米国のマーケティングテクノロジーのカンファレンス「MarTech」が3月29、30日にオンラインで開催されました。テクノロジーのカンファレンスですが、アジェンダで目立ったワードは「共感」「信頼」。テクノロジーを活用しながらも、人間味は決して失ってはいけないというのが世界のマーケティングの流れのようです。本稿では、B2Bコンテンツマーケティング支援サービスを提供する「シンプルストラット」の創設者でマーケティングストラジストのアリ・シュワンケ氏のセッションについてレポートします。

顧客がうんざりする5つのポイント

シュワンケ氏はセッションの冒頭で、これまでのマーケティングオートメーション(MA)ツールの流れについて解説しました。MAツールがマーケターの負担を減らした側面がある一方で、「(MAツールに)価値を見出したマーケティング担当者はツールを使い始めた。しかし、皆がツールを台無しにしてしまった」と指摘。自動化により、顧客に不利益を与えてしまうことになったと主張しました。

アリ・シュワンケ氏(シンプルストラットのホームページより)

一体どういうことなのでしょうか。シュワンケ氏は、自動化で顧客が「うんざりするポイント」として、以下の5点を挙げます。

  • 人間のように振る舞うボット
  • 数字に追われる
  • 自分の主張を聞いてくれない
  • スパム
  • 自分の生活が無意味に妨げられるだけでなく、自分の情報がマーケティングに利用される

その一方で、顧客が期待することとして「共感」「透明性」「応答性」を列挙。顧客は「自分の声を聞いて理解してほしい」「だまさず、次にどんなアクションが起きるのか教えてほしい」「自分を一つの数字で扱わないでほしい」と考えているといいます。

近しいブランドからのアラートには好印象を持つ

シュワンケ氏は、マーケティングに関するデータを公開している「Deloitte CMO Survey」の調査を引用し、過度な自動化は顧客の心情を損ねる可能性があると主張しました。調査によると、人の音声から推測してスマートデバイスが出したオファーに対し、役に立つと答えた人は26%、不快に感じた人は53%だったといいます。一方、いつも使っているブランドからのアラートに対しては、68%の人が役に立ったと感じ、不快に感じた人は11%にとどまります。

顧客からすると、自分の興味関心に沿った情報であっても、身近でないブランドからの発信であれば「おせっかい」だと感じるでしょう。そればかりか、調査が示すようにブランドに不快感を覚えるケースも考えられます。普段から顧客とコミュニケーションを取り、信頼を獲得した後に情報を発信していく。一見遠回りにも思えますが、ブランド価値を損なわないためには必須のプロセスといえるでしょう。

コンテンツに「顔」と「ストーリー」を

シュワンケ氏は顧客とコミュニケーションを適切に取っていくために、マーケティングのワークフローについて以下の観点で見直すべきだとしています。

  • 意味があるか
  • 期待通りか
  • おもしろいか
  • 価値を提供できているか
  • 信頼や理解にひびは入ってないか
  • 人間味が感じられるか

なかでも、人間味についてはコンテンツの内容についても言及。コンテンツの作り手について、顔写真とともに紹介する必要があると説きました。なぜなら、人間の脳には顔に反応する回路があり、印象に残るコンテンツにできるから。コンテンツに執筆者名や顔写真を掲載する方法は、コンテンツマーケティングにおいて重要な要素とされており、引き続き続けていくべきだといえるでしょう。

加えてシュワンケ氏は、潜在顧客とのコミュニケーションで有効なのはストーリーであるとも主張。清潔な水が手に入らない地域に水を届けている慈善団体「チャリティーウォーター」の事例を紹介し、ブランドと顧客を結びつけるストーリーの力について強調していました。

チャリティーウォーターが配信しているコンテンツでは、創設者であるスコット・ハリソン氏が世界に清潔な水を届ける活動を始めるに至ったストーリーが語られています。かつてニューヨークでクラブのプロモーターとして享楽的な生活を送っていたハリソン氏が慈善活動に目覚め、世界に水を届けるまでに至った道のりは、多くの人の共感を生むでしょう。

チャリティーウォーターのストーリーテリングコンテンツ(プレゼン資料より)

顧客の信頼を獲得するために、情報を誠実に開示していく。その必要性を改めて感じるセッションでした。