米国のマーケティングテクノロジーのカンファレンス「マーテック(MarTech)」が、今年もオンラインイベントとして3月29、30日に開催された。マーテックは、単にマーケティングテクノロジーを紹介するのではなく、どういったマーケティングテクノロジーをどのように活用すればよいのか、具体的なノウハウを提示してくれる良質なセッションが多い。

筆者は数年前に現地で参加し、コロナ下ではオンラインで聴講し続けている。毎年参加することで、その年のトレンドがすぐに分かるようになる。今年は、前年と比較して明らかに「体験」と「信頼」の2ワードが目立った。本稿では、「体験」「信頼」に関連し、プライバシー管理クラウドサービス「ワントラスト」のCMOリサ・キャンベル氏のセッションをご紹介したい。

マーテックのセッションの様子(2019年撮影)

「信頼獲得」のための市場が拡大

マーテックの会場の様子(2019年撮影)

キャンベル氏は、今日、消費者の70%が「ブランドを信頼することは重要である」と考えていると紹介。体験とエンゲージメント、さらには信頼と透明性という無形資産を持つことで、市場における差別化が実現すると強調した。

リサ・キャンベル氏(プレゼン資料より)

また、規制の強化、技術のアップデート、消費者の期待という3つの要因から、「信頼獲得」のための市場が拡大していると指摘。サード・パーティー・クッキーが近い将来規制されることを念頭に、「(信頼獲得に重きを置くという意味での)変化を促す風が吹いている」との見方を示した。

信頼獲得のために必要な透明性

2019年に開催されたマーテックの会場の様子

では、どうすれば信頼が獲得できるのだろうか。キャンベル氏は、「透明性を高めよう」と訴える。どのようなデータを、何のために収集しているのか。これらの点を顧客に明示すべきだというのだ。

アクセンチュアの調査によると、消費者の73%が、データの使用方法についての透明性があれば、より多くの個人情報を共有することを望んでいるという。この数字は、2018年の66%から7ポイント上昇している。

自分のデータがどう使われるのか、消費者は不安なのだ。一方で、プライバシーが保たれ、かつパーソナライズされた顧客体験が実現するのであれば、消費者は個人情報を積極的に提供したいとも考えている。ブランド側に不足しているのは、第一に顧客とのコミュニケーションなのかもしれない。

パーソナライズの具体例として、キャンベル氏はタイムリーなオファー、ターゲットコンテンツ、カスタマイズされたレコメンデーションなどを挙げた。すなわち、適切なタイミングでのオファー、特定のオーディエンスに向けたコンテンツ配信、個々人に合わせたおすすめの提示、である。テクノロジーの力を借りることで、これらをリアルタイムに実現できる。

日本の場合、メールマーケティングをはじめとして、プライバシーや透明性を意識しないデジタルマーケティングが目立つ。信頼を求める消費者は、個人情報の提供について慎重にならざるを得ない。透明性の担保が信頼を生み、最終的には適切な顧客体験の提供へとつながる。このことを再認識させられたセッションであった。

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