また、社会にとって利益を生まないコンテンツが増えてしまい、コンテンツの消費者に不利益を与えてしまうことにもつながりかねません。コンテンツの制作側は、もっと危機感を持つべきでしょう。

コンテンツを消費する側がコンテンツの良し悪しを見抜けず、低品質なコンテンツから誤った情報を受け取ってしまう昨今の状況。先述の通り、制作側で「良いコンテンツ」を理解できていないことが悪いのですが、コンテンツが溢れている世の中では、消費者が低品質コンテンツから自衛することも大切です。本稿の7つのポイントをもとに、低品質なコンテンツが減っていくことを心より願っています。