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コンテンツにストーリー性を盛り込むストーリーテリングは、今やコンテンツマーケティングにおいて欠かせない手法です。人はストーリーに魅了され、ストーリー性を持ったコンテンツは記憶に残りやすいとされています。例えば、ある人物に取材して作成した記事コンテンツでも、QA形式よりはストーリー性を持った記事のほうが読み応えがあり、印象に残ります。筆者はストーリーテリングについての海外記事を日常的にチェックしていますが、記事中で「Suspense(サスペンス)」という言葉をよく目にします。このサスペンスとは一体何なのでしょうか? 今回はストーリーテリングにおけるサスペンスの位置付けについて考察します。
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海外の記事で頻出する「Suspense(サスペンス)」というワード
米国のContent Marketing Institute(CMI)のストーリーテリングについての記事「The Content Marketer’s Guide to Story Structure」は、サスペンスについて言及しています。同記事ではストーリー構築の方法について説明をしていくなかで、以下のように説明しています。
The secret sauce is suspense.
Suspense makes the reader wonder what is going to happen next.
秘密のソースは「サスペンス」だ。
サスペンスは次に何が起きるのか、読者をわくわくさせる。(筆者訳)
また、コンテンツに独自性を持たせる方法を説明したCMIの別の記事「13 Easy Tips to Give Your Content More Personality」でも、サスペンスについて言及しています。
Building suspense is the holy grail of great writing. It’s also one of the most coveted skills and is the reason authors Stephen King and James Patterson can sell books that fly off the shelves.
サスペンスの構築はすばらしい文章の聖杯だ。また、それは最も切望されるスキルの一つであり、スティーブン・キング(著名なホラー作家)やジェイムズ・パタースン(著名なスリラー作家)の作品が本棚から飛び立つように売れる理由だ。(筆者訳、作家についての説明も筆者)
上記で用いられている「聖杯」とは、「必要条件」のような理解で良いと思います。同記事では、「ミステリー小説を書いてなくても、サスペンスは用いることができる」と主張されています。
サスペンスとは何か
そもそも「サスペンス」とはどういう意味なのでしょうか。サスペンスは「持続的緊張感」「はらはらする状態」という意味を持ちます。サスペンスと聞いて私たちが思い浮かべるのは、サスペンスドラマではないでしょうか。
前述の「The Content Marketer’s Guide to Story Structure」の記事の筆者であるPratik Dholakiya氏は、物語におけるサスペンスについて「サプライズ」と対比させたうえで説明しています。記事によると、サスペンスは「ある状況についてほのめかしたうえで、物語を続けること」、サプライズは「物語を進めていく中で思いもよらない結末を迎えること」という違いがあるようです。
例えば、「主人公が出勤するオフィスがあるビルに爆弾が仕掛けられている」という物語で比較してみましょう。頭の中で映像を思い浮かべながら、読んでみましょう。
主人公はいつものようにビルに向かい、オフィスのある5階に上がろうとエレベーターに乗り込んだ。エレベーターが目的の階に到着し、主人公はオフィスへと向かった。廊下には小さな小包が落ちている。「何だろう」と思うと同時に、「ドン」と音がして主人公は吹き飛ばされた。
全身に黒い服を身につけた男がビルに侵入した。エレベーターで5階へ。小さな袋を廊下に置くと、走り去っていった。その後、主人公はいつものようにビルに向かい、オフィスのある5階に上がろうとエレベーターに乗り込んだ。廊下には小さな小包が落ちている。「何だろう」と思うと同時に、「ドン」と音がして主人公は吹き飛ばされた。
上がサプライズ、下がサスペンスの例です。同じシチュエーションでも、最初の一文があるのとないのでは、見え方も変わってくるのではないでしょう。簡単な例ですが、最初の一文はいわゆる「伏線」と呼ばれるものでもあります。
このように冒頭で結末をほのめかし、結末に向かってストーリーを展開していくのはサスペンスの分かりやすい形式です。オーディエンスは予想される結末まで焦らされ、次の展開を求めるようになります。
サスペンスドラマは、最初に何かしらの事件のシーンが入り、事件の真相に近づく様子を描きます。これはサスペンスドラマとは違う例だと思いますが、以前ヒットしたドラマ「古畑任三郎」は、犯人の正体を明かしたうえで主人公が犯人を追い詰めていく様子を描いたものでした。
そのほか、テクニックを要する手法ですが、物語の途中で伏線を散りばめることも有効な手段です。テクニックを要する手法ですが、結末を知った後に「あのシーン(記述)はつながっていたのか」と強く記憶に残すことができます。昨年ヒットした映画「コンフィデンスマンJP」も、多くの伏線を散りばめていることで有名です。
「サスペンスが機能するためには、不確実性と期待の両方が必要」。これはPratik氏が記事で述べていることです。結末をほのめかしたうえで、ストーリーが結末にどうつながっていくのか考えさせ、期待させる。人々が魅了されるストーリーには、そんなサスペンスの要素を取り入れたものが多いと言えるでしょう。
コンテンツマーケティングにおいてサスペンスをどう生かすか
コンテンツマーケティングにおいて、サスペンスはどのように生かせばよいでしょうか。
例えば、自社の商品・サービスが顧客の課題解決に結び付いたことを伝える事例紹介コンテンツで、サスペンスの手法を用いることができます。ストーリー仕立てにする場合、課題解決した姿を最初に見せ、その後に抱えていた課題を示すことで、「どうやって解決したのか」とオーディエンスを惹きつけることができます。
また、どうしても顧客に伝えたい情報がある場合も、サスペンスの力を用いることで確実に伝えることができるでしょう。コンテンツにとっておきのお役立ち情報があることを最初にほのめかしたうえで、結論に向かう過程でオーディエンスに必ず知っておいてもらいたい情報を盛り込みます。
サスペンスの手法は、新聞記事やドキュメンタリーでも用いられているように思います。リードや冒頭のシーンで結末を伝えた上で、そこに向かうまでのストーリーを描写していきます(過去に●●という出来事があったが、今は前を向いて●●という活動を行っている、など)。
サスペンスを用いる際に注意すべきことは、あくまで一つの手法と言うことを理解することです。全てのコンテンツに用いるべきではありません。新聞記事でもストーリーものでない記事では、結論を最初に書きます。全てのコンテンツにサスペンスの要素を入れると、オーディエンスからすればしつこく感じてしまうためです。前述でお役立ち情報の例を挙げましたが、ストレートに短く情報を伝えた方が良いケースもあります。あくまでストーリーテリングの一つの要素だということを理解しておきましょう。
サスペンスの要素が入ったコンテンツの事例
伏線を散りばめた動画の例では、シュガーフリーガムを提供するExtra Gumの動画が良い例です。動画では、カップルの出会いからプロポーズまでのストーリーを描いています。動画のさまざまなシーンで、男性と女性はガムをやり取りします。男性は女性と一緒にいるたびに、紙に何かを書いているようです。
あるとき、男性から呼び出された女性は並べられている額縁を発見。額縁の中には男性がガムの包み紙に描いた女性との思い出のイラストが飾られていました。
額縁を見ていくと、プロポーズの様子を描いたイラストがありました。女性が驚いていると男性が現れ、イラスト通りにプロポーズが行われる、というストーリーです。
こちらは紙に何かを書いているシーンを随所に出すことで伏線を張り、オーディエンスを惹きつけながら結末を迎えます。このようなプロポーズを題材にした動画はよく見かけるストーリーですが、淡々とカップルの日常を映してプロポーズのシーンを迎えるよりも、オーディエンスの記憶に残るコンテンツになるのではないでしょうか。
ストーリーテリングの研究を始めよう
今回は、ストーリーテリングにおけるサスペンスの力について解説してきました。サスペンスは大きな力を発揮しますが、あくまでストーリーテリングの一つのテクニックです。ストーリーを魅力にするテクニックは無数にあります。普段からストーリーに触れる際は、自社のコンテンツに生かせる要素が無いか検討し続けましょう。