日本でも少しずつ浸透してきている「ウェビナー(Webinar)」。その名の通り、Web上で展開するセミナーを意味するものだ。単語米国ではマーケティングソリューションとして広く普及しており、戦略にどう落とし込むかといった研究や、ユーザーに寄り添った機能の開発が進む。そんな米国ウェビナー業界のトップランナーが「ON24」だ。Content Marketing World 2019における同社VPのMark Bornstein氏のセッションをレポートする。

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「プレゼンター」であることを意識する

実は筆者は前年度のCMWorldでもBornstein氏のプレゼンを体験している。収容人数が数十人規模の小さな部屋で展開されたセッションは、最も印象に残るものだった。まず、コンテンツマーケティング文脈でのウェビナーの可能性を感じたし、なによりBornstein氏のプレゼン能力が圧倒的だった。もちろんコンテンツ自体も素晴らしかったのだが、熱量が凄まじかった。それでいて、参加者に何か持ち帰ってほしいという「思いやり」も伝わってきた。場を支配するとはこのことかと感動したのを覚えている。

以前、Bornstein氏と直接話す機会に恵まれたのだが、ウェビナーであっても登壇であっても自らが「プレゼンター」であることを意識すべきなんだ、と筆者に教えてくれた。どんな場においても相手のことを考えるべき。相手に情報を届けることに集中すべき。こういうことなのだろう。「プレゼンター」であることを意識する。これは記事コンテンツにも使える考え方であり、コンテンツマーケティングに共通するものだといえる。

ウェビナーは「究極のコンテンツチャネル」

今回のCMWorld2019のセッションで、Bornstein氏はウェビナーについて「究極のコンテンツチャネル」と評価。そうなりえる条件として、コンテンツが連載形式であること、インタラクティブな体験を視聴者に提供することなどを列挙した。

また、マーケティングファネルをウェビナーだけで完結させることもできると強調。登録制で視聴可能とすることによって、サブスクライバーも獲得できると訴えた。

ON24をはじめとするウェビナープラットフォームは、動画視聴中であっても画面上にSNSやサービスページへのリンクなどを表示できるものもある。つまり、ファネルのトップからボトムまでのコンテンツをあらかじめ仕込みつつ、いつ態度変容が起きてて対応できるよう、あらゆる導線を確保。そうすることで顧客のニーズに応え、「取りこぼし」を防ぐことができる仕組みとなっているのだ。

一般的にウェビナーは、Liveコンテンツのイメージが強い。しかしながら、Bornstein氏はそれだけではないと強調する。オンデマンドコンテンツしか視聴しないという層も一定数存在するため、そうしたコンテンツにも力を入れるべきなのだという。Bornstein氏はNetflixを引き合いに、いつでも視聴可能な動画を「過度に」用意しておくことが重要であると指摘。これを「Netflixスタイル」と名付け、ウェビナー実践者は取り入れるべきだと訴えた。

LIVEコンテンツは「特別な体験」となりえる

日本においてウェビナーが浸透するかはまだ読めない部分もある。文化や生活習慣が果たしてフィットするかは未知数だからだ。しかしながら、B2B企業にとっては極めて効率的なマーケティング手法であるとも感じる。また、Liveコンテンツであれば通常のマーケティング施策では生み出せないような「ライブ感」が提供でき、エンゲージメントを高めることにつながるであろう。

CMWorldを主催するContent Marketing Instituteをはじめ、米国ではウェビナーを利用したバーチャルイベントも頻繁に行われている。どこにいてもその時間にアクセスするだけで、臨場感そのままに学びを得ることができる機会はとても貴重だ。

コンテンツマーケティング全般に言えることだが、コンテンツはニッチで品質が高いものである必要がある。ウェビナーのLiveコンテンツは、その時間に参加しなければならないという点は、ある意味でハードルが高い。しかしながら、それがニッチかつ品質の高いコンテンツ(そこでしか聞けないコンテンツ)であればあるほど、むしろ「特別な体験」だと視聴者は感じる。ここに成功へのヒントがある。

米国のマーケティング関連カンファレンスは、日本の数年先を行く内容であることが多い。すなわち、「近未来」を知ることができるものだ。この観点に立った時、もしかしたらウェビナーがいくつかの業界で一般化する日もそう遠くないのかもしれない。