プレスリリースは、マスメディア向けに自社や自団体の取り組みについて伝える文書です。受け取った記者が「ニュースバリューがある」と判断した場合、メディアで取り上げてくれるかもしれません。記者に向けた文書であるため、作成の際はチラシなどの宣伝目的の文書とは違った視点が求められます。この記事では、プレスリリースを作成する際の心構えや作成方法、配信方法を解説します。

プレスリリースはどんな規模の企業でも配信するべき

皆さんはプレスリリースと聞いてどのような印象を持つでしょうか。「大企業が配信するもの」「自社に取り上げるべきニュースはない」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、プレスリリースは企業の規模を問わず配信すべきものです。むしろ、広告費用を大きくかけられない中小企業こそ積極的に配信した方がよいでしょう。その理由について、以下に解説していきます。

プレスリリースを配信するメリット

プレスリリースのメリットを見ていきます。

  • 広告費用を大きくかけず宣伝できる

出稿すれば確実にどこかで掲載される広告と違い、プレスリリースは配信したからといって必ず取り上げられるものではありません。しかし、目に見えてかかる最小限の費用といえば、リリースの印刷代ぐらいです。つまり、小さい費用で広く宣伝できる可能性を秘めているということになります。

  • 第三者が紹介することで信頼性が増す

プレスリリースの最大の強みといえるのは、第三者が自社のことを取り上げることで、世間から信頼性のある情報と認識してもらえることです。本人が「自分はこんなにすごい人だ」と主張するよりも、第三者から「彼(彼女)はすごい人だ」と紹介されるほうが、その人の信頼性が増します。

昨今、マスメディアの信頼性は低下してきたといわれることも多いですが、依然としてテレビや新聞、ラジオの信頼性は高いもの。令和元年(2019年)版情報通信白書によると、メディア別信頼度は新聞が68.7%、テレビが63.6%と高い数値を誇っています。プレスリリースは一つの「宣伝方法」として積極的に活用すべきものなのです。

プレスリリースを作成する上で意識すべき「社会性」

プレスリリースを作成する上で意識すべきことは、内容に「社会性」や「公共性」があるかということです。

いくら自社が伝えたいことをリリース内に詰め込んでも、ただの宣伝であればマスメディアは見向きもしません。自社の新サービスや新商品、取り組みを宣伝する際に「新サービス、新商品、取り組みによって社会にどのような影響を与えるか」、あるいは「どんな社会的背景があって新サービス、新商品、取り組みが生まれたのか」といった視点を持ってリリースを作る必要があります。

例えば、筆者の新聞記者時代の経験ですが、ある清掃業者が「女性だけのチームを作った」「ピンク色のゴミ収集車を導入した」というリリースを配信していました。この業者のリリースで優れていた部分は、「業界的に男性の比率が高く、イメージを刷新したかった」という点を強調していたことです。ここから建設業など、男性比率が高い業界をいくつかピックアップし、「男性比率が高い業界への女性の進出」というテーマで少し長めの記事を作ることができました。このように、一つの事柄に社会的な意味合いを持たせることで取り上げてもらう可能性が高まるのです。

プレスリリースのひな型、書き方

プレスリリースはどのように作成していけばよいでしょうか。下図は作成のひな型になります。伝える内容でレイアウトは多少変わると思いますが、基本の形として参考にしてみてください。

プレスリリースを作る際のポイントは「短く、分かりやすく」「余計な要素は削る」ということです。

  • タイトル

タイトルはなるべく短くしましょう。長くても30字が限度です(プレスリリース配信先の媒体にもよる)。もっと詳しく書きこみたい場合はサブタイトルに入れましょう。このタイトルとサブタイトルで「何をするのか(新商品を販売するのか、新しい取り組みを始めたのか)」「ニュースバリューは何か」ということを伝えなければなりません。「そのまま新聞の見出しにできそうか」という点を意識してください。

  • リード

リードでは、リリース全体で何を伝えたいかを端的に書きます。長くなりすぎず、目安は180字以内ぐらいで書くのがよいでしょう。「なぜ新商品を開発したか」「なぜ取り組みを始めたか」「どういう社会的影響を狙っているか」など、話題の核となる部分を盛り込みましょう。そのまま新聞のリード文に流用できるレベルまで書き込むことが理想です。

  • 小見出し

小見出しでは、リリースで伝えたい内容を具体的に書いていきます。イベントであれば日付や場所などを書き込みます。サービスであれば、どのようなサービスが具体的に説明していきます。あまり文章的になりすぎないよう、箇条書きにして列挙するようにするとよいでしょう。

  • 画像

プレスリリースに画像は必須です。画像があることで記者は具体的にどんな内容か理解することができます。新商品であれば商品の写真、イベントであればイメージ図でもよいので、何かしらの画像を載せましょう。画像はそのまま新聞に載せられそうな画像だと、なおよいでしょう。ある程度の画素数を確保するとともに、新聞記事でよく見られる構図の写真を選定してください。

プレスリリースの配信方法

プレスリリースの配信方法は「新聞社やテレビ局に直接投げ込む」「記者クラブへの投げ込み」「プレスリリース配信代行サービスで配信する」といった方法があります。配信代行サービスでの配信は大きな手間がかからないことが利点ですが、記者経験時代を振り返ると、ここだけの話あまり参考にしたことはありません。ネット上に掲載できるため広い範囲に情報を伝えられる可能性はありますが、効果は限定的ではないかと個人的には思います。

手間はかかりますが、取り上げてもらえる確率が高いのは、新聞社やテレビ局、記者クラブに投げ込むことではないかと思います。「忙しくて見向きもしてくれないのではないか」と気が引けてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、記者は日々ニュースを求めています。新聞記者でいえば1日1本は原稿を書きたいものですので、書き方や問い合わせのポイントさえおさえれば決して迷惑になることはありません。

  • 新聞社やテレビ局に直接投げ込む

新聞社にプレスリリースを送りたい場合は、本社ではなく総局や支局に送るのが一般的です。自社に一番近い支局はどこか探しましょう。各社のホームページに総局・支局の電話番号やファクス番号、メールアドレスが書いてあります。まずは電話を入れてプレスリリースを送りたい旨、簡単な内容を伝え、その後ファクスやメールで送りましょう。テレビ局の場合も代表番号などに電話を入れ、プレスリリースを送りたい旨を伝えましょう。

送る際は時間帯にも気を付けたほうが良いでしょう。新聞社の場合は編集作業の時間帯は避けるべきです。夕刊を発行している新聞社であれば午前11時~午後2時、朝刊のみを発行している新聞社の場合、夜を避けたほうが無難でしょう。

  • 記者クラブへの投げ込み

市役所や警察署には、記者クラブという各社の記者による組織があります。そして市役所にはほぼ全て、規模の大きい警察署には記者が使う記者室があります。記者クラブへの投げ込みは、一般的には自社がある市役所の記者室にリリースを届けることになります。市役所の代表電話に電話をかけ、プレスリリースを投げ込みたい旨を伝えましょう。広報課、あるいは記者クラブに電話をつなげてくれるため、プレスリリースの内容を簡単に伝え、何部必要か、いつ持ち込めばよいか、誰に渡せばよいか確認しましょう。

記者クラブを取り仕切っている幹事社は、交代制で各社が担当を持ちまわっています。記者クラブに電話を回してくれた場合は、幹事社の記者が応対することになります。しかし、記者は普段は取材で外に出ていることが多いだけでなく、いくつか自治体を掛け持ちして担当しているため、あまり記者クラブにいません。そのため、広報課が対応することもあります。プレスリリースを受け取った担当職員が各社の机にプレスリリースを置くケースもあるでしょうし、プレスリリースを置く場所が設けられており、そこに置いていくケースもあるでしょう。

大前提として、新聞社に送る場合も記者クラブに投げ込む場合も、ニュースバリューが小さいプレスリリースは単なるノイズとなってしまいます。新聞に掲載されると確信している場合のみ実施することを強くおすすめします。

プレスリリースはメディアの目線に立って作ろう

プレスリリースの一番の理想は、「プレスリリースを見れば記事が書けるというレベルまで作りこむ」ということです。そのため、「どこがニュースなのか」をメディアの目線に立って考える必要があります。普段のニュースでは、なぜこの話題がニュースとして取り上げられているのかという視点で見ていくことでリリースの作り方が見えてくるでしょう。

クマベイスのプレスリリース制作サービスでは、元新聞記者のスタッフがヒアリングと政策を行います。配信経路の簡単なアドバイスも行うため、効率的にリリースを配信できます。プレスリリース配信をご検討の方は、ぜひご相談ください。