新型コロナウィルス感染拡大の影響により、営業の多くの場面でインサイドセールスが活躍する世の中となりました。インサイドセールスは正しく取り組めばメリットの多い営業手法ですが、あわてて導入したり、導入しっぱなしにしたりしてしまうと効果を十分に発揮することができません。今回は企業がインサイドセールスを導入する上でみられる失敗例を、導入時と運用時に分けて説明していきます。
インサイドセールス導入時の失敗例
様々なメディアでインサイドセールスについてよく目にするようになりましたが、「良いものだ」と飛びついて勢いのみで導入するのは望ましくありません。勢いで導入してしまった場合によく見られる失敗は、次の5つが挙げられます。
営業全体のどこに組み込むかを固めていない
インサイドセールスはその名の通りセールス(営業)なのですが、リード獲得から契約まで幅広い顧客フェーズで様々な活動を行います。企業によって「降りてきたリードをナーチャリングする」「フィールドセールスに質の高い訪問アポをとる」「クロージングまで全部対応してしまう」と活躍の場面が異なるため、自社のスタイルと方針にあった役割を与えることが必要です。役割が不明確なままとりあえずチームだけを作ってしまった場合、マーケティング、営業全体を混乱させてしまうことになるでしょう。
導入しっぱなしでトレーニングやチューニングを行わない
導入後、従来の営業と同じような研修を行ったのみでいきなり実践しても、思ったように成果が上がらないといった状況が予想されます。また、しばらく運用したあとは必ず振り返りが必要ですが、「立てた目標に対して数字が達成しているか、していないか」のみの反省となりがちです。もちろん数字の進捗も重要ですが、インサイドセールスとして活動してみての営業側・顧客側の感触の共有が重要です。「量的データ」だけでなく「質的データ」や感触について重点的に話し合う時間を設けてください。
組織として方針が立てられず、個人の判断に任せすぎてしまう
日々インサイドセールスとして営業をしていくなかで、さまざまな確度の顧客と接することになります。リードの発生元や初回架電で話してみた感触から、確度が明らかに低い場合は「休眠リストに入れるかMAからのメール配信のみの対応に回す」ことが多いと思います。しかし、このような「低確度なリードへの今後の対応」を組織全体でしっかりと方針づけることができておらず、個人の判断に丸投げしている場合、営業効率を上げることはできません。個人の判断でいつまでもその低確度リードの対応を続けることは、よく起こります。この場合、高確度のリードへの対応に手が回らなくなる可能性があります。
非現実的/意味のない目標を立ててしまう
フィールドセールスもインサイドセールスも、目標を立てて活動することが重要ですが、インサイドセールスの活動が理解されないままに、フィットしない目標を無理やり立てては意味がありません。例えば架電可能な顧客リストは100件しかないのに、「今月はフィールドセールスのほうで厳しそうだからインサイドセールスであと80件!」のような無謀な目標は逆効果です。
インサイドセールスの目標の立て方は以前こちらで解説いたしました。
(関連記事)インサイドセールスのKPI 正しい設定方法と注意点
インサイドセールス運用時の失敗例
続いては、無事に導入できたインサイドセールスチームの運用時における失敗例をご紹介していきます。
インサイドセールスチームのリーダーに全権委任されていない
インサイドセールスは日常の営業の中での気づきや社会情勢により、オペレーションに細かなチューニングが頻繁に発生するのが特徴です。この「細かなチューニング」のために毎回「社内申請~承認」の長いプロセスを踏む必要があるとすれば、インサイドセールスの機動力を十分発揮しているとは言えません。インサイドセールス、フィールドセールスを抱える企業の営業部長は、せめてインサイドセールスのリーダーには方針転換時の権限をすべて委任すべきです。
導入後すぐに成果を出すよう求められる
インサイドセールスの導入直後から、やる気と根性だけで売り上げを作るのは不可能です。いくら小回りの利くインサイドセールスでも、導入後さまざまな試行錯誤を繰り返し、毎月安定した予測を出しそれに対応する売り上げを上げられるようになるまで一般的に1年以上はかかります。一定期間の運用中、トライアンドエラーを繰り返し、安定した活動と売り上げ予測を立てられるようになってはじめて、インサイドセールスの本領が発揮できます。
フィールドセールスと競わせてしまう
これはとてもありがちなシチュエーションです。導入したインサイドセールスがクロージングまで担当する場合でも、単純に受注数や受注金額でフィールドセールスと比較することはできません。これはたとえインサイドセールスの受注金額が大きかったり、フィールドセールスの受注数が多かったりしたとしても同じです。同じ営業部に所属する組織同士、協力しあって受注数・金額、効率を最大化させるべきです。導入直後は特に、フィールド・インサイドで競わせることは敵対意識が生まれ、その後お互いに協力しづらくなってしまいます。
まとめ
今回はインサイドセールス導入時と運用開始後によく聞かれる、私の経験した失敗例をあげていきました。例として並べましたが、もちろんこれら以外にもたくさんのハードルや壁が存在することでしょう。また、今回の例は企業のインサイドセールスの扱いに対する失敗例を主に取り上げましたが、インサイドセールスの活動にも細かい失敗例がたくさん存在します。
(関連記事)インサイドセールスにおける電話営業でやりがちな失敗と対処法
よりよい組織を作っていくためには、計画的にPDCAを高速で回し続けることが重要です。
<関連書籍>
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