書籍シリーズ『コンテンツマーケティング最前線』(クマベイス 出版)第2弾、「コンテンツ制作の極意」出版を記念したトークイベントが2月22日、蔦屋書店熊本三年坂(熊本市中央区)で開かれました。イベントには、本書にも登場するSUUMOタウン編集デスク・ 岡武樹氏が特別ゲストとして登壇。人々に支持されるコンテンツの条件や、 記事コンテンツ制作の極意などについて、 株式会社クマベイス代表取締役CEOの田中森士と語りました。本稿では、イベントの様子をレポートします。

「コンバージョンを見ない」というオウンドメディア

「コンテンツマーケティング」という単語が生まれる前から、かのビル・ゲイツも提唱していた「コンテンツ・イズ・キング」。このフレーズは、コンテンツマーケティングの世界において、今もマントラのように唱えられています。

コンテンツこそが王様という点については、疑う余地はありません。しかしながら、インターネットで流通する情報量が爆発的に増え、 適切な人に適切なコンテンツを届けることが難しくなった現代社会。 良質なコンテンツとは何なのかを、すべての企業やブランド、 クリエイターが立ち止まって考える時に来ていると言えます。本書は、 コンテンツマーケティング視点での良質なコンテンツとは何なのか、 クマベイスの田中が専門家らを取材した、 インタビュー集です。

今回の出版記念イベントには、本書にも登場するSUUMOタウンの岡さんが登壇しました。住まいに関する総合情報サイト「SUUMO」のオウンドメディアとして位置付けられる「SUUMOタウンは、数字を追いかけがちな昨今のコンテンツマーケティング業界にあって、「コンバージョンを見ない」というユニークな方針で運営されています。多数のファンを抱え、コミュニティー形成にも成功している同メディアは、どのようにコンテンツ制作に取り組んでいるのでしょうか。岡さんの話を自社のビジネスやマーケティングに生かそうと、会場には熊本県内のマーケターらが集まりました。

良質なコンテンツとは「正直かつ誠実なコンテンツ」


岡さんによると、SUUMOタウンは、ライター自身が住んでいる土地に関する記事を発信。ライターは毎回異なるため、読者は様々なテイストの記事を楽しむことができるといいます。SUUMOタウンの記事コンテンツの特徴の一つが、ライター自身の「主観的な意見」を積極的に取り入れている点です。一般的にオウンドメディアの記事コンテンツは、客観的な意見が多いのですが、あえてライターの素直な気持ちを存分に出してもらうことで、嘘のない、誠実なコンテンツの提供が可能となるといいます。

岡さんの考える「良質なコンテンツ」の条件は何か。この問いに対し、岡さんは「正直かつ誠実なコンテンツ」と回答しました。決してごまかすことなく、格好もつけない。ポジティブな情報もネガティブな情報も、きちんと読者に伝えるコンテンツでなければ、読者の信頼は得られない。岡さんはこう指摘します。

筆が乗ると、誰しもつい話を「盛りそう」になります。しかし、岡さんによると、少しでも盛ると、読者はそれを敏感に感じ取り、その瞬間、メディア自体の信用が失墜するのだそうです。

ネット上でよく目にする「絶対に○○できる方法!」などの尖ったタイトルのコンテンツ。世の中に「絶対」はありえないので、このタイトルの時点で、真実とは言えない可能性が高まります。こうしたタイトルは誰もが思わずクリックしたくなるため、PVなどの数字は稼げるかもしれません。しかし、果たしてそれが読者第一と呼べるのか。同様に、誰かを傷つけるような記事も書いてはならない。岡さんはこう強調します。

もちろん、SUUMOタウンの運営方針が理想形であることは、間違いありません。とはいえ、コストをかけてオウンドメディアを運営する以上、会社としては数字を重視するのではないか。そこはどのようにクリアすればよいのか。田中はこの疑問を岡さんにぶつけました。

これに対し岡さんは、日頃からSNSの反応を見る「ソーシャルリスニング」を提案しました。普段からオウンドメディアの記事コンテンツを評価、肯定してくれる声を収集し、社内で共有する。それにより、十分な需要があることを理解してもらうとともに、本業にも生かす。岡さんは実際、このソーシャルリスニングを日常的に行なっているそうです。

ライター自身がペルソナである

コンテンツマーケティングにおけるコンテンツ制作で避けては通れないのが、具体的なターゲットの人物像を指す「ペルソナ」の設定です。近年、ペルソナを詳細に設定する手法がトレンドとなっている中、SUUMOタウンはこれと逆の手を打っています。例えば「大学を卒業して働き始めた学生」「30~40代で引っ越しを考えている人」など、「ざっくり」と設定しているのです。

さらに岡さんは、「記事ごとにペルソナを決めてもよいのでは」とも指摘しました。これは、記事を書くライター自身がペルソナであるとの考え方です。そうすれば、自然とペルソナの心に刺さるコンテンツが、いくつもある状態を生み出すことができると、岡さんは説明します。

SUUMOタウンは、メディアから近い位置にキャッシュポイントを置いていません。記事を読んだ人にとって、引越しの際の参考となればいい。良い意味で「肩の力を抜いた」運営方針なのです。「メディア運営はお金を稼ぐことにフォーカスしない方が、間接的に会社の売り上げに貢献するように思う」。岡さんは、穏やかな口調でこう述べました。逆説的ではありますが、これが現代におけるコンテンツマーケティングの真理なのでしょう。

伝えたいことが伝わるコンテンツを目指す

オウンドメディアを立ち上げ、定期的にコンテンツを制作するにあたり、一体何から手をつければよいのか。この部分で頭を抱える企業は思いのほか多いようです。岡さんによると、SUUMOタウンでは、基本的にライター自身が書きたい切り口で書いてもらっているといいます。「楽しんで書いたものが最も支持される」というのが、岡さんの経験に基づく考えです。

また、投稿本数については、量を求めないことも重要だといいます。岡さんは、「記事作成に追われて仕事が雑なるくらいならコンテンツを公開しない方がましだ」と言い切ります。じっくり時間をかけ、岡さんとライターの双方が納得するまでコンテンツを磨き上げる。そうして初めてコンテンツを投稿するのだそうです。


コンテンツのタイトルについて、岡さんは慣例にとらわれないよう注意しているそうです。「○○のための3つのアイデア」など、巷でよく目にするフレームではなく、記事の内容に合った、自然なタイトルにすべきだといいます。素朴なタイトルであっても、いい。伝えたいことが伝わるコンテンツを目指すのが先決というのが、岡さんの考えです。「格好いいタイトルを頑張って考えるより、中身を磨くべき」。実際、内容をそのまま表したようなストレートなタイトルの方が、SUUMOタウンでは読まれる傾向にあり、その結果、検索結果の上位にランクインすることも多々あるそうです。

岡さんは、現在のSUUMOタウンについて、「記事を書いた人、記事を読んだ人、記事の題材になった地域に住む人のみんなが喜んでくれている。感謝の気持ちを忘れず今の状態を大事にしたい」と述べました。その上で、今後何度も訪れるであろう時代の変化に、都度対応していく必要性を強調。それこそが読者第一の姿勢であり、コンテンツ制作の極意であると締めくくりました。

岡さんの独自の視点が披露された今回のトークイベント。参加者らはイベント終了後、列を作り、岡さんに悩みや疑問をぶつけていました。それに対し、一つ一つ丁寧に回答した岡さん。温かい人柄が印象的な時間でした。

<イベント情報>
『コンテンツマーケティング最前線02 コンテンツ制作の極意』の出版を記念して、東京でイベント開催が決定しました!
3月14日は赤坂のFaber Innovation Hub(株式会社Faber Company内)にて、3月26日は道玄坂のBOOK LAB TOKYOにて開催いたします。
書籍に登場する専門家らが、コンテンツ制作の極意について語ります。
詳細は以下よりご確認ください。

3月14日@赤坂のFaber Innovation Hub(株式会社Faber Company内)

3月26日@道玄坂のBOOK LAB TOKYO(岡さんも登壇します!)

<書籍情報>

クマベイス出版→https://kumabase.stores.jp/items/5c6cd5a1e73a2540e214cc75
Amazon→https://www.amazon.co.jp/dp/4991076501
kindle版→https://www.amazon.co.jp/dp/B07P4D3VSC